オウンドメディアの事例を規模別に解説|ひとり社長から中小まで真似できる発信

2026.06.07
発信戦略と仕組み化

「オウンドメディアの事例を調べても、大企業の話ばかりで自社には当てはまらない」。中小企業の発信担当者から、よくいただくお悩みです。月1600万PVといった数字を見ても、人手も予算も違うもの。何から真似ればよいのか、分かりにくいですよね。

結論からお伝えします。事例を探すときは、業種より先に会社の規模で選ぶのが近道です。使える人数も予算も近い事例ほど、打ち手を再現しやすいからです。たとえば、ひとり運営のミウラタクヤ商店。人力のLINE接客で年商1億円を実現しました。町工場の東海バネ工業は、技術記事で受注と採用をのばしています。どちらも「自社サイズだからできること」に集中した好例です。

本記事では、オウンドメディアの事例を3つの規模に分けて紹介します。「ひとり社長・個人事業」「従業員数十名の中小企業」「成長企業・スタートアップ」の3区分です。あわせて、規模を問わず共通する最初の一歩まで整理しました。自社に近い規模の成功パターンを見つける手がかりになれば嬉しく思います。

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オウンドメディアの事例は「自社と同じ規模」で選ぶ

オウンドメディアの事例は、自社と同じくらいの規模から選ぶことをおすすめします。規模が近いほど、前提となる人員や予算がそろい、施策を再現しやすいからです。逆に、大企業の事例をそのまま真似ると、人手も時間も足りずに途中で止まりがちになります。まず見るべきは「すごい数字」ではなく、「自分の会社サイズの成功例」です。そこから考え方を抜き出すこと。これが遠回りに見えて、いちばん確実な順番だと考えています。

規模が違えば、真似すべき打ち手も変わる

同じオウンドメディアでも、規模によって取るべき打ち手は大きく変わります。ひとり運営なら、手を広げず一つの強みに集中するのが現実的でしょう。社員が数十名いれば、専門知識を分担して記事化できます。成長企業なら、勢いやストーリーを共感に変える発信が効いてきます。

例えば、大企業が10人体制で月50本を出す事例は、ひとり担当者には到底再現できません。重要なのは本数の多さではなく、自社の人数で「続けられる形」を選ぶことです。背伸びした計画は、ほぼ例外なく息切れを招きます。規模に合った打ち手こそ、長く積み上がる資産になるのです。だからこそ、事例選びの最初の物差しは「規模」が適しています。

事例から抜き出すのは「数字」ではなく「考え方」

成功事例は、数字をまねるものではなく「考え方」を抜き出すものです。月100万PVという数字だけを追っても、自社の体制では届かないことがほとんどでしょう。大切なのは、その会社が「なぜ成果を出せたのか」という背景にある判断です。

私たちが中小企業の発信を支援する現場でも、まず「その会社が何を大切にしたか」を読み解くことから始めます。たとえばミウラタクヤ商店なら「人力の接客」、ベイジなら「専門性を出し惜しまない」。サイボウズ式なら「すぐに売らない」という考え方です。こうした姿勢は、規模を超えて自社に移植できます。数字は結果にすぎません。再現すべきは、その手前にある姿勢のほうです。

この記事の規模区分(ひとり/中小/成長企業)

本記事では、事例を3つの規模に区分しました。ひとり社長・個人事業従業員数十名の中小企業、そして成長企業・スタートアップの3区分です。それぞれ、使える人手や発信のスタイルが異なります。

自社に近い区分から読むと、学びがぐっと具体的になるはずです。ひとりなら集中、中小なら専門性、成長企業なら共感。これが各区分のキーワードになります。なお、製造業・士業・BtoBなど業種ごとの発信パターンを知りたい方は、業種別の発信成功パターンもあわせてご覧ください。規模と業種、2つの軸で見ると、自社に合う事例がより鮮明になります。

オウンドメディアの事例は「自社の規模」で選ぶ

ひとり社長・個人事業

主な打ち手一点集中・人力の接客

キーワード集中

代表事例ミウラタクヤ商店

従業員数十名の中小企業

主な打ち手専門知識を出し惜しまない

キーワード専門性

代表事例東海バネ工業/ベイジ

成長企業・スタートアップ

主な打ち手等身大・売らない発信

キーワード共感

代表事例Groove/サイボウズ式

自社に近い規模の区分から読むと、真似できる打ち手が見つかります。

ひとり社長・個人事業のオウンドメディア事例

まずは、運営者がひとりでも成果を出した事例です。人手が少ないからこそ発信を仕組み化し、一つの強みに集中したことが共通点になっています。「人数が少ないから無理」と感じている方ほど、ヒントが多いはずです。少人数には、大企業にはない「身軽さ」と「距離の近さ」という武器があります。むしろ、規模が小さいことが強みに変わる。そんな発想の転換が、この事例の出発点でした。

