インタビュー記事を作りたいのに、何から手をつければいいか分からない。そんなお困りごとを抱える発信担当者の方は少なくありません。
インタビュー記事とは、人に話を聞き、その人の言葉を軸にまとめた記事のことです。作り方は企画・質問設計・取材・文字起こし・構成と執筆・原稿確認・公開の7ステップで整理できます。中でも質を左右するのは、取材当日より前の「誰に何を伝えるか」を1文で決める工程です。
本記事では、7ステップに加えて形式の選び方、質問と書き方のコツ、営業と採用への活かし方、公開前の注意点を紹介します。お役に立てれば嬉しく思います。
インタビュー記事とは|企業が作る目的と3つの種類
インタビュー記事とは、話し手の言葉を中心に組み立てる記事です。企業が作る場合、目的は採用・営業・ブランディングのいずれかに分かれます。種類は代表者・社員・お客様の3つが基本で、目的によって取材する相手が決まります。
会社案内や広報誌と比べると、インタビュー記事は作る手間がかかります。それでも多くの企業様が取り組むのは、人の言葉が読者の信頼を集めるからです。まずは説明文との違いから見ていきましょう。ここを押さえると、誰に話を聞けばよいかも見えてきます。
目的(採用・営業・ブランディング)に合わせて、取材する相手を選びます。
インタビュー記事が会社の説明文より信頼されやすい理由
なぜインタビュー記事は信頼されやすいのでしょうか。答えは、会社ではなく「人」が語るからです。同じ内容でも、会社案内に書くと宣伝に見えてしまいます。本人が自分の言葉で語ると、読み手は具体的な場面を思い浮かべやすくなるのです。
例えば「お客様第一の会社です」と書いても、読者の心には残りません。一方で、社員が「夜8時に電話をいただき、翌朝一番で駆けつけた」と語れば、印象はまるで違うはずです。言葉の主が見えることが、そのまま信頼の根拠になるわけです。
私たちコントリでも、経営者や実践者のインタビュー記事を制作しています。現場で実感するのは、話し手の迷いや失敗談が入った記事ほど読まれるという傾向です。きれいな成功談だけを並べるより、等身大の言葉が読者を動かします。
代表者インタビュー・社員インタビュー・お客様インタビューの違い
企業のインタビュー記事は、話し手によって3種類に分けられます。それぞれ読者と伝わる中身が異なるため、冒頭の図で違いを押さえておきましょう。
代表者インタビューは、会社の考え方を伝える柱です。創業の経緯や事業に込めた想いは、代表本人の言葉でしか語れません。
社員インタビューは、求人票では見えない働き方を伝えるものです。仕事の一日の流れや職場の空気は、求職者にとって大切な判断材料です。
お客様インタビューは、導入事例として営業の場面で力を発揮します。
導入事例とは、自社の商品やサービスを使ったお客様の課題と成果を紹介する記事のことです。例えば「受注管理システムを入れて、残業が減った工場」の話が該当します。「同じ悩みを持つ会社が、どう解決したか」は、見込み客が一番知りたい情報です。3種類のどれから始めるかは、いま会社が最も困っている課題で決めるとよいでしょう。
目的は採用・営業・ブランディングのどれかに絞る
1本のインタビュー記事には、目的を1つだけ持たせましょう。採用にも営業にも使いたいと欲張ると、質問がぼやけ、誰に向けた記事か分からなくなります。
目的が決まれば、読者も定まるもの。読者が決まれば、取材で聞く話も自然に絞られていきます。例えば採用が目的なら「入社の決め手」を、営業が目的なら「導入前の課題」を中心に聞く流れです。ブランディングが目的なら、創業の原点や大切にしてきた判断を聞きます。
私が企画を立てるときは、記事を読み終えた読者に「どう感じてほしいか」を先に書き出します。「この会社なら安心して任せられそう」と感じてほしいのか。「ここで働く自分を想像できた」と感じてほしいのか。ゴールの感情が決まると、質問の優先順位が自然に定まります。
インタビュー記事の形式|一問一答・ストーリー・対談の使い分け
インタビュー記事の形式は、一問一答・ストーリー・対談の3つです。初めて作るなら一問一答形式が書きやすく、話し手の変化をじっくり描くならストーリー形式が向いています。複数人の関係性や社風を見せたいときは、対談形式を選びます。
形式は、記事の読みやすさと伝わる中身を同時に決める要素です。同じ取材内容でも、形式を変えれば印象はまったく別物です。3つの特徴と、目的別の選び方を表にまとめました。
