「広告費をかけないと、売上が伸びない」。そう思い込んでいる中小企業の経営者は少なくありません。しかし、マス広告にほとんど頼らず、長年の連続増収を実現した会社があります。クラフトビールの「ヤッホーブルーイング」です。
同社の武器は、熱心なファンでした。2010年に40人で始めた小さなファンイベントは、やがて1日約5000人が集う規模へと育ちます。広告で大量の新規客を追うのではなく、目の前のファンを大切にする。その積み重ねが、強い事業を作り上げたのです。
本記事では、ヤッホーブルーイングが何をしたのか、なぜ成果が出たのかを分解します。あわせて、中小企業が数十人からファンベースを始める手順まで整理しました。「広告に頼らず売れる」発信のヒントになれば嬉しく思います。
中小企業の発信ノウハウをハッシンラボで
この事例から中小企業が学べること
結論からお伝えします。学ぶべきは「少数の熱量から、ファンベースを築く」という考え方です。たくさんの新規客を一度に集めるより、熱心なファンを少しずつ増やす。その地道さこそが、安定した成長を生むのです。
特別な広告予算は要りません。むしろ、顧客との距離が近い中小企業ほど有利でしょう。大切なのは、目の前のファンを心から大切にする姿勢です。私たちが中小企業の発信を支援する現場でも、成長の起点はいつも「熱量の高い少数のファン」にあると感じています。
結論:ファンを大切にする発信が安定成長を生む
ヤッホーブルーイングが示したのは、「ファンは最強の資産」という事実です。多くの企業は、新規客の獲得にお金を注ぎます。しかし、追い続けないと枯れる集客は、消耗戦になりがちです。
そこで効くのが、ファンを軸にした発信でしょう。熱心なファンは、繰り返し買ってくれる存在です。さらに、友人にすすめ、新しい顧客まで連れてきます。一人のファンが、何人もの未来の顧客につながる。だからこそ、ファンを大切にする発信こそ、長期の安定成長の土台。
なぜファンベースが中小企業に効くのか
ファンベースは、今の中小企業にこそ向いています。理由は2つ。まず、巨額の広告費がなくても始められること。次に、顧客との距離が近く、関係を深めやすいことです。
大企業は、顧客一人ひとりと深く関わるのが苦手です。一方、中小は顔の見える関係を築けるでしょう。数十人のファンと、名前で呼び合える距離感。これは小さな組織だけの強みでしょう。蓄積型の発信がもたらす変化は蓄積型発信がもたらす5つの変化もご覧ください。
何をした会社か|ヤッホーブルーイングとは
ヤッホーブルーイングは、長野県に拠点を置くクラフトビールのメーカーです。代表銘柄は「よなよなエール」。大手ビールがひしめく市場で、独自の路線を切り開いてきました。
その路線とは、マス広告に頼らない道です。いったい、どうやって大手と戦ったのでしょうか。
マス広告に頼らず、熱心なファンを
軸に成長する
ハーレーダビッドソンのファン研究から「ファンイベント」戦略へ。2010年に40人で始めた集まりを5000人規模に育て、長年の連続増収増益を実現しました。
クラフトビール「よなよなエール」のメーカー
ヤッホーブルーイングが作るのは、個性的なクラフトビールです。大量生産・大量販売の大手とは、戦い方が異なります。価格や広告量で勝負すれば、体力で劣る中小に勝ち目は薄い。私たちが中小企業の発信を支援する際も、まず『誰に深く愛されたいか』を一緒に言葉にします。
そこで同社が選んだのは、「数より熱量」の道でした。万人に広く売るより、深く愛してくれる人を増やす。この発想の転換こそ、すべての出発点でした。ニッチでも、熱狂的に支持される存在を目指したのです。
ハーレーダビッドソンのファン研究から始まった
ファンベースのヒントは、意外なところにありました。バイクメーカー、ハーレーダビッドソンのファン研究です。ハーレーには、ブランドを熱狂的に愛するファンが大勢いる。ヤッホーは、その熱量の源泉を徹底的に研究。学びを自社に持ち帰ります。
研究の結論は明快でした。ファンは、商品だけでなく「体験」や「仲間」に惹かれる、というものでした。そこでヤッホーは、ファンが集い、つながれる場を作ろうと決めます。2010年、40人規模の小さなファンイベント。それが、記念すべき第一歩でした。
なぜ成果が出たのか|ファンが新しい顧客を連れてくる仕組み
ヤッホーブルーイングの成功には、明確な理由があります。熱心なファンを起点にしたことです。ファンが自ら発信し、新しい顧客を呼び込む流れを作りました。仕組みを分解してみましょう。
ファンが新しい顧客を連れてくる3つの工夫
1. 「中の人」の人間味
