無料診断ツールで400万サイトを集めたHubSpotの事例|中小企業でも作れる「無料で役立つ」発信

2026.06.07
発信戦略と仕組み化

「役立つ発信をしても、なかなか問い合わせにつながらない」。中小企業の発信担当者から、よくいただくお悩みです。記事は読まれても、連絡先が得られない。そんなもどかしさを感じていませんか。

この壁を越えたのが、マーケティング支援のHubSpotです。同社は「Website Grader」という無料の診断ツールを公開しました。サイトを採点するこのツールは、5年で400万サイトを診断します。そして、利用者を次々と見込み客へ変えていったのです。

本記事では、HubSpotが何をしたのか、なぜリードにつながったのかを分解します。あわせて、中小企業が自社版の診断やチェックリストを作る手順まで整理しました。「無料で役立つ」発信のヒントになれば嬉しく思います。

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この事例から中小企業が学べること

結論からお伝えします。学ぶべきは「無料で役立つツールが、見込み客を集める」という考え方です。記事を読んでもらうだけでは、相手が誰かは分かりません。一方、診断ツールなら、利用者が自ら連絡先を教えてくれます。

特別な技術力は要りません。むしろ、顧客の悩みを知る中小企業ほど、刺さる診断を作れます。大切なのは、相手が「試してみたい」と思う切り口です。私たちが中小企業の発信を支援する現場でも、リード獲得の近道は「無料のお役立ち」にあると感じています。

結論:無料の「お役立ち」が見込み客を生む

HubSpotが示したのは、「役立つものを無料で配ると、見込み客が集まる」という事実です。多くの企業は、連絡先をもらうために特典で釣ろうとします。しかし、本当に役立つツールそのものが、最高の特典になるのです。

診断を受ける人は、自分の課題を改善したいと思っています。つまり、最初から意欲の高い見込み客です。無料で価値を渡し、その対価として連絡先をいただく。この交換が、質の高いリード獲得につながりました。

なぜ無料ツールが中小企業に効くのか

無料ツールは、今の中小企業にこそ向いています。理由は2つ。まず、一度作れば自動で見込み客を集め続けること。次に、顧客の悩みを深く知る中小ほど、刺さる診断を作れることです。

大企業のツールは、汎用的で当たり障りがありません。一方、中小は特定の悩みに特化できます。「この業種の、この悩み」に絞った診断は、強く刺さるでしょう。コンテンツで見込み客を育てる流れは中小企業のコンテンツマーケティングもご覧ください。

何をした会社か|HubSpotとWebsite Grader

HubSpotは、企業のマーケティングを支援するツールを提供する会社です。2007年、まだ無名だった同社が、ある無料ツールを公開しました。それが「Website Grader」です。

このツールが、HubSpotの名を一気に広める起爆剤になりました。いったい、どんな仕組みだったのでしょうか。

HubSpot Website Graderの戦略

無料の診断ツールを配り、
利用者を見込み客に変える

サイトを採点する無料ツールを公開し、本格レポートはメール登録制に。意欲の高い人が自ら連絡先を残す仕組みで、5年で400万サイトを診断しました。

自社サイトを採点する無料ツール

Website Graderは、誰でも無料で使える診断ツールでした。自分のサイトのURLを入れるだけで、点数がつく仕組みです。表示の速さ、検索対策、安全性など、複数の項目で採点される仕組みです。

専門知識がなくても、自分のサイトの良し悪しが一目で分かります。「うちのサイトは何点だろう」。この好奇心こそが、多くの人を引き寄せたのです。難しい説明ではなく、シンプルな点数。その分かりやすさが、利用のハードルを下げたのです。

メールアドレスでレポートを渡す仕組み

ここに、巧みな仕掛けがありました。点数は無料で見られますが、詳しい改善レポートを見るには、メールアドレスの登録が必要だったのです。利用者は、より深く知りたくて自ら連絡先を入力するのです。

こうしてHubSpotは、見込み客のリストを着実に増やしていきます。しかも、登録するのは「サイトを改善したい」という意欲のある人ばかりです。広告で集めた不特定多数とは、質が違います。無料の価値と引き換えに、上質な見込み客を得る。この設計が見事でした。

なぜ成果が出たのか|無料ツールが見込み客に変わる仕組み

HubSpotの成功には、明確な理由があります。無料で本当に役立つ価値を渡したことです。その診断結果が、利用者を見込み客へと自然に変えました。仕組みを分解してみましょう。

