町工場が現場動画と技術記事で採用と受注を伸ばした事例|製造業の発信成功パターン

2026.06.07
SNS・動画発信

「うちは地味な製造業だから、発信しても意味がない」。中小の製造業の方から、よくいただくお声です。BtoBで、しかも現場仕事。発信とは縁遠いと感じていませんか。

しかし、その「地味な現場」を武器に成果を出した町工場があります。TikTokで採用を変えた三陽工業と、技術メディアで受注を伸ばした東海バネ工業です。2社に共通するのは、現場そのものを発信の素材にしたこと。専門性が高いからこそ、競合の少ない場所で見つけてもらえました。

本記事では、2社が何をしたのか、なぜ成果が出たのかを分解します。あわせて、中小製造業がスマホ1台から発信を始める手順まで整理しました。「現場が宝になる」発信のヒントになれば嬉しく思います。

現場を素材にした発信を実現した
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この事例から中小製造業が学べること

結論からお伝えします。学ぶべきは「動画で採用、記事で受注」という二本立ての発想です。目的によって、効く発信の形は変わります。人柄を伝える動画は求職者に、技術を語る記事は取引先に響くのです。

特別な機材や広告費は要りません。むしろ、唯一無二の現場を持つ製造業ほど有利でしょう。大切なのは、地味だと思っている日常を「素材」として捉え直すことです。私たちが中小企業の発信を支援する現場でも、製造業の強みは「現場にある」と感じています。

結論:製造業は動画と記事を使い分ける

2社が示したのは、「目的でチャネルを分ける」という知恵です。同じ発信でも、採用と受注では届けたい相手が違います。相手が違えば、響く形も違うのです。

採用したいなら、社風や人柄が伝わる動画が効きます。受注したいなら、技術力や課題解決を語る記事が効きます。三陽工業は前者を、東海バネ工業は後者を選んでいます。自社の目的に合わせて、武器を選ぶ。この使い分けが、成果への近道になります。

なぜ今、製造業の発信が効くのか

製造業の発信は、今こそ追い風が吹いています。理由は2つ。まず、専門性が高いテーマは競合が少ないこと。次に、現場という独自の素材を持っていることです。

派手な業界では、発信が飽和ぎみ。私たちが製造業の発信を支援する際も、まず現場のどこに『驚き』があるかを一緒に探します。一方、製造業の情報は、まだまだ希少です。「こんなものまで作れるのか」という技術は、検索でもSNSでも目を引きます。希少な情報は、それだけで見つけられやすい。製造業の地味さは、裏を返せば強みなのです。

何をした会社か|2つの町工場の発信

ここで紹介するのは、規模の大きくない2社です。大企業のような広告予算はありません。それでも、発信の工夫で大きな成果を上げました。具体的に見ていきましょう。

製造業の発信は「動画=採用」「記事=受注」

目的に応じてチャネルを使い分けた2社

三陽工業

チャネル:TikTok(おじさんTikTok)

内容:現場の人柄・社風を発信

目的:採用の強化

東海バネ工業

チャネル:オウンドメディア「ばね探訪」

内容:取引先のものづくりを発信

目的:受注を伸ばす

三陽工業——「おじさんTikTok」で採用を強化

三陽工業は、研磨や製造派遣を手がける会社です。2021年、人材戦略部の中高年社員が、TikTokを始めます。歌やダンス、一発芸といった、肩の力が抜けた動画です。通称「おじさんTikTok」として、広く親しまれる存在に。

狙いは、新卒採用との連携にありました。固い会社案内では、若者に会社の雰囲気は伝わらないもの。一方、おじさん社員が楽しそうに踊る動画は、社風をそのまま映し出します。「この人たちと働きたい」。そう感じてもらうための、等身大の発信。それが狙いでした。

東海バネ工業——技術メディア「ばね探訪」で受注を伸ばす

東海バネ工業は、一品一様のばねを作る会社です。2008年と早い時期に、オウンドメディア「ばね探訪」を立ち上げました。特徴は、自社製品の宣伝をごく一部にとどめている点です。

代わりに発信するのは、取引先のものづくりへの取り組みです。JR東日本など、さまざまな企業の現場を掘り下げて紹介します。一見、自社の宣伝になりません。しかし、ものづくりへの深い理解と姿勢が伝わり、「この会社になら任せられる」という信頼を育てたのです。

なぜ成果が出たのか|現場が最強の素材になる仕組み

2社の成功には、共通する理由があります。現場そのものを、発信の素材にしたことです。その仕組みを分解してみましょう。

現場が最強の素材になる3つの理由

1. 現場は唯一無二の素材

職人の手仕事や技術は、当事者の「当たり前」が社外では「驚き」に。飾らない現場が最強の素材。

2. 専門性が高い=競合少

ニッチな技術ほど語れる会社は少なく、検索やSNSで上位を取りやすい。専門性は発信資産。

3. 採用と受注で使い分け

届けたい相手で形を変える。動画は求職者に、記事は取引先に深く届く。

現場の日常や技術が、唯一無二の素材になる

製造業の現場には、ほかにない素材が眠っています。職人の手仕事、巨大な機械、緻密な技術。どれも、外から見れば新鮮で面白いはず。当事者にとっての「当たり前」が、社外では「驚き」に変わります。

