「The Modelという言葉を聞くが、中小企業でも導入できるのか分からない」と感じていませんか。本記事では、中小企業BtoBの経営者・営業マネージャー向けに、The Modelの定義、4機能の役割、中小企業が学ぶべき3つの本質、5ステップで小さく始める導入方法、KPI設計、よくある失敗と対策、定着のための運用ルールまで体系的に解説します。30名規模からでも実装可能な現実的ガイドです。
The Modelとは|セールスフォース発祥の営業分業モデル
The Modelとは、マーケティング・インサイドセールス・フィールドセールス・カスタマーサクセスの4機能で営業プロセスを分業する仕組みのことです。例えば、見込み客の獲得から契約・継続まで、機能別の専門チームでリレーする設計が該当します。本章では基本構造を整理します。
The Modelの定義(4機能の分業)
The Modelは、営業プロセスを「リード獲得→商談化→受注→継続」の4段階に分け、それぞれを専門チームが担う設計です。各機能は明確なKPIを持ち、前工程から次工程へ「見込み客」をバトンタッチしていきます。
- マーケティング:見込み客を集める
- インサイドセールス:見込み客を商談に育てる
- フィールドセールス:商談から受注を獲得する
- カスタマーサクセス:契約後の継続・拡張を支援する
分業によって、各機能が「自分のKPIに集中」できる構造が生まれます。
セールスフォース発祥の歴史的背景
The Modelは、米国Salesforce.com社が確立した営業モデルです。日本ではセールスフォース・ジャパン元社長の福田康隆氏が著書『THE MODEL』で詳しく解説し、SaaS業界を中心に普及してきました。
近年は SaaS企業だけでなく、製造業・コンサルティング・人材業などBtoB全般で広く採用される設計になっています。
従来型営業(一気通貫型)との違い
従来の日本企業の営業は「1人の営業担当者が見込み客発掘から受注・フォローまで担当」する一気通貫型でした。The Modelとの違いは、専門化の度合いです。
- 従来型:1人が全工程を担当(属人化しやすい)
- The Model:機能別に分業(再現性が高い)
中小企業BtoBでは、従来型のまま属人化に悩むケースが少なくありません。The Modelの考え方を取り入れることで、営業プロセスの再現性が高まる構造になります。
The Model 4機能の役割|マーケ・IS・FS・CS
The Modelを構成する4機能には、それぞれ明確な役割があります。中小企業がそのまま4機能を整備するのは負担が大きいため、本章では各機能の本質的な役割と、中小企業での代替策を整理します。
マーケティング|見込み客(リード)を集める
マーケティング機能は、サイト・SEO・SNS・広告・展示会などを通じて見込み客を集める役割です。中小企業BtoBの場合、自社サイトとSEO記事だけでも始められます。
リードとは、見込み客の連絡先情報のことです。例えば、サイトの問い合わせフォームや資料DLで取得する氏名・メールアドレスを指します。
インサイドセールス|見込み客を商談化する
インサイドセールス機能は、マーケが集めた見込み客に電話・メール・Web会議でアプローチし、商談に育てる役割です。中小企業では1名から始められます。
詳細は当メディアの「インサイドセールスとは|中小企業BtoBの仕組み・始め方・KPI設計」記事もあわせて参考にしてください。
フィールドセールス|商談から受注を獲得する
フィールドセールス機能は、インサイドセールスが渡した商談を受注まで進める役割です。提案資料作成・見積・契約交渉・クロージングを担当します。
中小企業の場合、フィールドセールスとインサイドセールスを兼任する形でも構いません。重要なのは「機能を分けて意識する」ことです。
カスタマーサクセス|契約後の継続と拡張を支援する
カスタマーサクセス機能は、契約後の顧客に対して「使いこなしの支援」「継続率向上」「アップセル提案」を行う役割です。SaaS企業では特に重要視されます。
