営業がベテラン頼みで、その人が抜けると数字が崩れる。商談は増やしたいが、何から手をつけるべきか分からない。そんな悩みを抱える経営者や発信担当者は少なくありません。
先にお伝えすると、The Modelとは売上をつくる工程を「マーケティング・インサイドセールス・営業・カスタマーサクセス」の4つに分け、分業で回す営業プロセスの型です。属人的な営業から、再現性のある仕組みへ移すための考え方と言えます。
本記事では6つのテーマを順に解説します。The Modelの全体像・4つのプロセス・注目される理由・KPIの流れ・導入の失敗例・中小企業が小さく始める進め方です。営業を仕組み化したい方が、自社で一歩を踏み出せるよう、お役に立てれば幸いです。
The Modelとは|営業プロセスを4分業で仕組み化する型
The Modelとは、売上をつくる工程を4つに分け、各チームが分業で連携する営業プロセスの型です。マーケティング・インサイドセールス・営業・カスタマーサクセスの4段階を指します。1人で抱えていた営業を、工程ごとに分解する発想が出発点です。
マーケティング
見込み客を集める
インサイドセールス
育てて商談化する
フィールドセールス
商談を受注につなぐ
カスタマーサクセス
活用と継続を支える
The Modelの由来とSaaS業界での広がり
The Modelは、クラウド型ソフトを提供するSaaS業界で広まった考え方です。SaaSとは、月額制などで継続利用するソフトウェアのこと。米国企業セールスフォースの営業手法が原型とされています。
日本では、福田康隆氏の著書『THE MODEL』をきっかけに広く知られるようになりました。継続課金が前提のSaaSでは、契約後の活用支援まで含めて売上を設計する流れが前提でした。その流れで、工程を分けて連携する型が定着していきました。
今では、SaaS以外の業界にも応用が進んでいます。BtoB(企業向けビジネス)を中心に、営業の再現性を高めたい企業が広く取り入れ始めました。中小企業にとっても、学ぶ価値の大きいフレームワークと言えます。
従来の「営業1人完結型」との違い
The Modelを理解する近道は、従来型との比較です。多くの会社では、1人の営業が見込み客集めから商談、アフターフォローまでを担ってきました。いわゆる「営業1人完結型」です。
この型は、優秀な営業がいれば強い反面、その人に依存します。退職や異動で、積み上げた関係や数字が一気に失われるリスクを抱えます。新人が育つまでにも時間がかかります。
The Modelは、この属人性を分業で解きほぐします。各工程を専門チームが担うため、1人が抜けても全体は止まりません。人ではなく仕組みで売上を支える構造へ。ここが最大の違いです。
分業をつなぐ「数字のバトンリレー」という発想
The Modelの核心は、分業を数字でつなぐ点にあります。各プロセスがバトンを渡すように、見込み客を次の工程へ引き継いでいきます。いわば、数字のバトンリレーと言えます。
ただ分けるだけでは、分業は機能しません。前の工程が次の工程へ「質の高い見込み客」を渡せて初めて、リレーが成立します。だからこそ、各工程の数字を共通言語にする姿勢が欠かせません。この発想が、後で解説するKPI設計の土台です。
The Modelの4つのプロセス|各チームの役割分担
The Modelは、4つのプロセスがバトンをつなぐ構造です。マーケが見込み客を集め、インサイドセールスが育て、営業が商談し、カスタマーサクセスが継続を支えます。各プロセスの役割を順番に解説します。
| 軸 | 営業1人完結型 | The Model(分業型) |
|---|---|---|
| 担当範囲 | 1人が全工程を担う | 工程ごとに分担する |
| 属人性 | 高い(個人に依存) | 低い(仕組みで支える) |
| 強み | 優秀な人がいれば強い | 再現性・専門化・可視化 |
| 弱み | 退職で数字が崩れる | 連携が切れると分断する |
マーケティング:見込み客(リード)を集める
最初のプロセスは、マーケティングです。役割は、見込み客(リード)を集めること。リードとは、自社に関心を持つ可能性のある見込み客のことです。
具体的には、自社サイトの記事・広告・SNS・セミナーなどで接点を生み出します。集めたリードの数と質が、後続のすべての工程に影響します。入口が細ければ、どれだけ後工程が優秀でも商談は増えません。マーケティングは、The Model全体の蛇口に当たります。
インサイドセールス:見込み客を育て商談化する
2番目は、インサイドセールスです。電話・メール・オンライン商談で見込み客と関係を築き、商談につなげる工程を担います。内勤型の営業と捉えると分かりやすいです。
集めたばかりのリードは、まだ購入の準備ができていない場合がほとんどです。インサイドセールスは、情報提供を重ねながら関心を育てます。「今すぐ客」と「そのうち客」を見極め、確度の高い見込み客を営業へ渡す。この目利きこそ、商談の質を左右する分かれ目です。
フィールドセールス:商談を受注につなげる
3番目は、フィールドセールス、いわゆる営業です。インサイドセールスから引き継いだ商談を、提案や交渉を通じて受注へ導きます。