ひとり運営の事例|ミウラタクヤ商店

店長ひとりのLINE人力接客で
5期連続 年商1億円

チャットボットで自動化せず、店長自身が一人ひとりの相談に丁寧に即レス。大企業が手放した「人の手による接客」を価値に変えた、小規模事業者ならではの勝ち筋です。

ミウラタクヤ商店——店長ひとりのLINE接客で年商1億円

ミウラタクヤ商店は、店長がひとりで切り盛りする健康食品のECです。最大の特徴は、LINE公式アカウントを使った人力の接客にあります。チャットボットで自動化するのではなく、お客様一人ひとりの相談に、店長自身が丁寧に即レスする。この距離の近さが、ほかにない強みになっています。

売り込まず、まず相談に乗る。その姿勢の積み重ねで、5期連続の年商1億円を実現しました。Shopify導入後の1年では、売上が400%に伸びています(出典:ECzine)。大企業のように自動化された大量配信ではなく、ひとりだからこそできる手づくりの接客。これが、価格でもスペックでもない選ばれる理由を生み出しました。発信とは、必ずしも記事だけではないと教えてくれる事例です。

ひとり運営から学ぶ「集中」と「人力の強み」

この事例から学べるのは、「集中」と「人力の強み」という2点です。手を広げず、得意な一点に絞ったからこそ、ひとりでも無理なく回せています。あれもこれもと欲張らない潔さが、継続の土台になりました。

そしてもう一つが、人の手による対応そのものを価値に変えた発想です。大企業が効率化のために手放した「丁寧な人力対応」は、小規模事業者だけが持てる武器になります。LINEの無料枠でも、心のこもった接客は十分に始められるでしょう。まずは問い合わせへの返信を、定型文だけで終わらせない。そんな小さな工夫から試してみてはいかがでしょうか。手が届く範囲を、深く耕す。これがひとり運営の勝ち筋です。

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従業員数十名の中小企業のオウンドメディア事例

次に、社員数十名規模で専門性を武器にした事例です。広告に頼らず、自社の知識を出し惜しまない発信が成果につながっています。BtoBや製造業など、専門性が高い会社ほど効果が見込めるパターンと言えるでしょう。

なぜなら、専門的なテーマは検索する人が限られる分、競合も少ないからです。ニッチであるほど、書いた記事が上位に届きやすくなります。「自社の技術なんて当たり前すぎる」という思い込みこそ、いちばんもったいないもの。社外から見れば、それは十分な価値を持つ情報です。

数十名規模でも、専門性で大きな成果

東海バネ工業(町工場)

受注+採用 に貢献

技術オウンドメディア「ばね探訪」で、ものづくりの知見を発信。ニッチな専門テーマが問い合わせの入口に。

ベイジ(BtoB制作会社)

年400超リード

「量より質」で数万字の高密度記事を継続。年100名超の採用応募も同時に獲得しています。

東海バネ工業——技術メディアで受注と採用を伸ばした町工場

東海バネ工業は、ばねを一品一様で製造する町工場です。オウンドメディア「ばね探訪」などを通じて、技術やものづくりの知見を地道に発信してきました。難易度の高い注文に応えてきた経験そのものが、発信の素材になっています。

専門性の高いテーマには、競合が少なく検索で見つけられやすいという利点があります。「こんなばねは作れるのか」と検索した技術者が、記事を入口に問い合わせる。その流れが、受注だけでなく採用にも効果を広げました(出典:コンマーク)。製造業にとって「当たり前の技術」は、社外から見れば貴重な一次情報です。難しい仕事に向き合ってきた会社ほど、語れることは多いはず。技術力を発信に変える発想が、ここにあります。

ベイジ——「量より質」で年400リードを得たBtoB制作会社

ベイジは、BtoBに強みを持つWeb制作会社です。発信の方針は一貫しており、「量より質」を徹底しています。1記事に数万字を投じ、専門知識を出し惜しまない高密度な記事を積み上げてきました。読み応えのある記事は、それ自体が会社の実力の証明になります。

その結果が、年400件を超えるリードと、年100名を超える採用応募の同時獲得です(出典:ベイジ公式ブログ)。記事の本数を追うより、一本の深さで信頼を勝ち取る戦略でした。少人数でも質で戦える——それを数字で示したのがベイジです。「短い記事を量産しなければ」という思い込みから、いったん離れてみる価値はあるでしょう。