無料ツールが見込み客に変わる3つの仕組み

1. メールでリスト化

詳しい結果はメール登録制。改善意欲のある質の高い見込み客が自動で集まる。

2. 点数が共有を生む

低い点は焦り、高い点は自慢。どちらも共有につながり、4万本超の被リンクに。

3. 課題の自覚→関心

点数で課題に気づいた人が、解決策を持つ自社サービスへ自然に関心を寄せる。

診断結果をメールで渡し、見込み客リストにする

無料ツールの最大の役割は、見込み客リストづくりでした。診断を受けた人は、結果を知るために連絡先を残します。これが、そのまま営業の起点になるリストです。

しかも、ただのリストではありません。「サイトを改善したい」という明確な意欲を持つ人たちです。あとは、その人たちに役立つ情報を届けるだけです。意欲の高い見込み客を、自動で集める仕組みが完成しました。これは、飛び込み営業とは正反対の効率です。

スコアが「共有したくなる」気持ちを生む

もう一つの巧みさが、点数という形式です。点数が出ると、人は誰かに伝えたくなります。低い点なら「改善しなきゃ」と焦り、高い点なら「うちは優秀」と自慢したくなるのです。

どちらの感情も、共有という行動につながります。利用者がブログやSNSで自分の点数を語り、ツールが口コミで広がりました。結果として、4万本を超える被リンクが生まれました。利用者自身が宣伝してくれる。点数という仕掛けが、拡散の力を生んだのです。

課題を自覚した人が自社サービスに関心を持つ

診断には、もう一つ大切な効果があります。それは、利用者に課題を自覚させることです。「うちのサイトは50点か」と知れば、改善したくなります。

そして、改善を助けてくれる存在を探し始めるでしょう。そこで思い浮かぶのが、診断を提供したHubSpotです。課題を見せ、その解決策を持つ会社として認識される。診断が、自社サービスへの自然な入口になりました。売り込まずとも、相手から関心を持ってくれる流れです。

数字で見る成果

HubSpotの無料診断ツールは、数字にもはっきり表れています。一つのツールが生んだ規模に注目してください。

一つの無料ツールが生んだ成果

2006〜2011年・Website Grader

400万サイト

診断した数(5年で)

4万本超

利用者の共有で得た被リンク

主要リード源

無名から有名企業へ押し上げた

5年で400万サイトを診断

Website Graderは、2006年から2011年の間に、約400万サイトを診断しました(出典:HubSpot)。これは、一つの無料ツールが集めた数としては驚異的でしょう。

そして、その多くがメール登録を伴いました。つまり、診断の数だけ見込み客との接点が生まれました。広告費を払い続けるのではなく、役立つツールが自動で人を集め続けたのです。一度作った資産が、長く働いた好例でしょう。

4万本超の被リンクと主要なリード源に

拡散の効果も見逃せません。利用者が自分の点数を共有したことで、4万本を超える被リンクが生まれました(出典:Startup Spells)。被リンクとは、ほかのサイトから自社へ向けられたリンクのことです。

これだけのリンクは、検索順位を押し上げる力になります。さらに、Website GraderはHubSpot初期の主要なリード源になりました。無名だった会社を、業界の有名企業へと押し上げました。一つのツールが、集客とブランディングの両方を担ったのです。

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自社に応用する|中小企業が今日から始める3ステップ

ここからが本題です。HubSpotの発想は、高度なツールがなくても再現できます。簡単な診断やチェックリストから始められます。3つのステップに整理しました。

中小企業が今日から始める3ステップ

STEP
1

顧客が知りたい「自己診断」のテーマを選ぶ

「自分は大丈夫か」と気になること(住まいの劣化・補助金対象等)。「○項目でわかる○○診断」に。

STEP
2

簡単な診断・チェックリストを作る

表計算やフォームで十分。点数や結果に簡単なアドバイスを添え、まず一つ公開してみる。

STEP
3

結果と引き換えに連絡先をいただく

詳しい解説はメールで届ける。聞く項目は最小限に。得たリストに役立つ情報を届け続ける。

STEP1:顧客が知りたい「自己診断」のテーマを選ぶ

最初の一歩は、テーマ選びです。顧客が「自分は大丈夫だろうか」と気になることを探しましょう。住まいの劣化、お金の備え、補助金の対象。自分の状況を確かめたくなるテーマが理想です。

ここが、診断の成否を決めます。顧客の不安や好奇心に、ぴったり寄り添うテーマを選びましょう。「○項目でわかる○○診断」という形に落とし込むと、企画が固まります。まずは、よく相談される悩みから考えてみてください。

STEP2:簡単な診断・チェックリストを作る

次に、診断の中身を作ります。高度なシステムは不要です。表計算や無料のフォームで、十分に始められます。「はい・いいえ」で答える質問を並べ、点数やタイプを出すだけでも機能します。