ここでのポイントは、すでに関心が育った見込み客と向き合える点です。前工程で確度が高まっているため、営業は提案そのものに集中できます。飛び込みや当てのないアプローチに時間を奪われず、成約率を高めやすい構造です。受注後は、次のカスタマーサクセスへバトンを手渡します。
カスタマーサクセス:契約後の活用と継続を支える
4番目は、カスタマーサクセスです。契約してくれた顧客が、商品やサービスを使いこなし、成果を得られるよう支援します。解約を防ぎ、継続や追加契約につなげる工程です。
特に継続課金型のビジネスでは、契約後こそが本番になります。顧客が成果を実感すれば、長く使い続け、口コミや紹介も生まれます。売って終わりではなく、売った後の成功まで設計する。この発想が、The Modelを単なる営業手法以上のものにしています。
The Modelが注目される理由|分業が成果を生む仕組み
The Modelが広く取り入れられるのは、分業が成果の再現性を高めるためです。1人で全工程を抱える営業から、各工程の専門化へ。注目される3つの理由を具体的に見ていきます。
各工程の専門化で成約率が上がる
第一の理由は、専門化による精度向上です。1人がすべてを担うと、どの工程も平均点になりがちです。工程を分ければ、各担当が自分の役割に習熟できます。
例えばインサイドセールスは、見込み客を育てる対話に専念できる形です。営業は、確度の高い商談だけに集中できます。一点に集中するからこそ、それぞれの工程の質が高まる。結果として、全体の成約率が押し上がります。BtoBの商談づくりはLinkedInの企業活用も参考になります。
ボトルネックが数字で見えるようになる
第二の理由は、課題の可視化です。工程ごとに数字を測ると、どこで見込み客が止まっているかが分かります。ボトルネックとは、全体の流れを滞らせている一番細い部分のこと。
例えば「リードは多いのに商談が少ない」なら、インサイドセールスに課題があると分かります。「商談は多いのに受注が少ない」なら、営業や提案内容を見直します。改善すべき場所が特定できれば、打ち手の精度が高まります。
属人化を防ぎ人の入れ替わりに強くなる
第三の理由は、属人化からの脱却です。工程と数字が仕組みとして整理されていれば、担当者が変わっても引き継ぎがスムーズです。
私自身、コントリ株式会社で複数のクライアント支援に関わる中で、営業がベテラン1人に依存する怖さを何度も見てきました。その人が休んだ瞬間に数字が止まる状態です。工程を分け、数字を残す仕組みがあれば、人の入れ替わりに動じない組織へ近づきます。
The Modelを支えるKPIと数字の流れ|各段階の指標
The Modelの肝は、各プロセスをKPIでつなぐ点にあります。KPIとは、目標達成度を測る指標のこと。リード数から受注、継続までを数字で追えば、改善すべき場所が見えてきます。指標の流れを整理します。
| プロセス | 代表的なKPI |
|---|---|
| マーケティング | リード獲得数・流入数・問い合わせ数 |
| インサイドセールス | 商談化数・有効商談率・対応件数 |
| フィールドセールス | 受注数・受注金額・成約率 |
| カスタマーサクセス | 継続率・解約率・追加契約数 |
各プロセスの代表的なKPIを押さえる
まず、各プロセスの代表的なKPIを押さえましょう。マーケティングはリード獲得数、インサイドセールスは商談化数が代表例です。
フィールドセールスは受注数や受注金額、カスタマーサクセスは継続率や解約率を見ます。プロセスごとに「何を成果とするか」が明確なら、各チームは迷わず動けます。指標がそろえば、組織全体の会話が数字ベースへ変わります。
数字が前工程から後工程へ流れる仕組み
The Modelでは、数字が前工程から後工程へ流れます。リード数が商談数を生み、商談数が受注数を生む。この連鎖を意識する姿勢が欠かせません。
つまり、後工程の数字を増やしたければ、前工程の数字を見直す必要があります。受注を増やしたいなら、まず商談数、さらにリード数へとさかのぼる流れです。発信でリードの入口を太くする取り組みは、この最上流の改善そのものです。コンテンツの量産方法はコンテンツ企画の方法も参考になります。
歩留まり(転換率)でボトルネックを特定する
数字の流れを見るうえで欠かせないのが、歩留まりです。歩留まりとは、ある工程から次の工程へ進んだ割合のこと。転換率とも呼ばれます。
例えば、リードから商談への転換率が極端に低ければ、インサイドセールスの育成に改善余地があります。各工程の転換率を並べると、最も低い箇所が一目で分かります。全体を眺めるのではなく、転換率で弱点を狙い撃ちする。これが数字で回す運用の本質です。
The Model導入でよくある失敗|分業が分断にならないために
The Modelは、分業を誤ると「分断」に陥ります。各チームが自分の数字だけを追い、連携が切れる失敗です。便利な型ほど、運用を誤ると逆効果になりかねません。よくある失敗と回避策をまとめます。

失敗1:KPIの押し付け合いでチームが対立する
最も多い失敗が、KPIの押し付け合いです。各チームが自分の数字だけを守ろうとすると、工程の境目で対立が起きます。