堅い宣伝でなく担当者の人柄が前面に。ブランドが「会社」でなく「あの人たち」になる。
2. 赤字でもイベント
目先の利益よりファンとの関係を優先。深まった愛着が長期で大きく返ってくる。
3. ファンが広告塔に
「おいしいよ」の生の声は広告以上の説得力。口コミの連鎖で新規客が増える。
人間味あふれる「中の人」の発信
ヤッホーの発信は、堅い企業らしさとは無縁です。担当者の遊び心や人柄が、前面に出ています。ファンは、その人間味に親近感を抱きます。「中の人」が見える発信が、距離をぐっと縮めたのです。
完璧に整えた広告より、人の顔が見えるやり取りのほうが心に残ります。メールやSNSでも、ヤッホーは一人の人間として語りかける。ファンにとって、ブランドは「会社」ではなく「あの人たち」へと変わっていきます。この親しみこそ、長く続く関係の土台でしょう。
赤字でもファンイベントを開く理由
ヤッホーの象徴が、ファンイベント「超宴」です。注目すべきは、このイベントを赤字でも開いてきた点でしょう。目先の利益より、ファンとの関係を優先したのです。
なぜ、赤字でも開くのか。それは、イベントで深まった愛着が、長期で大きく返ってくると知っているからです。会場でファンは、つくり手やほかのファンと出会います。その体験が、一生もののブランド愛に変わるのです。短期の損得を超えた投資が、強いファンを育てました。
ファンが新しい顧客を連れてくる
ファンベースの真価は、ここにあります。熱心なファンは、自分から友人にすすめてくれます。「このビールがおいしいよ」という生の声は、どんな広告より説得力を持つでしょう。
つまり、ファン自身が広告塔になるのです。会社が大金を払って宣伝しなくても、ファンが新しい顧客を連れてくる。実際、ヤッホーはこの口コミの連鎖で成長してきました。ファンを大切にすることが、結果として最も効率の良い集客になったのです。
ファンが顧客を連れてくる発信の型を一緒に身につけませんか
中小企業だからこそ効く発信の考え方を、基礎から整理してお伝えします。
数字で見る成果
ヤッホーブルーイングのファンベースは、数字にもはっきり表れています。広告に頼らず、これだけの成長を遂げた点に注目してください。
ファンベースが生んだ成果
マス広告に頼らず築いた安定成長
40人→5000人
ファンイベントの規模(2010→2018)
6年で売上4倍
ファンベースで躍進
14年連続
増収増益(2018年時点)
40人のイベントが5000人規模に
2010年、ヤッホーのファンイベントは40人から始まりました。ごく小さな集まりです。しかし、年を重ねるごとに参加者は増えていきます。
そして「よなよなエールの超宴」は、2018年に1日約5000人が集う規模へと育ちました(出典:SEO HACKS)。40人から5000人へ。この成長は、ファンが新たなファンを呼び込んだ証です。熱量が、新たな人を引き寄せ続けたのです。
6年で売上4倍・長年の連続増収増益
事業の数字も見てみましょう。ヤッホーブルーイングは、6年で売上を4倍に伸ばしています。さらに、長年にわたって連続増収増益を続けてきました。2018年には、14年連続の増収増益を達成しました(出典:Agenda note)。
注目すべきは、その安定感です。流行に左右される派手な売り方とは無縁。ファンとの関係を積み上げる、堅実な成長です。マス広告に頼らずとも、ここまで伸びる。ファンベースの力を、数字が証明しています。
自社に応用する|中小企業が今日から始める3ステップ
ここからが本題です。ヤッホーブルーイングのファンベースは、大企業だけのものではありません。数十人からでも、今日から始められます。3つのステップに整理しました。
中小企業が今日から始める3ステップ
1
数十人規模の「ファン感謝」から始める
常連を数十人招くささやかな会で十分。オンライン座談会でも可。一人ひとりと深く話す。
2
「中の人」の人間味を発信する
開発の裏話や失敗談も交え、一人の人間として語りかける。飾らず楽しむ姿勢が伝わる。
3
ファンが語りたくなる場をつくる
ハッシュタグや小さなコミュニティから。ファンの言葉が新しい顧客を連れてくる。
STEP1:数十人規模の「ファン感謝」から始める
最初の一歩は、小さく始めることです。ヤッホーも40人から始めました。大規模なイベントは要りません。常連のお客様を数十人招く、ささやかな感謝の会で十分でしょう。
オンラインの座談会でも構わないでしょう。大切なのは、規模ではなく「あなたを大切にしています」という気持ちが伝わることです。少人数だからこそ、一人ひとりと深く話せます。その濃い時間が、熱心なファンを生む出発点になります。