| 形式 | 向いている目的 | 書きやすさ | 読者に伝わるもの |
|---|---|---|---|
| 一問一答形式 | 社員紹介・よくある質問への回答 | ○ 初めてでも書きやすい | 要点・事実 |
| ストーリー形式 | 代表者の想い・導入事例 | △ 構成力が必要 | 背景・変化・感情 |
| 対談・座談会形式 | 社風紹介・取引先との関係 | △ 話者の整理が必要 | 関係性・雰囲気 |
一問一答形式|要点が拾いやすく初めてでも書きやすい
一問一答形式とは、質問と回答を交互に並べる書き方です。例えば「――入社のきっかけは?」と聞き手の質問を置き、その下に回答を続けます。読者は気になる質問だけを拾い読みできます。
書き手にとっても、取材の流れをそのまま再現できる点が利点です。ただし、回答をそのまま並べると単調になりがちです。質問の順番を入れ替えたり、似た回答をまとめたりして、読み物としての流れを整えましょう。
質問の文面は、取材で実際に聞いた言葉より短く整えて構いません。「――最初の1年で苦労したことは?」程度の長さにすると、回答が主役として目立ちます。社員紹介のように複数人を並べる記事では、全員に同じ質問をそろえると比べやすくなるでしょう。
ストーリー形式|地の文で背景と変化を伝える
ストーリー形式とは、聞き手の説明(地の文)で話をつなぎ、要所で本人の言葉を引用する書き方です。地の文とは、会話以外の説明部分のことを指します。
この形式は、転機や変化を描くのに向いています。「創業当初は売上ゼロだった」という背景を地の文で語り、決断の瞬間だけ本人の言葉で見せる構成です。書き手の構成力が問われる分、読みごたえは格別です。
書くときのコツは、本人の言葉を引用する箇所を絞ることです。全体の3〜4割を本人の言葉にし、残りを地の文で補うと、読みやすさと臨場感の釣り合いが取れます。導入事例のように「課題→決断→変化」の流れがある話では、特に相性のよい形式です。
対談・座談会形式|複数人の関係性や社風を見せる
対談形式は、2人以上の会話をそのまま記事にする書き方です。上司と部下、社長とお客様など、関係性そのものを見せたいときに力を発揮します。
対談では、話し手同士の掛け合いが記事の魅力です。相手の発言を受けて笑いが起きた場面や、意見が分かれた場面を残すと、職場の雰囲気がそのまま伝わります。一方で、話者が3人を超えると誰の発言か分かりにくくなるものです。名前の表記をそろえ、顔写真を添えると読者が迷いません。
3つの形式の位置づけを図にすると、次のとおりです。
縦軸は伝わるもの、横軸は書きやすさ。迷ったら一問一答形式から始めます。
迷ったときは、まず一問一答形式で1本作ってみてください。慣れてきたら、ストーリー形式に挑戦して表現の幅を広げていけます。
インタビュー記事の作り方|企画から公開までの7ステップ
インタビュー記事は、企画から公開と再活用までの7ステップで作ります。質を決めるのは、取材当日より前後の準備です。
7つのステップは、企画・事前調査と質問設計・取材・文字起こし・構成と執筆・原稿確認・公開と再活用です。初めての方は、取材当日に意識が向きがちです。けれども実際には、企画の1文と質問の準備で記事の出来が大きく変わります。ここでは7つを準備・当日・執筆・仕上げの4段階に分けて解説します。
時間の目安は、私たちの制作現場での目安です。
準備|企画・事前調査・質問設計(ステップ1〜2)
最初のステップは、企画を1文にまとめることです。「求職者に、入社3年目の営業社員が成長を実感した瞬間を伝える」のように、読者と伝えたいことを1文で書きます。この1文こそ、後の工程すべての判断基準です。
次に、話し手の情報を事前に調べます。経歴や過去の発信、会社のWebサイトに目を通し、「この人はこういう転機を経験していそうだ」と仮説を立てます。仮説があれば、質問はぐっと具体的なものに変わるはずです。
私たちの現場では、取材前に事前ヒアリングシートをお送りしています。経歴や大切にしている考えを書いてもらうと、当日は深掘りの質問に時間を使えます。質問は10〜15問ほど用意し、話の流れに合わせて入れ替えられるようにしておきます。
取材当日|録音と撮影の段取り(ステップ3)
取材時間は、私たちの現場では記事1本につき60〜90分を目安にしています。写真撮影をするなら、別に15〜30分を見込んでおきましょう。時間に余裕がないと、最後の大事な質問が駆け足になってしまいます。
