月1600万PVのメディア型EC「北欧、暮らしの道具店」の事例|価格競争を避ける世界観の作り方

2026.06.07
発信戦略と仕組み化

「値引きをしないと売れない」「大手の価格にはかなわない」。ネットショップを運営する中小企業から、よくいただくお悩みです。価格で勝負すると、体力勝負になってしまいますよね。では、どうすれば価格競争から抜け出せるのでしょうか。

その答えを示すのが、「北欧、暮らしの道具店」です。運営元のクラシコムは、商品を売り込む前に「暮らし」を語る発信を続けてきました。その結果、月1600万PVを集め、連結売上は84.9億円に達しています。安売りではなく、世界観で選ばれているのです。

本記事では、この店が何をしたのか、なぜ価格競争を避けられたのかを分解します。あわせて、中小ECが世界観で選ばれる発信を始める手順まで整理しました。「価格ではなく価値で選ばれる」発信のヒントになれば嬉しく思います。

世界観で選ばれる発信を実現した
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この事例から中小企業が学べること

結論からお伝えします。学ぶべきは「世界観の発信が、価格競争から抜け出させる」という考え方です。安さで選ばれた客は、もっと安い店に移っていく。一方、世界観で選ばれた客は、簡単には離れません。

特別な低価格も、大きな品ぞろえも要りません。むしろ、作り手や店主の顔が見える中小ECほど有利でしょう。大切なのは、自社らしい世界観を言葉と発信で伝えること。私たちが中小企業の発信を支援する現場でも、価格競争の出口はいつも「独自の世界観」にあると感じています。

結論:世界観がファンと価格決定力を生む

北欧、暮らしの道具店が示したのは、「世界観は資産になる」という事実です。多くのECは、商品の安さや機能を競いがちです。しかし、それでは似た店との消耗戦から抜け出せません。

そこで効くのが、世界観の発信です。「この店の雰囲気が好き」という気持ちは、価格を超える。共感したファンは、多少高くてもこの店を選びます。世界観こそが、値引きに頼らない価格決定力の源泉になるのです。

なぜ世界観の発信が中小ECに効くのか

世界観の発信は、今の中小ECにこそ向いています。理由は2つ。まず、品ぞろえや価格で大手に勝てなくても戦えること。次に、小規模ほど一貫した世界観を作りやすいことです。

大手は、扱う商品が多く、世界観がぼやけがちです。一方、中小は「自社らしさ」を細部まで貫けます。雑貨、食品、アパレルなど、暮らしに関わる商材ほど効果は大きいでしょう。価格以外の魅力を発信できる店こそ、これからの主役でしょう。

何をした会社か|北欧、暮らしの道具店とは

北欧、暮らしの道具店は、クラシコムが運営するECサイトです。一見、ふつうの雑貨店に見えます。しかし、その中身は大きく違うのです。商品を並べるだけでなく、読みものを軸に世界観を発信する「メディア型EC」なのです。

いったい、ふつうのネットショップと何が違うのでしょうか。鍵は、「売る前に語る」という姿勢にあります。

北欧、暮らしの道具店の戦略

商品を売る前に、「暮らし」を語る
読みもの・動画・商品を地続きに

「フィットする暮らし、つくろう。」を旗印に、世界観を一貫して発信。安売りでなく世界観で選ばれ、月1600万PVと連結売上84.9億円を実現しました。

商品より先に「暮らし」を語るメディア型EC

このサイトを開くと、まず目に入るのは商品ではありません。暮らしのコラム、レシピ、収納術といった読みもの。読者は、買い物のためでなく、読みものを楽しむために訪れるのです。

つまり、入口が「販売」ではなく「コンテンツ」なのです。役立つ提案や心地よい読みものが、まず読者を引き寄せる。それが入口になります。その流れの先に、商品との出会いがある。売り込みを前面に出さない設計が、独自の心地よさを生み出しました。

読みもの・動画・商品が地続きになっている

北欧、暮らしの道具店の強みは、すべてが地続きになっている点です。コラムを読み、動画を見て、気に入った商品を買う。この流れが、実に自然につながっているのです。

象徴的なのが、オリジナルの短編ドラマや映画です。商品カタログの枠を超え、世界観そのものをコンテンツにしました。読みものも動画も商品も、同じ世界観で貫かれている。だからこそ、訪れるたびに「この店らしさ」を感じられるのです。

なぜ成果が出たのか|世界観が選ばれる理由に変わる仕組み

北欧、暮らしの道具店の成功には、明確な理由があります。徹底した世界観の一貫性です。すべての発信が、ひとつの旗印のもとに貫かれているのです。仕組みを分解してみましょう。