中小規模に共通する「専門性の出し方」

数十名規模の事例に共通するのは、「専門性を惜しまず出す」という姿勢です。知識を抱え込まず公開することが、かえって信頼と指名につながっています。出し惜しみは、結果として機会を逃すことのほうが多いのです。

「ノウハウを公開したら真似される」と不安に感じる方も少なくありません。しかし実際は逆です。出し惜しみする会社より、惜しみなく教える会社のほうが選ばれやすい傾向にあります。情報があふれる時代だからこそ、誠実に教えてくれる相手が信頼されるのでしょう。

まずは、よく聞かれる質問の答えを1本記事にしてみる。それだけでも、専門性は十分に伝わります。BtoBでの始め方はBtoB企業のコンテンツマーケティングの始め方もあわせてご覧ください。

成長企業・スタートアップのオウンドメディア事例

最後に、成長フェーズの企業が認知と信頼を一気に広げた事例です。等身大の発信や「売らない」姿勢が共感を生み、ファンと採用力につながっています。知名度も予算もまだ十分でない時期だからこそ、人柄や考え方をさらけ出す発信が効いてきます。完璧に見せようとせず、挑戦の過程ごと共有する。その姿勢が、応援したくなる空気をつくり出しました。

成長企業が選んだ「共感」を生む2つの型

 Grooveサイボウズ式
発信の方針数字も失敗も公開する透明性ブログ製品を売らない読み物メディア
コンテンツ月商10万ドルへの道のりを連載働き方・チームワークの記事
主な成果24時間で1000人登録・累計500万閲覧月100万PV・採用とブランディングに波及

Groove——売上も失敗も公開してファンを集めたSaaS

Grooveは、海外のヘルプデスクSaaSです。創業期は数あるツールに埋もれ、差別化に苦しんでいました。そこで選んだのが、月商10万ドルへの道のりを数字も失敗もすべて公開する連載ブログです。うまくいったことだけでなく、つまずきや判断ミスまで包み隠さず綴りました。

このリアルな試行錯誤が、強い共感を呼びます。公開からわずか24時間で1000人が登録し、ブログは累計500万人以上に読まれました。事業は年商500万ドル超へと育っています(出典:Groove公式ブログ)。きれいに整えた成功談よりも、等身大の挑戦のほうが人を動かす。弱さを見せる勇気が、ファンとの距離を縮めた事例です。

サイボウズ式——「製品を売らない」メディアで月100万PV

サイボウズ式は、サイボウズが運営するオウンドメディアです。方針は徹底して「製品の宣伝につなげない」こと。働き方やチームワークといった、読者が本当に関心を持つテーマで読み物を発信し続けています。その積み重ねで、月100万PVを超える規模に成長しました(出典:SELECK)。

すぐに売らないからこそ、企業姿勢への信頼がじわじわと積み上がります。その信頼は、認知・採用・ブランディングの三方向へ波及しました。「売らない勇気」がかえって成果を生むことを示した先駆けと言えるでしょう。経営者や担当者の想いを発信する手法は、noteで想いを発信して採用を強化する方法でも紹介しています。

成長企業に学ぶ「共感」と「継続」

成長企業の事例に共通するのは、「共感」と「継続」の2つです。完璧に整えた情報よりも、等身大の姿勢や一貫した価値観が、長く読まれるファンを育てています。背伸びをしないことが、むしろ強みになっているのです。

成長フェーズは、知名度も予算も大手には及びません。だからこそ、人柄や考え方をさらけ出す発信が効きます。Grooveの「弱さの開示」も、サイボウズ式の「売らない姿勢」も、根っこは同じ。読者を信じて、誠実に語り続ける姿勢です。まずは飾らない一次情報を、一本ずつ。派手さはなくとも、続けた分だけ確実に積み上がります。

規模を問わず共通する、オウンドメディアの「最初の一歩」

ここまで規模別に見てきましたが、成功事例の出発点はよく似ています。売り込みより先に、読者の役に立つ情報を一つずつ積み上げること。これが規模を超えた共通点です。ひとりでも、数十名でも、成長企業でも、最初にやることはほとんど変わりません。

違うのは、その後の広げ方だけ。だからこそ、まずは共通の一歩を押さえることが大切です。最後に、自社でも今日から始められる手順を3つに整理します。どれも、特別なツールや予算がなくても踏み出せるものばかりです。

規模を問わず共通する、最初の3ステップ

STEP
1

強みと悩みを1枚に書き出す

「自社の強み」と「読者の悩み」を紙1枚に。2つが重なる部分が、自社だけが書けるテーマになります。

STEP
2

月数本から無理なく継続する

背伸びは息切れのもと。月2本でも2年で48本の資産に。ひとりでも回る本数を先に決めます。

STEP
3

成果を数字とセットで振り返る

追う数字は目的次第。集客はアクセス数、採用は応募のきっかけ、受注は問い合わせ件数で評価します。

「自社の強み」と「読者の悩み」を1枚に書き出す

最初の一歩は、紙1枚に2つを書き出すことです。自社の強みと、読者の悩み。この2つが重なるところが、自社だけが書けるテーマになります。難しい戦略から入る必要はありません。