非SaaS企業でも、既存顧客への定期訪問・問い合わせ対応・追加提案などはカスタマーサクセスの考え方で再設計できます。
中小企業がThe Modelから学ぶべき3つの本質
The Modelは大企業向けの仕組みと思われがちです。しかし、中小企業BtoBにこそ役立つ「3つの本質」が存在します。完全な分業を目指さなくても、考え方を取り入れるだけで成果につながります。
本質1|数字で営業プロセスを見える化する
最大の本質は、営業プロセスを「数字で見える化」する発想です。リード数・商談化率・受注率・継続率を月次で記録するだけで、ボトルネックが明確になります。
中小企業の営業は、しばしば「結果(受注額)」だけ見て改善が止まる傾向です。プロセスの数字を見ることで、改善の手がかりが具体的になる構造です。
本質2|部門間の連携を仕組み化する
2つ目の本質は、機能間の連携を「仕組み」として設計する発想です。マーケが集めたリードがインサイドセールスに渡され、商談がフィールドセールスに引き継がれ、受注後にカスタマーサクセスへ移る、という流れを明文化します。
中小企業では、部門連携が属人的になりがちです。仕組み化することで、担当者が変わっても流れが止まらない設計へ進化します。
本質3|顧客接点を「商談だけ」に偏らせない
3つ目の本質は、顧客接点を商談だけに偏らせない発想です。マーケで認知接点、インサイドセールスで関係構築、フィールドセールスで提案、カスタマーサクセスで継続支援と、複数接点を意図的に設計します。
商談だけに頼る営業は、商談前の信頼形成と契約後の関係深耕が弱くなります。多接点設計に変えることで、長期的に価値を積み重ねる発信と営業の両輪が回り始めます。
中小企業がThe Modelを小さく始める5ステップ
The Modelの完全実装には数千万円規模の投資が必要ですが、中小企業は「考え方」を5ステップで取り入れるだけで成果が出ます。30名前後の企業でも実現可能な現実的な手順を整理しました。
STEP1|営業プロセスを4段階に分けて可視化
最初のステップは、現状の営業プロセスを4段階に分けて可視化することです。
- 段階1:見込み客獲得(リード)
- 段階2:商談化
- 段階3:受注
- 段階4:継続・拡張
ホワイトボードに4段階を書き、現状の動きを書き込むだけで構いません。「何が流れていて、どこで止まっているか」が見えるようになります。
STEP2|各段階のKPIを1つだけ決める
次に、各段階のKPIを1つだけ決めます。指標を増やしすぎないことが続けるコツです。
- 段階1:月間リード獲得数
- 段階2:商談化率(リードから商談への転換率)
- 段階3:受注率
- 段階4:継続率
5つの指標を月次で記録するだけで、The Modelの「数字で見える化」が始まります。
STEP3|CRM/SFAで数字を月次記録する
3つ目のステップは、CRM/SFAでの数字記録です。最低限、HubSpot Free(無料)でも始められます。
- CRM:HubSpot Free / Zoho / kintone のいずれか1つ
- SFA:CRMで代用可能(半年後に必要なら拡張)
- ダッシュボード:Googleスプレッドシート1枚で十分
中小企業の立ち上げ期は、高機能ツールに投資する前に「数字を記録する習慣」を作るのが優先です。
STEP4|兼任からスタートし役割を明確化する
4つ目は、人員配置です。最初から完全分業しようとせず、兼任でスタートします。
- マーケ+インサイドセールス:1名で兼任
- フィールドセールス:1名
- カスタマーサクセス:既存営業が兼任
重要なのは、「人を分ける」ことではなく「役割を分けて意識する」ことです。1人が複数役割を持っても、頭の中で切り替えられれば成果は出ます。
STEP5|半年後に専任化の判断を行う
最後のステップは、半年運用後の専任化判断です。各機能のKPIが伸び悩んでいる段階で、その機能を専任化するかを検討します。
- マーケKPI(リード数)が伸び悩む→マーケ専任を採用