世界観が「選ばれる理由」に変わる3つの仕組み

1. 暮らしの提案から入る

売り込まず「こんな暮らし素敵」から。共感した先に商品が登場し、せかされず買える。

2. 共感が高いリピートを生む

毎日通いたくなるメディアに。週96%再訪・毎日72%という異例の関係を築く。

3. コンテンツが資産になる

短編ドラマは映画化も。一度作った世界観は消えず積み上がる競争力に。

売り込まず、暮らしの提案から入る

この店の発信は、売り込みから始まりません。「こんな暮らし、素敵ですよね」という提案から入ります。商品は、その暮らしを実現する手段として、さりげなく登場します。

押し売りされないからこそ、読者は安心して読み進められます。そして、提案された暮らしに共感したとき、自然と商品が欲しくなるのです。これは、せかされて買う体験とは正反対といえます。心地よい提案が、結果として強い購買につながりました。

世界観への共感が高いリピートを生む

世界観への共感は、驚くほど高いリピートを生んでいます。データによれば、訪問者の96%が週1回以上サイトを訪れます。さらに、そのうち72%が毎日閲覧しています(出典:ネットショップ担当者フォーラム)。

これは、ECサイトとしては異例の数字です。多くのECは、買うときだけ訪れる場所です。しかしこの店は、毎日通いたくなるメディアになりました。世界観が、来店の習慣そのものを作り出しました。

コンテンツがコストでなく資産になる

注目すべきは、コンテンツの位置づけです。多くの企業にとって、記事や動画は「費用」です。しかしこの店では、コンテンツが「資産」になっています。

たとえば、オリジナルの短編ドラマは長く愛され、続編や映画にも発展しました。一度作った世界観は、消えずに積み上がる資産です。広告のように、出すたびに費用が消えていくものではありません。蓄積する発信が、長期の競争力を支えています。蓄積型発信の考え方は資産として積み上げる発信もご覧ください。

数字で見る成果

北欧、暮らしの道具店の世界観発信は、数字にもはっきり表れています。読みものを軸にしながら、これだけの規模を築いた点に注目してください。

世界観の発信が生んだ成果

読みものを軸にしながら築いた規模

月1600万PV

訪問者は約160万人

週96%/毎日72%

驚異の再訪・閲覧率

連結84.9億円

19期連続の増収増益

月1600万PV・週96%が再訪、72%が毎日閲覧

このサイトは、月間約1600万PVを集めています。月間訪問者は、およそ160万人。圧倒的な規模です。広告で一時的に集めた数字ではありません。世界観に共感したファンが、繰り返し訪れている証でしょう。

特筆すべきは、その再訪率の高さでしょう。週1回以上の訪問が96%、毎日の閲覧が72%という驚異の数字です。読者にとって、もはや生活の一部でしょう。この濃い関係が、安定した売上の土台を支えています。

連結売上84.9億円・19期連続の増収増益

売上の数字も見てみましょう。運営元クラシコムの連結売上高は、84.9億円に達しました。前期比で21.1%増、過去最高の数字です(出典:日本ネット経済新聞)。

さらに見事なのが、その安定感です。同社は19期連続で増収増益を続けています。流行に左右されず、着実に伸び続けているのです。世界観で結ばれたファンが、景気に揺れにくい強い事業を作りました。発信が、ブランドの背骨になった好例といえます。

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自社に応用する|中小ECが今日から始める3ステップ

ここからが本題です。北欧、暮らしの道具店の発信は、大規模ECだけのものではありません。規模が小さくても、世界観なら今日から打ち出せます。3つのステップに整理しました。

中小ECが今日から始める3ステップ

STEP
1

自社の「世界観」を一言で定義する

「どんな暮らしを応援したいか」を一言に。ここがぶれると発信全体がぼやける。

STEP
2

商品でなく「暮らしの提案」を発信する

レシピ・収納術・季節の過ごし方など、読者の生活に寄り添う内容。商品は脇役に。

STEP
3

コンテンツと商品を地続きにする

唐突に売り込まず、暮らしの提案の延長で商品に出会わせる。世界観を壊さない。

STEP1:自社の「世界観」を一言で定義する

最初の一歩は、自社の世界観を言葉にすることです。「うちの店は、どんな暮らしを応援したいのか」。この問いに、一言で答えてみてください。北欧、暮らしの道具店なら「フィットする暮らし」が、その答えでした。

ここがぶれると、発信全体がぼやけます。逆に、軸が定まれば、何を発信すべきかが見えてくるはずです。難しい言葉は要りません。自分たちが大切にしたい価値を、素直に言葉にすることが出発点です。

STEP2:商品でなく「暮らしの提案」を発信する

次に、商品ではなく暮らしを発信します。「この商品は高機能です」ではありません。「こんな休日、心地よいですよね」という提案です。商品は、その暮らしを支える脇役として登場させます。

