単発をやめて「自社の連載番組」を作ったWistiaの事例|中小企業がファンを定着させる発信設計

2026.06.07
SNS・動画発信

「動画を出しても、その場限りで終わってしまう」。発信に取り組む中小企業から、よくいただくお悩みです。一本ずつ作っては消費される。そんな手応えのなさを感じていませんか。

この課題に、明快な答えを出したのが動画SaaSの「Wistia」です。同社は、単発の宣伝動画をやめました。代わりに、自社をひとつの連載番組のようなメディアに変えたのです。続きが見たくなる設計で、定着するファンを育てました。狙ったのは、目先の成約より「視聴者との関係」でした。

本記事では、Wistiaが何をしたのか、なぜファンが定着したのかを分解します。あわせて、中小企業が連載番組を作る手順まで整理しました。「消費されない発信」のヒントになれば嬉しく思います。

ファンが定着する連載型の発信を実現した
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この事例から中小企業が学べること

結論からお伝えします。学ぶべきは「単発でなく、連載番組として発信を設計する」という考え方です。一話完結の動画は、見られて終わりがちです。一方、続きものの番組は、視聴者が次を待ってくれます。

特別な制作費は要りません。むしろ、人柄や世界観を出しやすい中小企業ほど向いています。大切なのは、発信を「番組」として捉え直す視点です。私たちが中小企業の発信を支援する際も、単発の投稿を連載へ束ね直すことから始めます。私たちが中小企業の発信を支援する現場でも、ファン定着の鍵は「単発から連載へ」の転換にあると感じています。

結論:連載番組がファンを定着させる

Wistiaが示したのは、「番組化が関係を深める」という事実です。単発の動画は、一度見られても忘れられがちです。出すたびにゼロから注目を集め直すのは、消耗します。

そこで効くのが、連載という形でしょう。続きが気になれば、視聴者は自ら戻ってきます。テレビドラマの次回が待ち遠しいのと同じです。一話ごとにファンが積み上がり、関係が深まる。番組化は、視聴者を「常連」に変える仕組みなのです。

なぜ連載番組が中小企業に効くのか

連載番組は、今の中小企業にこそ向いています。理由は2つ。まず、大きな予算がなくても始められること。次に、人柄や世界観で勝負できることです。

大手は、潤沢な予算で派手な単発動画を作れます。中小が同じ土俵で戦うのは、得策ではありません。一方、連載なら「続きを見たい」という関係性で勝負できます。これは予算では買えないものです。動画発信の全体像は中小企業の動画発信術もご覧ください。

何をした会社か|Wistiaの「番組化」戦略

Wistiaは、企業向けの動画ホスティングを提供するSaaS企業です。動画を扱う会社だけに、自社の発信にも動画を活用してきました。しかし、ある時から発信の形を大きく変えます。

それが、自社の「メディア化」でした。いったい、どういうことでしょうか。

Wistiaの戦略

単発の宣伝動画をやめ、
自社を「連載番組」にする

テレビ局やNetflixのように、続きものの番組を届けるメディアへ。コンバージョンよりオーディエンス(視聴者との関係)を優先し、定着するファンを育てました。

動画SaaSが自社を「メディア化」した

Wistiaが選んだのは、自社をメディアとして運営する道です。たとえるなら、テレビ局やNetflixのような発想です。バラバラの宣伝動画ではなく、続きものの「番組」を届けるようになりました。

この転換には、明確な狙いがありました。視聴者に「Wistiaの番組を見に行こう」と思ってもらうことです。商品を売り込む場ではなく、楽しみに通う場を作る。発信の目的を、「宣伝」から「番組づくり」へと大きくずらしたのです。

オリジナルの動画シリーズ「Show Business」

その象徴が、「Show Business」というオリジナルシリーズです。これは、マーケター向けに「自社の番組の作り方」を教える、無料の20話シリーズでした。ニッチの見つけ方から番組の立ち上げまで、順を追って学べます。

さらに巧みなのが、最後に認定(修了証)を用意した点です。全話を見終えた人には、「番組づくり」の修了ロゴが与えられます。学びながら達成感も得られる設計です。ただの動画ではなく、ひとつの教育プログラムとして組み立てられていました。

なぜ成果が出たのか|連載がファンを定着させる仕組み

Wistiaの成功には、明確な理由があります。視聴者との関係を、何より優先したことです。その仕組みを分解してみましょう。

連載がファンを定着させる3つの仕組み

1. 「続きが見たい」を生む

次回への期待が視聴者を呼び戻す。ドラマの次回が待ち遠しいのと同じ心理が働く。

2. オーディエンス優先

目先の成約を急がず関係を育てる。信頼が育てば成果はあとからついてくる。

3. 達成体験で定着

修了証が最後まで見る動機に。「学んだ証」はSNSで共有され、視聴者が宣伝役に。

「続きが見たい」を生む連載の力

連載の最大の力は、「続きが見たい」という気持ちを生むことです。一話完結では、見たらそれで終わりです。しかし連載なら、次回への期待が残ります。その期待が、視聴者を何度も呼び戻すのです。