当日は、録音の許可を最初に取ります。スマートフォンとICレコーダーなど、2台で録音しておくと安心です。オンライン取材なら、会議ツールの録画機能も使えます。
聞き手は、メモよりも相手の表情と言葉に集中してください。気になった言葉をキーワードだけ書き留め、その場で「それはどういうことですか」と掘り下げます。話がそれても、すぐには戻さないことです。脱線した先にこそ、本人らしいエピソードが眠っています。
執筆|文字起こしから構成・本文まで(ステップ4〜5)
文字起こしとは、録音した音声を文字に書き起こす作業のことです。いまはAIツールで、録音から数分で文字にできます。ツールの選び方や精度を上げる設定は「AI議事録の文字起こし完全ガイド」で詳しくまとめました。
文字起こしができたら、まず全体を読み、印象に残った話に印を付けます。そのうえで、記事で伝える話を3つに絞りましょう。話を3つに絞ることで、読者が最後まで迷わずに読める構成が整います。
構成案づくりには、生成AIも使えます。生成AIとは、指示文(プロンプト)に応じて文章を作るAIのことです。例えばChatGPTやClaudeに文字起こしを渡し、次のように頼みます。
以下はインタビューの文字起こしです。
この記事の読者は「(例:入社を検討している20代の求職者)」です。
記事の目的は「(例:入社3年目の営業社員の成長を伝えること)」です。
1. 読者に伝えたいエピソードを3つ選び、それぞれ理由を1行で書いてください。
2. 話し手の印象的な発言を、原文のまま5つ抜き出してください。
3. 上の3つのエピソードで、H2見出し3本の構成案を作ってください。
※発言の内容を変えたり、話していないことを補ったりしないでください。
(ここに文字起こしを貼り付け)
AIの案は、あくまでたたき台です。エピソードの選び方や言葉の温度感は、取材した本人が一番よく分かっています。AIが抜き出した発言は、録音と照らし合わせてから使いましょう。
文字起こしをAIに渡す前には、2つの点に注意してください。1つ目は、入力した内容がAIの学習に使われない設定を確かめ、話し手の了解を得ておくことです。2つ目は、社名や人名、専門用語の誤変換です。AIの文字起こしは固有名詞を間違えやすいため、名刺や資料と照合して直しましょう。
構成が決まったら、見出しを立てて本文を書きます。冒頭のリード文で「誰が・何を語るか・読者が得るもの」を示し、各見出しの下に本人の言葉を配置する流れです。
仕上げ|原稿確認と公開・再活用(ステップ6〜7)
書き上げた原稿は、公開前に話し手に確認してもらいます。確認をお願いするときは、事実関係と表現のどこまでを見てほしいかを伝えましょう。私たちの経験では、範囲を伝えておくと修正の往復は1回で済むことがほとんどです。
確認をお願いしてから戻ってくるまでの期限も、あわせて伝えておきます。私たちの現場では、1週間ほどを目安にしています。期限を決めずに送ると、忙しい経営者ほど確認が後回しになり、公開が数か月止まることもあるからです。
公開したら、記事を1回きりで終わらせないことが大切です。話し手にも公開を知らせ、本人のSNSで紹介してもらえると読者の輪が広がります。自社のSNSで印象的な一言を紹介し、営業資料や採用説明会でも使いましょう。再活用の方法は、記事の後半で詳しく紹介します。
インタビュー記事の質問と書き方のコツ|本音を引き出して読ませる
インタビュー記事の面白さは、聞き方と書き方の2つで決まります。質問は「過去→転機→いま→これから」の順に並べ、場面を聞く深掘りで本人だけの話を引き出しましょう。書くときは、見出しに本人の言葉を使い、話し言葉を読みやすく整えます。
取材に慣れていない方ほど、「うまく話してもらえるだろうか」と不安になるものです。けれども、話し手が語れるかどうかは、聞き手の準備でかなり変えられます。ここでは質問の並べ方、深掘りの一言、見出しとリード文、話し言葉の整え方の4つを順に見ていきます。
まず、時間の流れに沿った質問の並べ方を、例とあわせて図にしました。
転機の質問には時間をかけます。「ほかの選択肢はありましたか」と重ねると、決断の重みが伝わります。
質問は「過去→転機→いま→これから」の順に並べる
質問の順番は、時間の流れに沿わせると話し手が答えやすくなります。いきなり「あなたの強みは?」と聞かれても、すぐには言葉が出てきません。過去の話から入ると記憶がほぐれ、話が具体的に。