- 商談化率が低い→インサイドセールス専任を採用
- 継続率が低い→カスタマーサクセス専任を採用
「先に組織を作ってから運用」ではなく、「運用してから組織を作る」順序が中小企業の現実的な進め方です。
The ModelのKPI設計|中小企業BtoBの必須5指標
The Modelで成果を出すには、機能ごとのKPI設計が要点です。中小企業BtoBが最初に整備すべき5指標を整理しました。指標を増やしすぎず、シンプルに運用するのが続けるコツです。
マーケKPI|MQL数(マーケ起点の質の高い見込み客数)
MQLとは、Marketing Qualified Lead の略で「マーケ起点の質の高い見込み客」のことです。例えば、自社サイトで複数ページを閲覧した見込み客や、資料DLした見込み客を指します。
中小企業の場合、月間MQL数を月次目標として設定するだけで、マーケ活動の方向性が明確になる構造です。
インサイドセールスKPI|SQL化率(商談化率)
SQLとは、Sales Qualified Lead の略で「商談化できる質の高い見込み客」のことです。MQLからSQLへの転換率=商談化率がインサイドセールスのKPIになります。
15〜25%が目安です。これより低い場合、トークスクリプトや商談化の判断基準の見直しが必要となります。
フィールドセールスKPI|受注率と商談単価
フィールドセールスは「受注率」と「商談単価」の両方を見ます。受注率だけ高くても単価が低ければ売上は伸びず、単価だけ高くても受注率が低ければ機会損失となります。
両指標を組み合わせて見ることで、提案の質と量のバランスが取れる設計になります。
カスタマーサクセスKPI|継続率と拡張売上
カスタマーサクセスは「継続率」と「拡張売上(アップセル/クロスセル)」を見ます。継続率は契約更新の比率、拡張売上は既存顧客への追加提案の成果です。
中小企業の場合、既存顧客への定期訪問頻度と追加提案件数を記録するだけでも始められます。
全体KPI|LTV/CACの比率(健全性)
The Model全体の健全性を見る指標が、LTV/CAC比率です。
- LTV:顧客生涯価値(1顧客から得る累計売上)
- CAC:顧客獲得コスト(1顧客獲得にかかった費用)
LTV/CAC が3以上なら健全、1未満なら赤字です。中小企業でも四半期に1回はチェックすると、事業の持続性が数字で把握できる仕組みになります。
よくある失敗3つと対策|「分業しすぎ」「数字を見ない」「連携が断絶」
The Modelの導入で失速する中小企業に共通する3つの落とし穴を整理しました。どれも仕組み側の話のため、最初に対策を入れておけば回避できます。
30名規模で4機能をフル分業
人件費が破綻、半年で挫折
KPIだけ作って月次で見ない
改善が止まり仕組みが形骸化
マーケとセールスが縦割り化
リード品質や受注後情報が共有されない
失敗1|30名規模で4機能をフル分業し人件費が破綻
最も多い失敗が、規模に合わない完全分業です。30名規模で4機能をフル分業すると、各機能1名でも4名必要となり、人件費の固定費が大きく膨らみます。
対策は、兼任から始める設計です。30名規模なら2〜3名で4機能を兼任し、半年後に専任化を検討する流れが現実的となります。
失敗2|KPIだけ作って月次で見ない
2つ目の失敗が、KPIを作って終わるパターンです。立派なKPI体系を作っても、月次で振り返らなければ意味がありません。
対策は、月次レビュー会の固定化です。月初の30分で5指標を振り返ることを運用ルール化してください。
失敗3|マーケとセールスが連携せず縦割りに
3つ目の失敗が、機能間の縦割り化です。「マーケはリードを送るだけ」「セールスは商談を取るだけ」と分業意識が強くなりすぎると、リードの質や受注後フィードバックが共有されなくなります。
対策は、週次の機能横断会議です。15分でも全機能が同じ場で数字を見る習慣が、縦割りを防ぐ最大の仕組みとなります。
The Model運用を中小企業で定着させる3つのルール