人気ドラマを思い出してください。次回が気になり、放送日を待ちますよね。同じ心理が、企業の発信でも働きます。続きものにするだけで、一度の視聴が継続的な関係に変わる。連載は、ファンをつなぎとめる強力な仕掛けでした。

コンバージョンより「オーディエンス」を優先する

Wistiaの発想で、特に重要なのがこれです。同社は、目先のコンバージョン(成約)を急ぎませんでした。代わりに、オーディエンス(視聴者との関係)を育てることを優先したのです。

すぐ売ろうとすると、視聴者は身構えます。一方、楽しい番組で関係を築けば、信頼が生まれます。その信頼が、いずれ成約につながるという考え方です。実際、Wistiaのデータでは、オリジナルシリーズは視聴者の約30%がリードになりました。関係を先に育てる順番が、結果として成果を生んだのです。

修了証など達成体験でエンゲージを高める

もう一つの工夫が、達成体験の設計です。「Show Business」は、最後まで見ると修了証がもらえます。これが、視聴者の背中を押しました。「せっかくだから最後まで見よう」という動機になるのです。

しかも、修了ロゴはSNSで共有したくなります。「番組づくりを学んだ」という証を、人は誰かに見せたいものです。こうして、視聴者自身が宣伝役にもなりました。達成体験が、最後まで見る動機と拡散の両方を生んだのです。

数字で見る成果

Wistiaの連載番組は、数字にもはっきり表れています。動画の市場全体の流れも含めて見てみましょう。

連載番組がもたらした成果

関係を優先しても、成果は出る

無料20話+修了証

「Show Business」シリーズ

約30%

オリジナルシリーズの視聴者→リード

446%成長

長尺動画(30-60分)・2016年比

無料20話シリーズで認定(修了証)まで提供

Wistiaの「Show Business」は、無料の20話で構成されたシリーズです。しかも、見終えた人には認定(修了証)が与えられます。単なる動画の寄せ集めではなく、ひとつの学習プログラムとして設計されていました(出典:PR Newswire)。

ここまで作り込むのは、視聴者を本気で育てたいからです。学びと達成感をセットで届ければ、ファンの愛着は深まります。番組が、Wistiaというブランドへの信頼そのものを高めました。発信が、最高の名刺になった好例でしょう。

オリジナルシリーズは視聴者の約30%がリードに

関係づくりは、数字にも結びついています。Wistiaによれば、オリジナルシリーズは平均で視聴者の約30%をリードに変えました(出典:Wistia)。関係を優先しても、ちゃんと成果は出るのです。

市場全体でも、追い風が吹いています。30〜60分の長尺動画は、2016年と比べて446%も増えました。多くの企業が、じっくり関係を築く動画に投資し始めた証です。単発から連載へ。この流れは、これからも強まっていくでしょう。

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自社に応用する|中小企業が連載番組を作る3ステップ

ここからが本題です。Wistiaの発想は、大企業だけのものではありません。YouTubeやポッドキャストを使えば、今日から始められます。3つのステップに整理しました。

中小企業が連載番組を作る3ステップ

STEP
1

単発でなく「連載番組」として設計する

「今日は何を投稿」でなく「どんな番組か」を先に決める。最終回のゴールを描き一貫性を持たせる。

STEP
2

テーマと登場人物を固定する

「あの社長が毎回出る」と分かれば親しみが生まれる。決まった形式で番組らしさを出す。

STEP
3

達成体験(修了証・チェックリスト)を用意する

最後まで見る動機と共有を生む。簡単な修了証やチェックリストから始めればよい。

STEP1:単発でなく「連載番組」として設計する

最初の一歩は、発想の転換です。「今日は何を投稿しよう」と単発で考えるのをやめましょう。代わりに、「どんな番組にするか」を先に決めます。たとえば「社長が業界の疑問に答える10回シリーズ」のような形です。

全体の構成を決めてから、各回を作る。これが番組化の出発点です。最終回まで見たら何が得られるのか。そのゴールを描くと、シリーズに一貫性が生まれます。視聴者も、続きを追う楽しみができます。