レシピ、収納術、季節の過ごし方。読者の生活に寄り添う内容が、格好の題材です。売り込みを我慢し、まず役立つ提案を届けましょう。「この店の世界観が好き」と感じてもらえれば、半分成功です。

STEP3:コンテンツと商品を地続きにする

最後に、コンテンツと商品をつなげます。読みもので魅力を感じた流れのまま、商品に出会える導線を作るのです。記事の中で、関連する商品を自然に紹介する形が理想です。

ここで唐突に売り込むと、世界観が壊れます。あくまで、暮らしの提案の延長で出会わせることが肝心です。読みものと商品が同じ世界観で貫かれていれば、購入は、ごく自然な行為になるでしょう。規模別の発信の考え方は規模別のオウンドメディア事例もご覧ください。

つまずきやすい点・注意点

最後に、始める前に知っておきたい注意点をお伝えします。世界観の発信は強力ですが、ぶれると一気に説得力を失います。落とし穴も理解しておきましょう。

世界観の発信「失敗」と「工夫」

やりがちな失敗うまくいく工夫
流行を追って世界観がぶれる軸を決めて一貫させる
すぐ商品を売り込む暮らしの提案を先に届ける
短期の売上で判断するファンとの関係を長期で育てる

世界観の一貫性を保つ

まず大切なのが、世界観をぶれさせないことです。流行に飛びついて発信を変えると、軸がぼやけます。「この店らしさ」が薄れた瞬間、ファンは離れていきます。

北欧、暮らしの道具店も、一貫した世界観を守り続けてきました。商品も、写真も、言葉づかいも、すべて同じ空気でそろえている。徹底ぶりが違います。何を載せ、何を載せないか。その判断基準を持つことが、世界観を守る鍵になります。

短期の売上を焦らない

もう一つの注意点が、成果を急がないことです。世界観の発信は、ファンとの関係を積み上げる発信です。売り込みを我慢する分、すぐには売上に表れにくいでしょう。

しかし、焦って売り込めば、せっかくの世界観が台無しになります。北欧、暮らしの道具店も、長年かけて今のファン層を育てました。半年、1年と続ける前提で取り組むことが肝心です。続けるほど、ファンは厚くなります。発信の進め方に迷ったら、ハッシンラボ Premiumの無料相談もご活用ください。あわせてオウンドメディアの成功事例13選もご覧ください。

よくある質問(FAQ)

Q1. 「メディア型EC」とは、普通のネットショップと何が違うのですか?

商品を並べて売るだけでなく、読みものや動画で世界観を発信し、ファンを育てるECを指します。北欧、暮らしの道具店は、暮らしのコラムやレシピ、ドラマまで届けています。読者は買い物のためでなく、読みものを楽しむために訪れます。その積み重ねが、価格に左右されない購買につながります。

Q2. 中小規模のECでも、世界観の発信はできますか?

できます。むしろ、店主や作り手の顔が見えやすい小規模ECに向いています。大きな品ぞろえや低価格で大手と戦うのは困難です。一方、独自の世界観や価値観なら、規模に関係なく打ち出せます。雑貨・食品・アパレルなど、暮らしに関わる商材ほど効果が見込めます。

Q3. 世界観を発信すると、本当に価格競争を避けられますか?

避けやすくなります。世界観に共感したファンは、価格の安さだけで店を選ばないためです。北欧、暮らしの道具店も、安売りではなく世界観で選ばれています。「この店だから買いたい」という関係ができれば、値引き合戦から距離を置けます。価格ではなく価値で選ばれる状態を目指す発想です。

Q4. どんなコンテンツから作ればよいですか?

商品の使い方や、暮らしの中での楽しみ方を提案するコンテンツが入口になります。レシピ、収納術、季節の過ごし方など、読者の生活に寄り添う内容です。商品を売り込む前に、まず役立つ提案を届けます。読者が「この店の世界観が好き」と感じれば、商品も自然と手に取られます。

Q5. 成果が出るまで、どれくらいかかりますか?

世界観の発信は、ファンとの関係を積み上げる発信です。一般に、成果が見えるまで半年から数年かかります。北欧、暮らしの道具店も、長年の積み重ねで今の規模に育ちました。短期の売上で判断せず、世界観を一貫して発信し続けることが大切です。続けるほど、ファンは厚くなります。

飯塚昭博

この記事の著者

飯塚 昭博

Akihiro Iitsuka

コントリ株式会社 代表取締役

青山学院大学卒業後、自動車会社にて年間180億円規模の設備調達を担当。中小企業経営者の想いに触れる中でその価値を伝えることに使命を感じ、2023年独立。経営者インタビューメディア「コントリ」を運営し、100社以上の経営者を取材。SEO・AI活用・発信設計を通じて中小企業の「伝わる発信」を支援している。

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