The Modelは、導入して終わりではなく「組織の運営思想」として根付かせる対象です。中小企業が定着させるための3つのルールを共有します。
縦割り化を防ぐ最大の仕組み
月曜朝に4機能が同じ場で先週数字を振り返り
機能間の連携が日常化
機能ごとの目線を揃える
スプレッドシート1枚に5指標を月次推移で記録
全機能が同じ事実を見て議論
数字を責任追及の道具にしない
「なぜ低い」ではなく「どう上げる」と問う
連携が深まり仕組みが定着
ルール1|週次の機能横断会議を15分で開く
最初のルールは、週次の機能横断会議です。毎週月曜の朝15分で、4機能が同じ場で先週の数字を振り返ります。
- 先週のMQL/SQL化率/受注率/継続率の確認
- ボトルネックの特定
- 来週の打ち手を1つに絞る
「15分の定例会議」が、機能間の縦割りを防ぐ最大の仕組みとなります。
ルール2|全機能で同じCRMダッシュボードを見る
2つ目のルールは、全機能で同じダッシュボードを見ることです。Googleスプレッドシート1枚に5指標の月次推移を記録し、全員がアクセスできる場所に置きます。
「マーケが見るレポート」「セールスが見るレポート」を分けると、機能ごとの目線が揃わなくなります。1つのダッシュボードで全機能が議論する設計が、長期的に価値を積み重ねる組織を作ります。
ルール3|数字を「責任追及」ではなく「改善対話」に使う
3つ目のルールは、数字の使い方です。「なぜ商談化率が低いんだ」と詰めるのではなく、「商談化率を上げるには何が必要か」と対話する文化を作ります。
数字は責任追及の道具ではなく、改善の出発点です。この文化が根付くと、機能間の連携が自然に深まり、The Modelが組織に定着していきます。
まとめ|The Modelは「中小企業の営業を仕組みに変える」考え方
The Modelとは、営業プロセスを4機能に分業する仕組みです。中小企業BtoBが成果を出す要点は、次の3つです。
- 完全分業を目指さず「考え方」を取り入れる:兼任から始めて半年後に専任化判断
- 5指標を月次で見る運用ルール:MQL/SQL化率/受注率/継続率/LTV-CAC
- 週次の機能横断会議で縦割りを防ぐ:15分でも全機能が同じ数字を見る
短期的な営業手法ではなく、「組織の運営思想」として位置づけてください。今日からの可視化と運用ルール導入で、属人化した営業を、長期的に価値を積み重ねる仕組みへと変えていきましょう。
よくある質問
The Modelは中小企業でも導入できますか?
完全実装は難しいものの、考え方の取り入れは何名規模でも可能です。30名規模でも、4機能を兼任で分け、KPIを5指標に絞れば実装可能となります。逆に、いきなり完全分業すると人件費が破綻するため、段階的な導入がコツです。
The Modelとセールスイネーブルメントは違いますか?
目的が異なります。The Modelは「営業プロセスの分業設計」、セールスイネーブルメントは「営業力強化のための支援活動」です。両者は補完関係にあり、The Modelを土台にイネーブルメントを乗せる構造が一般的です。
営業組織が10名以下でもThe Modelは有効ですか?
10名以下では「考え方の取り入れ」のみが現実的です。営業1名・マーケ兼任1名でも、見込み客→商談→受注→継続の4段階を可視化することで成果が出ます。完全分業はせず、プロセス管理と数字記録から始めるのが定着のコツです。
The Modelを学ぶおすすめの書籍はありますか?
セールスフォース・ドットコム福田康隆氏の著書『THE MODEL』が原典です。日本企業向けの実装解説として最も信頼できる1冊で、中小企業の発信担当者・経営者にも読みやすい内容となります。
The Model導入にはどんなツールが必要ですか?
最低限、CRM(HubSpot Free等)とSFA(Salesforce Essentials等)があれば始められます。中小企業の場合、HubSpot Free+Googleスプレッドシート1枚から始め、半年後に必要に応じて拡張する流れが現実的です。