大切なのは、答えた人が「なるほど」と思える結果を返すことです。点数に加え、簡単なアドバイスを添えましょう。診断そのものが役立つほど、信頼が生まれます。凝った作りより、まず一つ公開してみることが大切です。

STEP3:結果と引き換えに連絡先をいただく

最後に、詳しい結果と連絡先を交換します。簡単な結果はその場で見せ、詳しい解説はメールで届ける形です。HubSpotと同じ仕組みですね。これで、意欲の高い見込み客のリストが育ちます。

ただし、聞く項目は最小限にしましょう。あれもこれも入力させると、離脱されます。まずメールアドレスだけ、と負担を軽くするのがコツです。得られたリストには、その後も役立つ情報を届けていきましょう。発信を資産に育てる考え方は規模別のオウンドメディア事例もご覧ください。

つまずきやすい点・注意点

最後に、始める前に知っておきたい注意点をお伝えします。無料ツールは強力ですが、作り方を誤ると逆効果になります。落とし穴も理解しておきましょう。

無料診断ツールの「失敗」と「工夫」

やりがちな失敗うまくいく工夫
連絡先集めが目的化するまず本当に役立つ診断にする
入力項目を増やしすぎるまずメールアドレスだけに絞る
作って放置する記事やSNSで使ってもらう導線を整える

まず「本当に役立つ」ことを最優先する

まず大切なのが、連絡先集めを目的にしないことです。「リードがほしい」が前面に出ると、役立たない診断になりがちです。利用者は、その下心をすぐ見抜きます。

主役は、あくまで利用者の役に立つことです。HubSpotのツールも、本当にサイト改善に役立つ内容でした。役立つからこそ、人は使い、共有してくれます。連絡先は、価値を渡した結果としていただくもの。順番を間違えないことが肝心です。

個人情報の扱いに配慮する

もう一つの注意点が、個人情報への配慮です。メールアドレスをいただく以上、その扱いには責任が伴います。何に使うのかを明示し、利用者が安心できる状態を整えましょう。

不要にしつこい営業は、かえって信頼を損ないます。得られた連絡先には、まず役立つ情報を届けることを心がけてください。信頼を積み重ねた先に、相談や契約があります。誠実な運用が、長く効く仕組みを支えます。発信の進め方に迷ったら、ハッシンラボ Premiumの個別相談もご活用ください。あわせてオウンドメディアの成功事例13選もご覧ください。

よくある質問(FAQ)

Q1. 「無料診断ツール」は、なぜリード獲得に効くのですか?

利用者が結果を見るために、自ら連絡先を登録してくれるためです。HubSpotのWebsite Graderは、本格的なレポートをメールアドレスと引き換えに渡しました。診断を受ける人は、すでに課題を改善したい意欲を持っています。つまり、質の高い見込み客が自然と集まる仕組みです。

Q2. 中小企業でも、診断ツールは作れますか?

作れます。HubSpotのような高度なツールである必要はありません。表計算やフォームを使った簡単なチェックリストでも、十分に機能します。たとえば「○項目でわかる自己診断」のような形です。大切なのは技術力ではなく、顧客の役に立つ切り口を選ぶことです。

Q3. どんなテーマの診断を作ればよいですか?

顧客が「自分は大丈夫だろうか」と気になるテーマが向いています。工務店なら住まいの劣化診断、士業なら助成金の対象チェック、といった具合です。顧客が自分の状況を確かめたくなるテーマを選びましょう。診断を通じて課題に気づいた人が、自社への相談につながります。

Q4. 連絡先をもらうのは、嫌がられませんか?

役立つ結果を渡す前提なら、過度に嫌がられることは少ないです。HubSpotも、価値あるレポートと引き換えにメールを得ました。ただし、入力項目は最小限にすることが大切です。あれもこれもと聞くと離脱されます。まずメールだけ、と負担を軽くするのがコツです。

Q5. 診断ツールを作れば、すぐにリードは増えますか?

ツールの認知が広がるまでには、時間がかかります。診断は、作って終わりではありません。記事やSNSで紹介し、使ってもらう導線を整える必要があります。HubSpotも、利用者の共有が広がって成果が大きくなりました。役立つツールを地道に届け続けることが前提になります。

飯塚昭博

この記事の著者

飯塚 昭博

Akihiro Iitsuka

コントリ株式会社 代表取締役

青山学院大学卒業後、自動車会社にて年間180億円規模の設備調達を担当。中小企業経営者の想いに触れる中でその価値を伝えることに使命を感じ、2023年独立。経営者インタビューメディア「コントリ」を運営し、100社以上の経営者を取材。SEO・AI活用・発信設計を通じて中小企業の「伝わる発信」を支援している。

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