特に時間をかけたいのは、「転機」の質問。転機には、その人の価値観が一番よく表れます。読者が心を動かされるのも、多くはこの部分でしょう。
転機の話が出てきたら、時間をかけて聞いてください。「そのとき、ほかの選択肢はありましたか」と尋ねると、決断の重みが伝わる話が返ってきます。
具体的な場面を聞く深掘りのひと言
「はい」「いいえ」で終わる質問では、本人ならではの話は出てきません。話が抽象的になったら、場面を聞く一言で深掘りします。
例えば「チームワークを大切にしています」と返ってきたとします。そこで「チームワークを実感したのは、どんな場面でしたか」と聞くと、具体的な出来事が出てくるのです。ほかにも「そのとき、どう感じましたか」「なぜそう決めたのですか」は使いやすい一言です。
反対に、取材当日に避けたいのは3つです。聞き手が長く話しすぎること、答えを誘導すること、時間切れで最後の質問を省くことです。主役は、あくまで話し手です。
見出しとリード文に話し手の言葉を使う
インタビュー記事の見出しには、話し手の印象的な一言を使うのが効果的です。「入社の決め手について」より、「“この人たちと働きたい”と思えた面接」の方が、読者の目を引くのではないでしょうか。
リード文では、誰が・何を語るか・読者が何を得られるかの3点を示しましょう。読者は最初の数行で、読み進めるかどうかを決めています。
話し手の言葉で見出しを立てると、記事全体に本人の声が通るものです。見出しを拾い読みするだけでも、その人らしさが伝わる構成に仕上がります。
話し言葉の整え方|口ぐせは削り、肩書きは本人の名乗り方に
文字起こしをそのまま載せると、「えーと」「なんか」といった口ぐせで読みにくい文章が残ります。口ぐせや言い直しは削り、意味が変わらない範囲で文を整えましょう。ただし、関西弁や独特の語尾など、その人らしさは残します。
細かな点では、肩書きの書き方にも気を配りたいところです。肩書きは、取材の最後に「記事ではどう名乗りましょうか」と本人に尋ねて決めます。名刺の正式名称より、本人がふだん使う名乗り方の方が誤解を生みません。
また、募集期間やキャンペーンなど期限のある情報は、段落を分けておくと後から更新しやすくなります。私も、記事を長く使う前提で、日付の入る情報は本文と切り分けて書くようにしています。
お客様・社員インタビュー記事の活かし方|営業と採用で成果を積み上げる
中小企業にとって、お客様インタビュー記事は営業資料に、社員インタビュー記事は採用ページの柱になります。お客様インタビューは、導入事例の代表的な形です。BtoBの買い手の94.6%が、導入事例を参考にしていました(株式会社PRIZMA調査・2026年6月)。人の言葉で語る記事は、営業と採用の両方で働く資産です。
大手企業のように広告費をかけられなくても、お客様や社員の声なら自社にあります。むしろ社長と顧客の距離が近い中小企業ほど、生々しい話を集めやすいはずです。ここでは、お客様インタビューと社員インタビューを、それぞれの目的に沿って活かす方法を紹介します。
導入事例が参考になった理由の上位3つを、数字で並べました。
出典:株式会社PRIZMA「BtoBマーケティングにおける“導入事例”の認識」に関する調査(2026年6月発表/買い手502名・売り手504名)
お客様インタビュー|買い手は「同じ課題を解決した過程」を探している
同じ調査で、参考になった理由の最多は「自社と同じ課題を解決したプロセスが記載されていた」でした。割合は51.2%です。次いで「業種や規模が近い企業の事例だった」が40.2%と続きます(株式会社PRIZMA調査)。
つまり、お客様インタビューで中心に聞きたいのは「導入前に何に困っていたか」と「どう解決したか」です。成果の数字だけでなく、迷いや社内の調整といった過程まで丁寧に描くと説得力が増します。事例記事の組み立て方は「導入事例の書き方」でも詳しく解説しています。
取材をお願いするお客様の選び方と依頼の伝え方
取材をお願いするお客様は、狙いたい見込み客と業種や規模が近い方を選びます。前の調査でも、業種・規模の近さは参考になる理由の上位でした。大手の有名企業より、自社の主要顧客に近い会社の方が読者に響きます。
依頼するときは、お客様側のメリットも伝えましょう。例えば、自社の取り組みを発信できること、記事を自社サイトや採用で使ってよいことです。原稿は公開前に確認いただけると伝えると、安心して引き受けてもらえます。構成の型は「導入事例テンプレート」にまとめています。