STEP2:テーマと登場人物を固定する

次に、番組の「顔」を固定します。毎回テーマが変わり、出る人も違うと、番組として認識されません。テーマと登場人物を決め、シリーズに統一感を持たせましょう。

たとえば「あの社長が毎回出る」と分かれば、視聴者は親しみを覚えます。決まったオープニングや形式があると、より番組らしくなります。Beardbrandのように、特定の人や世界観を軸にするのも有効です。発信の世界観づくりはBeardbrandの教育動画の事例もご覧ください。

STEP3:達成体験(修了証・チェックリスト)を用意する

最後に、達成体験を設計します。Wistiaの修了証のように、視聴者が「やり遂げた」と感じる仕掛けを用意するのです。全話視聴の修了証でも、各回のチェックリストでも構いません。

達成体験には、2つの効果があります。最後まで見る動機になることと、共有を生むことです。「全部見た」という満足は、SNSで語りたくなります。凝った仕組みは要りません。簡単な修了証やチェックリストから始めてみましょう。

つまずきやすい点・注意点

最後に、始める前に知っておきたい注意点をお伝えします。連載番組は強力ですが、企画の重さと成果の見方に気をつける必要があります。落とし穴も理解しておきましょう。

連載番組づくりの「失敗」と「工夫」

やりがちな失敗うまくいく工夫
凝りすぎて続かない続けられる企画の重さにする
毎回コンバージョンを狙うまず視聴者との関係を育てる
一話で成果を求める長期でファンを育てる

続けられる企画の重さにする

まず大切なのが、企画を重くしすぎないことです。最初から手の込んだ番組を目指すと、2回目で力尽きます。連載は、続けてこそ意味があります。途中で止まれば、かえって印象を損ないます。

大切なのは、無理なく続けられる形にすることです。毎回30分の大作より、10分でも続く番組のほうが価値があります。スマホ撮影でも、台本が簡素でも構いません。「これなら続けられる」という重さを、先に見極めましょう。

コンバージョンを焦らない

もう一つの注意点が、成果を急がないことです。連載番組は、関係を育てる発信です。一話ごとに成約を求めると、視聴者は離れていきます。

Wistiaも、コンバージョンよりオーディエンスを優先しました。関係が育てば、成果はあとからついてきます。すぐに数字が出なくても、焦らないでください。ファンが定着するまで、腰を据えて続けることが肝心です。発信の進め方に迷ったら、ハッシンラボ Premiumの無料相談もご活用ください。あわせてオウンドメディアの成功事例13選もご覧ください。

よくある質問(FAQ)

Q1. 「連載番組として発信する」とは、どういうことですか?

単発の動画を出し続けるのではなく、テーマや登場人物を固定し、続きものの番組として設計することです。Wistiaは、テレビ番組やNetflixのように、ファンが次の回を楽しみに待つ形を目指しました。一話完結の宣伝動画と違い、連載は視聴者を定着させ、ブランドへの愛着を育てます。

Q2. 中小企業でも、連載番組は作れますか?

作れます。大がかりな制作は必要ありません。YouTubeやポッドキャストで、テーマを決めた連載を始めるだけです。たとえば「社長が業界の疑問に答える10回シリーズ」のような形です。大切なのは予算ではなく、続きが気になる設計と、続けられる企画の重さにすることです。

Q3. 「コンバージョンよりオーディエンス」とは、売上を諦めることですか?

諦めるわけではありません。短期の成約を急がず、まず視聴者との関係(オーディエンス)を育てる、という順番の話です。Wistiaのデータでは、オリジナルシリーズは視聴者の約30%がリードになりました。ファンが定着すれば、結果として売上にもつながります。関係づくりを先に置く考え方です。

Q4. 修了証やチェックリストには、どんな効果がありますか?

視聴者に「やり遂げた」という達成体験を与え、エンゲージメントを高める効果があります。Wistiaは、シリーズの最後に認定(修了証)を用意しました。最後まで見る動機になり、SNSでの共有も生まれます。中小企業でも、チェックリストや簡単な修了証を用意するだけで、同じ効果が見込めます。

Q5. 連載番組は、成果が出るまで時間がかかりますか?

かかります。ファンが定着し、ブランドへの愛着が育つまでには時間が必要だからです。一話で大きな成果を狙うより、続けて関係を積み上げることが大切です。だからこそ、最初から無理のない企画にすることが肝心になります。続けられる範囲で設計し、長期で育てる視点を持ちましょう。

飯塚昭博

この記事の著者

飯塚 昭博

Akihiro Iitsuka

コントリ株式会社 代表取締役

青山学院大学卒業後、自動車会社にて年間180億円規模の設備調達を担当。中小企業経営者の想いに触れる中でその価値を伝えることに使命を感じ、2023年独立。経営者インタビューメディア「コントリ」を運営し、100社以上の経営者を取材。SEO・AI活用・発信設計を通じて中小企業の「伝わる発信」を支援している。

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