STEP2:「中の人」の人間味を発信する
次に意識したいのが、人間味のある発信です。完璧に整えた宣伝より、担当者の人柄が見える発信を心がけましょう。SNSやメールで、一人の人間として語りかけるのです。
たとえば、商品開発の裏話や、失敗談も交えてみてください。ファンは、その飾らない姿に親しみを感じます。「会社」ではなく「あの人たち」と思ってもらえれば成功です。楽しんで発信する姿勢が、いちばん伝わります。
STEP3:ファンが語りたくなる場をつくる
最後に、ファンが自ら語れる場を用意します。ファン同士がつながったり、感想を共有したりできる場です。SNSのハッシュタグや、小さなコミュニティから始められます。
ファンは、好きなものを誰かに話したい。そんな心理があります。その場を用意すれば、口コミは自然と広がっていく。会社が宣伝するより、ファンの言葉のほうがずっと響くもの。語りたくなる仕掛けが、新しい顧客を連れてくる流れを作ります。発信を資産に育てる考え方は規模別のオウンドメディア事例もご覧ください。
つまずきやすい点・注意点
最後に、始める前に知っておきたい注意点をお伝えします。ファンベースは強力ですが、進め方を誤ると熱量を失います。落とし穴も理解しておきましょう。
ファンベースの「失敗」と「工夫」
| やりがちな失敗 | うまくいく工夫 |
|---|---|
| いきなり数を追う | 数十人の熱量を大切にする |
| 堅い宣伝に終始する | 中の人の人間味を出す |
| 短期の費用対効果で測る | 長期の関係づくりへの投資と捉える |
数より「熱量」を優先する
まず大切なのが、数を追いすぎないことです。フォロワー数や会員数だけを目標にすると、関係が薄くなります。1万人の無関心な顧客より、100人の熱心なファンのほうが強いのです。
ヤッホーも、最初の40人を何より大切にしています。その熱量こそが、次のファンを呼びました。数は、熱量の結果としてあとからついてくるもの。まずは目の前の一人を、深く大切にすることに集中しましょう。
短期の費用対効果で測らない
もう一つの注意点が、成果を急がないことです。ファンとの関係は、すぐに売上として表れません。だからこそ、短期の費用対効果だけで判断すると、続ける前にやめてしまいます。
ヤッホーが赤字でもイベントを開いたのは、長期の視点があったからです。今日の損が、数年後の大きな信頼に変わると信じているのです。半年、1年と腰を据えて取り組む覚悟が肝心です。発信の進め方に迷ったら、ハッシンラボ Premiumの無料相談もご活用ください。あわせてオウンドメディアの成功事例13選もご覧ください。
よくある質問(FAQ)
Q1. 「ファンベース」とは、どういう考え方ですか?
新規顧客の獲得ばかりを追うのではなく、既存のファンを大切にし、ファンを起点に成長する考え方です。ヤッホーブルーイングは、ファンとの関係づくりに力を注ぎました。熱心なファンは繰り返し買い、口コミで新しい顧客を連れてきます。少数でも熱量の高いファンが、安定した売上の土台になります。
Q2. 中小企業でも、ファンベースは実践できますか?
できます。むしろ、顧客との距離が近い中小企業に向いています。ヤッホーブルーイングも、最初は40人規模の小さなイベントから始めました。大規模なイベントや広告は必要ありません。まずは数十人のファンを大切にし、関係を深めるところから実践できます。
Q3. ファンイベントを赤字で開くのは、もったいなくないですか?
短期で見れば費用ですが、長期では投資になります。ヤッホーブルーイングは、目先の利益よりファンとの関係を優先しました。イベントで深まった愛着が、その後の継続購入や口コミにつながるためです。すぐの黒字化を求めず、関係づくりへの投資と捉える視点が大切です。
Q4. 「中の人」の発信は、何を心がければよいですか?
完璧さより、人間味を大切にすることです。ヤッホーブルーイングの発信は、堅い企業然としたものではありません。担当者の遊び心や人柄がにじむ、親しみやすいものです。ファンは、その人間らしさに親近感を抱きます。飾らず、楽しんで発信する姿勢が、ファンとの距離を縮めます。
Q5. ファンベースは、成果が出るまで時間がかかりますか?
かかります。ファンとの関係は、一朝一夕には深まらないためです。ヤッホーブルーイングも、40人のイベントから長い年月をかけてファンを育てました。短期の費用対効果で判断すると、続ける前にやめてしまいます。数十人の熱量を、じっくり育てる長期視点が欠かせません。
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