社員インタビュー|入社の決め手と入社前とのギャップを聞く
社員インタビュー記事は、求人票では伝わらない人柄や働き方を見せる手段です。社員一人ひとりの顔が見えること自体が、大手にはない中小企業の強みです。
聞く内容は、職種によって変えましょう。営業職の求職者は成果の上げ方や評価の仕組みを、技術職の求職者は扱う技術や学べる環境を知りたがります。どの職種でも聞いておきたいのが、入社の決め手と、入社前とのギャップの2つです。良い意味でのギャップも、少し大変だった点も、正直に語られた記事ほど信頼されます。
少人数の会社なら、年に1〜2本ずつ増やすだけでも十分です。1年後には複数の社員の声が採用ページに並び、会社の雰囲気が立体的に伝わるはずです。
社員インタビューで聞いておきたい項目を、チェックリストにまとめました。
職種ごとに、求職者が知りたいこと(評価の仕組み・扱う技術など)を1~2問足します。
インタビュー記事の注意点|原稿確認・権利・ステマ規制
インタビュー記事は人の言葉と顔を扱うため、公開前の確認が欠かせません。押さえたいのは原稿確認の範囲、写真や実名の掲載許可、お客様の声とステマ規制の3つです。トラブルの多くは、取材前の取り決めで防げます。
公開後に「この表現は困る」と言われて記事を取り下げると、話し手との関係にも響きます。取材の依頼状に確認の流れや掲載範囲を書いておけば、双方が安心して進められるでしょう。公開前に見直したい項目を、3つの観点でまとめました。
ステルスマーケティングは2023年10月1日から景品表示法の規制対象です(消費者庁)。
原稿確認の範囲は事前に決め、書面で残す
原稿確認でよく起きるのが、話し手による大幅な書き直しです。表現をすべて書き換えられると、読みやすさや記事の狙いが崩れてしまいます。
防ぐには、取材を依頼する段階で確認の範囲を伝えておくことです。「事実関係の誤りと、公開できない情報の確認をお願いします」のように範囲を示し、メールなど書面で残しましょう。確認の回数や期限も、あわせて決めておくと進行が止まりません。
話し手から大きな修正が入ったときは、理由を尋ねてみましょう。多くの場合「社内で誤解されたくない」など、表現の背景に心配事があります。その心配に応える言い回しを一緒に考えると、記事の狙いを保ったまま着地できます。
写真・実名・社名の掲載許可を取る
写真や実名、社名の掲載には、本人と所属先の許可が要ります。肖像権とは、自分の顔や姿を無断で撮影・公開されない権利のことです。例えば、取材の場に写り込んだ別の社員の顔も、本人の了解なく載せることは避けましょう。社員であっても、退職後の扱いを含めて事前に同意を得ておくと安心です。
お客様インタビューでは、話し手本人だけでなく、その会社の広報担当の承認が必要な場合があります。取材の依頼時に、社内の承認手続きがあるかを先に尋ねておくと、公開直前に止まる事態を避けられます。
謝礼を渡したお客様の声はステマ規制の対象になりうる
ステルスマーケティングとは、広告であることを隠して行う宣伝のことです。2023年10月1日から、景品表示法の規制対象になりました(消費者庁)。
規制の対象は、事業者が第三者に依頼して行わせた表示のうち、広告だと分からないものです。
お客様インタビューは、自社サイトに自社の記事として載せる形なら、事業者の表示であることが明らかです。一方、謝礼を渡してお客様自身のSNSやブログで紹介してもらう場合は注意しましょう。その場合は「広告」「PR」などの表示が欠かせません。判断に迷うときは、消費者庁の運用基準を確かめてください。
インタビュー記事を会社の資産にする|1回の取材を5回使う蓄積型の運用
インタビュー記事は、1回の取材から5つ以上の発信に展開できるコンテンツです。記事として公開するだけでなく、SNS投稿・営業資料・採用説明会・社内共有にも使えます。話を積み上げるほど、会社の信頼が厚くなる運用の仕方を紹介します。
取材には、話し手と聞き手の時間、移動や撮影の手間がかかっています。記事1本で使い切るのは、もったいない投資の回収の仕方です。素材を何度も使い回す前提で取材を設計すると、同じ手間から得られる成果が何倍にも広がります。
1時間の取材で約1万8,000字の素材が生まれる(試算)