三陽工業の動画も、特別な演出はありません。社員の素の姿が、そのまま魅力になっています。東海バネ工業の記事も、現場の取り組みを丁寧に綴っただけ。飾らない現場こそが、最強のコンテンツになりました。素材は、すでに自社の中にある。探すまでもありません。

専門性が高いほど競合が少なく上位を取りやすい

製造業の強みは、その専門性の高さにあります。ニッチな技術ほど、語れる会社は限られます。つまり、競合が少ないのです。発信すれば、検索やSNSで上位に立ちやすい。これは見逃せない利点でしょう。

たとえば「特殊なばねの作り方」を語れる会社は、世の中にわずかです。だからこそ、その情報を求める人に、まっすぐ届く。広く浅い情報は埋もれる一方、狭く深い専門情報は際立ちます。専門性は、製造業が持つ最大の発信資産でしょう。

採用と受注で、チャネルを使い分ける

2社の賢さは、目的に応じて手段を変えた点にあります。三陽工業は、採用を狙ってTikTokを選びました。若者に届き、人柄が伝わる場だからです。東海バネ工業は、受注を狙って記事を選びました。じっくり技術を伝え、信頼を築ける場だからです。

このように、目的と相手を見極めて発信の形を選ぶ。これが、成果を分ける鍵になります。採用も受注も両方ほしいなら、両方の発信を持てばよい話。一つの形にこだわる必要はないでしょう。

数字で見る成果

2社の発信は、数字にもはっきり表れています。採用でも受注でも、確かな成果が出ている点に注目してください。

2社の発信が生んだ成果

三陽工業(採用)

フォロワー5万人超

おじさんTikTok

内定8人中3人

2022新卒・TikTok経由

東海バネ工業(受注)

16年以上 継続

「ばね探訪」2008年〜

毎年新規100社

累計取引先4500社超

三陽工業——フォロワー5万人超、内定者の一部がTikTok経由

三陽工業のTikTokは、フォロワー5万人を超える人気アカウントに育ちました。製造業の採用動画としては、異例の規模でしょう。そして、その効果は採用にまっすぐ直結します。

2022年の新卒採用が象徴的でした。内定者8人のうち3人が、TikTokをきっかけに応募しています(出典:三陽工業 PR TIMES)。実に、3分の1以上です。広告費をかけずに、若者が自ら集まる仕組みができあがりました。「おじさんの踊り」が、立派な採用戦略になったのです。

東海バネ工業——16年継続、毎年新規100社・累計4500社超

東海バネ工業の「ばね探訪」は、2008年の開設から16年以上続く長寿メディアです。長く続けたからこそ、信頼が積み上がりました。その成果は、受注という形ではっきり表れています。

同社では、毎年100社もの新規顧客が生まれ、累計の取引先は4500社を超えました(出典:広報会議)。自社を売り込まない発信が、かえって信頼を呼んだのです。技術への姿勢を語り続けることが、安定した受注につながったのです。

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自社に応用する|中小製造業が今日から始める3ステップ

ここからが本題です。2社の発信は、特別な設備がなくても再現できます。スマホと現場の知見があれば、今日から始められます。3つのステップに整理しました。

中小製造業が今日から始める3ステップ

STEP
1

採用なら、スマホで現場動画を撮る

高価な機材は不要。現場や社員の人柄を等身大で。完璧さより親しみやすさが応募の決め手。

STEP
2

受注なら、技術ノウハウを記事にする

「こんな課題も解決できる」を言葉に。売り込みすぎず、ものづくりへの姿勢を語る。

STEP
3

無理なく続ける仕組みを先に決める

月1本でも継続が力に。担当を決め、撮影や執筆を業務に組み込む。続ける仕組みが成果を左右。

STEP1:採用なら、スマホで現場動画を撮る

採用を強化したいなら、まず現場の動画です。高価な機材は要りません。スマホで、現場の様子や社員の人柄を撮りましょう。三陽工業のように、肩の力を抜いた等身大の動画で十分です。

大切なのは、完璧さより親しみやすさです。職人の手仕事、休憩中の雑談、社員の素顔。求職者が知りたいのは、「どんな人と働くか」でしょう。飾らない日常こそが、応募の決め手になります。SNS採用の進め方は中小企業のSNS採用もご覧ください。

STEP2:受注なら、技術ノウハウを記事にする

受注を伸ばしたいなら、技術の記事です。自社が培ってきた技術や、対応できる難しい仕事を言葉にしましょう。「こんな課題も解決できる」と示せば、同じ悩みを持つ企業が見つけてくれます。