たとえば製造業なら「現場で培った技術」、ひとりECなら「商品の選び方のコツ」が強みにあたります。読者の悩みは、ふだん顧客からよく受ける質問を思い出せば十分です。完璧な戦略を練るより、まず一覧にして眺めてみる。テーマの重なりが見えれば、最初の数本はすぐ書けるはずです。事例の各社も、特別なテーマを探したわけではありません。自社が語れることを、丁寧に言葉にしただけです。

完璧より継続——月数本から積み上げる

次の一歩は、無理のない本数で続けることです。失敗の多くは、背伸びした計画による息切れで起こります。最初から月10本を掲げて3か月で力尽きるより、月2本を2年続けるほうがはるかに価値があります。月2本でも、2年で48本の資産になる計算です。

ポイントは、担当者がひとりでも回る本数を先に決めておくこと。続ける仕組みこそが、最終的な成果を左右します。Grooveもベイジも、一夜で成果が出たわけではありません。地道な継続の先に、数字がついてきただけです。立ち上げの具体的な進め方は、オウンドメディアの立ち上げ7ステップで詳しく解説しています。

成果は数字とセットで振り返る

最後の一歩は、成果を数字とセットで振り返ることです。ただし、追うべき数字は目的によって変わります。集客ならアクセス数、採用なら応募のきっかけ、受注なら問い合わせ件数。目的に合わない数字を追うと、判断を誤りがちです。

数字の大小だけで一喜一憂せず、「目的に近づいたか」で評価しましょう。PVが小さくても、問い合わせが増えていれば十分な成果です。月に一度、数字を見ながら次の一手を考える時間をつくってください。多くの成功事例の共通点はオウンドメディアの成功事例13選でも整理しています。自社に合う進め方に迷ったら、ハッシンラボ Premiumの無料相談もご活用ください。

よくある質問(FAQ)

Q1. オウンドメディアの事例は、業種と規模のどちらで選ぶべきですか?

まず規模で選ぶことをおすすめします。使える人数や予算が近い事例ほど、打ち手をそのまま真似しやすいためです。業種が同じでも大企業の事例は前提が異なり、中小企業がそのまま再現するのは難しい場合が多いものです。規模で絞ったうえで、業種の近い事例を探すと精度が上がります。

Q2. ひとりや少人数でもオウンドメディアで成果は出せますか?

出せます。ミウラタクヤ商店のように、ひとり運営でも発信を仕組み化し、一点に集中して成果につなげた事例があります。大切なのは本数ではありません。自社の強みに絞って継続することが鍵です。少人数だからこそできる「人の手による丁寧な対応」は、大企業が真似しにくい強みになります。

Q3. 事例を真似ても自社でうまくいきません。何が原因ですか?

他社の「数字」や「施策」をそのまま再現しようとしている場合が多いです。事例からは数字ではなく考え方を抜き出し、自社の強みと読者の悩みに置き換えて使うと、成果につながりやすくなります。まずは自社だけが語れる一次情報を棚卸しすることから始めてみてください。

Q4. 大企業の事例は中小企業には参考にならないのですか?

まったく参考にならないわけではありません。ただし、施策をそのまま真似るのは難しいものです。大企業の事例からは「なぜそれをしたのか」という判断や価値観を読み取り、規模に合った形に落とし込むこと。数字や体制ではなく、根っこにある考え方を借りる姿勢が役立つはずです。

Q5. オウンドメディアの成果は、どれくらいの期間で出ますか?

一般に、検索やAIからの集客は半年から1年で兆しが見え、本格的な成果は2〜3年の継続で表れることが多いです。立ち上げ3〜6か月で成果を求めて撤退するのが、最も多い失敗パターンです。先に「成果が出るまでの期間」を社内で合意しておくと、途中で止めずに続けられるでしょう。

飯塚昭博

この記事の著者

飯塚 昭博

Akihiro Iitsuka

コントリ株式会社 代表取締役

青山学院大学卒業後、自動車会社にて年間180億円規模の設備調達を担当。中小企業経営者の想いに触れる中でその価値を伝えることに使命を感じ、2023年独立。経営者インタビューメディア「コントリ」を運営し、100社以上の経営者を取材。SEO・AI活用・発信設計を通じて中小企業の「伝わる発信」を支援している。

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