人が話す速さを1分300字前後と仮定すると、1時間の取材は約1万8,000字の文字起こしになります。記事1本に使うのは、そのうち4,000〜6,000字ほどです。残りの言葉は、使われないまま眠ってしまうことが少なくありません。
私が取材の現場で感じるのは、記事に入らなかった話にも宝が多いということです。本筋から外れた雑談の中に、SNSで紹介したくなる一言が埋まっています。文字起こしは、記事を書いた後も捨てずに保管しておくのがおすすめです。
記事・SNS・営業資料・採用・社内共有への展開例
1回の取材は、5つの発信に広げられます。冒頭の図のとおり、記事・SNS・営業資料・採用・社内共有の5つです。
例えば、お客様インタビューの一言を、営業メールの冒頭で紹介するのも手です。社員インタビューを朝礼で読み合わせると、会社の考え方を社内に浸透させる場にもなります。
インタビュー記事を一覧ページにまとめて回遊を生む
インタビュー記事の価値は、本数が増えるほど高まるものです。一覧ページを作り、カテゴリやタグで「社員」「お客様」と分けておくと便利です。読者は1本読んだ後、別の記事へと自然に進んでくれます。
こうした動きを回遊と呼びます。回遊とは、読者がサイト内の記事を次々に読み進めることです。例えば社員インタビューを読んだ求職者が、別の社員の記事や募集要項へ移る流れが当てはまります。
こうした「書いて終わりにしない」発信を、ハッシンラボでは蓄積型発信と呼んでいます。蓄積型発信とは、記事を自社サイトに積み上げ、長く読まれる資産に育てる考え方です。
基本の考え方は「発信を資産に変える「蓄積型」の3原則」で紹介しています。自社サイトに積み上がった人の言葉は、検索エンジンやAI検索に引用される情報源にもなります。オウンドメディアとは、自社で運営する情報発信の媒体のことで、例えば自社ブログや事例サイトを指します。全体の設計は「BtoBオウンドメディアの始め方」も参考にしてください。
よくある質問
インタビュー記事の文字数はどのくらいが目安ですか?
私たちが制作する場合は、3,000〜5,000字ほどに収めることが多いです。一問一答形式なら短めでも読みやすく、ストーリー形式は背景を描く分だけ長くなります。文字数よりも、伝えたい話を3つ程度に絞ることを優先しましょう。
インタビュー記事は一問一答とストーリー形式のどちらがよいですか?
初めて作るなら、一問一答形式が向いています。取材の流れをそのまま生かせるため、書きやすいのが特徴です。話し手の人柄や変化の過程をじっくり伝えたいときは、地の文でつなぐストーリー形式が向いています。
インタビューの取材時間はどのくらい必要ですか?
私たちの現場では、記事1本につき60〜90分を目安にしています。写真撮影をする場合は、別に15〜30分ほど見込んでおくと慌てずに済みます。オンライン取材でも、時間の目安は変わりません。
インタビュー記事の原稿は話し手に確認してもらうべきですか?
企業が作るインタビュー記事では、公開前に話し手の確認を取るのが一般的です。事実関係と表現のどこまでを確認してもらうかを事前に決めておくと、修正の往復が減ります。お客様の場合は、その会社の広報担当の承認が要ることもあります。
インタビュー記事の制作を外部に依頼するときの注意点は?
取材の目的と読者像を最初に共有し、録音データや文字起こしを自社でも受け取れるかを確かめましょう。素材が手元に残れば、SNSや営業資料にも再活用できます。外注先の選び方は「記事作成代行の費用相場と選び方」で解説しています。
まとめ|インタビュー記事は「人の言葉」を積み上げる資産になる
インタビュー記事とは、話し手の言葉を軸にまとめた記事です。作り方は、企画・事前調査と質問設計・取材・文字起こし・構成と執筆・原稿確認・公開と再活用の7ステップです。形式は一問一答・ストーリー・対談から、目的に合わせて選びます。
質を左右するのは、読者と目的を1文で決める企画と、「過去→転機→いま→これから」の質問設計です。お客様インタビューでは同じ課題を解決した過程を、社員インタビューでは入社の決め手とギャップを聞きましょう。公開前には、原稿確認の範囲や掲載許可、ステマ規制への対応も確かめておきます。
1本の記事は小さな一歩ですが、人の言葉は時間がたっても色あせません。1回の取材を記事・SNS・資料へと展開し、少しずつ積み上げていく。その積み重ねが、半年後・1年後に会社の信頼を支える資産です。まずは身近な社員1人へのインタビューから始めてみてはいかがでしょうか。