東海バネ工業のように、取引先の取り組みを掘り下げるのも一手です。自社を売り込みすぎず、ものづくりへの姿勢を語る。その誠実さが信頼を生みます。専門用語には説明を添え、初めての人にも分かるように書きましょう。

STEP3:無理なく続ける仕組みを先に決める

最後に、続ける仕組みを整えます。製造業は、本業が忙しいものです。気合だけで始めると、すぐに更新が止まりがち。だからこそ、無理のないペースを先に決めましょう。

月1本でも、続ければ確実に積み上がるもの。東海バネ工業も、16年の継続で信頼を築きました。担当を決め、撮影や執筆を業務に組み込むことが肝心です。続ける仕組みが、最終的な成果を左右します。発信を資産に育てる考え方は業種別の発信成功パターンもご覧ください。

つまずきやすい点・注意点

最後に、始める前に知っておきたい注意点をお伝えします。製造業の発信は、機密と完璧主義に気をつける必要があります。落とし穴も理解しておきましょう。

製造業の発信「失敗」と「工夫」

やりがちな失敗うまくいく工夫
機密まで写してしまう公開してよい範囲を社内で先に決める
完璧な動画・記事を目指すまず素朴でも一本出す
気合で始めて止まる無理なく続く仕組みを先に決める

機密と公開の線引きを決める

まず大切なのが、機密への配慮です。現場を撮ると、図面や特殊な工程が写り込むことがあります。取引先との守秘義務に関わる場合も少なくありません。何を見せ、何を見せないか。この線引きを、社内で先に決めておきましょう。

東海バネ工業も、取引先の事業を紹介する際は、相手の了解を得ています。安心して発信を続けるには、ルールが欠かせません。迷ったら、公開しない。その慎重さが、信頼を守ります。守るべきものを守った上で、自由に発信することが大切です。

完璧を求めず、まず出してみる

もう一つの注意点が、完璧主義です。「立派な動画でないと」「文章が下手だから」と、なかなか踏み出せない方は多いものです。しかし、完璧を待っていては、いつまでも始まりません。

三陽工業の動画も、プロの作品ではありません。むしろ、その素朴さこそが愛されています。最初の一本は、拙くて当然。出しながら改善すればよいのです。まず公開し、反応を見て磨いていく。その一歩が、すべての始まりになります。発信の進め方に迷ったら、ハッシンラボ Premiumの個別相談もご活用ください。あわせてオウンドメディアの成功事例13選もご覧ください。

よくある質問(FAQ)

Q1. 製造業に、発信やオウンドメディアは本当に向いていますか?

向いています。製造業には、現場の技術や日常という唯一無二の素材があるためです。三陽工業はTikTokで採用を、東海バネ工業は技術メディアで受注を伸ばしました。専門性が高いテーマほど競合が少なく、検索やSNSで見つけられやすいのも利点です。地味に見える現場こそ、発信の宝庫になります。

Q2. 「動画は採用、記事は受注」とは、どういう意味ですか?

発信の目的に応じて、チャネルを使い分ける考え方です。社風や人柄を伝える動画は、求職者に響き採用に効きます。一方、技術や課題解決を語る記事は、取引先に響き受注につながります。両方を混ぜるより、目的ごとに最適な形を選ぶほうが、それぞれの相手に深く届きます。

Q3. 撮影や記事制作の専門スキルがなくても始められますか?

始められます。三陽工業の動画も、社員がスマホで撮った素朴なものでした。凝った編集より、現場のありのままが共感を呼びます。記事も、普段の技術や仕事のこだわりを言葉にするだけで十分です。完璧な作品を目指すより、まず一本出してみることが大切です。

Q4. 技術やノウハウを公開すると、競合に真似されませんか?

心配しすぎる必要はありません。表面的な情報は真似できても、長年の経験や対応力までは簡単に真似できないためです。東海バネ工業も、取引先のものづくりを掘り下げて発信し、信頼を高めました。ただし、本当の機密情報は公開しない線引きを、社内で先に決めておくことが大切です。

Q5. 成果が出るまで、どれくらいかかりますか?

発信の種類によりますが、半年から数年の継続が目安です。東海バネ工業の「ばね探訪」も、16年続けて信頼と受注を積み上げました。一夜で成果が出るものではありません。だからこそ、無理なく続けられるペースを先に決めることが、製造業の発信を成功させる条件になります。

飯塚昭博

この記事の著者

飯塚 昭博

Akihiro Iitsuka

コントリ株式会社 代表取締役

青山学院大学卒業後、自動車会社にて年間180億円規模の設備調達を担当。中小企業経営者の想いに触れる中でその価値を伝えることに使命を感じ、2023年独立。経営者インタビューメディア「コントリ」を運営し、100社以上の経営者を取材。SEO・AI活用・発信設計を通じて中小企業の「伝わる発信」を支援している。

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