「マーケはリード数を達成したのに、商談が増えないのは営業の責任だ」。こうした責任の擦り合いが典型例です。回避するには、各KPIが最終的な売上という同じゴールにつながっていると共有することが欠かせません。部分最適ではなく、全体最適の視点を全チームで持つ姿勢が大切です。
失敗2:リードの質を無視して数だけ追う
2つ目の失敗は、リードの質の軽視です。マーケティングが数の達成だけを目指すと、確度の低いリードが大量に流れ込みます。
数は増えても、商談につながらなければ意味がありません。後工程のインサイドセールスは、見込みの薄いリード対応に追われます。大切なのは、後工程が扱いやすい「質の高いリード」を渡す意識です。数と質のどちらも追う姿勢が、リレーを健全に保つ鍵です。
失敗3:仕組みだけ真似て自社に合わない
3つ目の失敗は、形だけの模倣です。大企業の事例をそのまま持ち込み、自社の規模や商材に合わないまま運用してしまうケースです。
The Modelはあくまで型であり、正解の形は会社ごとに違います。少人数の会社が、4つの専任チームを無理に作る必要はありません。自社の商談の流れに合わせて、必要な部分から取り入れる。型に自社を合わせるのではなく、自社に型を合わせる発想が肝心です。
中小企業がThe Modelを取り入れる進め方|小さく始める型
The Modelは、大企業だけのものではありません。中小企業でも、役割の意識と発信の仕組みから小さく始められます。人数が限られていても取り入れられる進め方を紹介します。
午前はインサイドセールス、午後は商談、と頭を切り替える
記事やSNSで見込み客を継続的に集め、入口を安定させる
リード数・商談数・受注数・継続率を毎月並べて更新する
全体を眺めず、最も細いボトルネックを狙い撃ちする
1人でも「役割の切り替え」から始める
最初の一歩は、役割の切り替えです。専任チームを作れなくても、1人が時間帯で役割を分ければ、The Modelの考え方は実践できます。
例えば午前は見込み客を育てるインサイドセールス、午後は商談に集中する営業、というように頭を切り替えます。同じ人でも、今どの工程を担っているかを意識するだけで動きが変わります。役割の自覚こそ、仕組み化の出発点です。
マーケの入口を発信(コンテンツ)で太くする
次に取り組みたいのが、入口の強化です。The Modelの最上流であるマーケティングを、発信で太くします。
広告は止めれば流入も止まりますが、自社サイトの記事は積み上がる資産になります。検索から見込み客が継続的に訪れる状態をつくれば、入口が安定します。蓄積した記事が、休まず見込み客を集め続けてくれる。この発信の仕組みが、中小企業のThe Modelを支える土台です。リード獲得後の改善はCVR改善とはもあわせてご覧ください。
数字を1枚のシートで見える化して回す
最後は、数字の見える化です。高価なツールは要りません。表計算ソフト1枚で、リード数・商談数・受注数・継続率を並べるだけで十分です。
毎月この数字を更新すれば、どの工程で見込み客が止まっているかが見える状態です。転換率の最も低い工程から改善に手をつける。私自身、小さなチームでもこの1枚のシートを回すだけで、議論が「気合」から「数字」へ変わる場面を見てきました。見える化は、仕組み化の心臓部です。
よくある質問(FAQ)
Q1. The Modelは中小企業や少人数の会社でも導入できますか?
導入できます。The Modelは4つのプロセスに「専任チーム」を置くのが理想形ですが、本質は役割の分業ではなく「工程ごとに数字を見て改善する」という考え方にあります。少人数の会社では、1人が複数の役割を兼ねても構いません。大切なのは、見込み客を集める・育てる・商談する・継続を支えるという4工程を意識し、それぞれの数字を追うことです。まずは役割の切り替えを意識するところから始められます。
Q2. The ModelとSFA・CRMツールはどう関係しますか?
The Modelを運用する土台として、SFAやCRMが役立ちます。SFAは営業活動を管理するツール、CRMは顧客情報を管理するツールです。The Modelでは各プロセスの数字をつないで追う必要があるため、リード数・商談数・受注数などを一元管理できるツールがあると運用が楽になります。ただし、ツールは必須ではありません。少人数なら表計算ソフト1枚でも数字の流れは追えます。まず考え方を回し、必要に応じてツールを検討する順序が現実的です。
Q3. The Modelとインサイドセールスは同じものですか?
同じではありません。インサイドセールスは、The Modelを構成する4つのプロセスのうちの1つです。電話やメール、オンライン商談で見込み客を育て、商談化する役割を担います。The Modelは、マーケティング・インサイドセールス・営業・カスタマーサクセスという4工程全体の分業の型を指します。インサイドセールスはその一部分という関係です。混同しやすいため、全体像の中での位置づけを押さえておきましょう。
Q4. The Modelを導入すると営業の人数を増やす必要がありますか?
増員が必須とは限りません。The Modelの目的は人を増やすことではなく、限られた人員でも成果の再現性を高めることです。むしろ、各工程の歩留まりを数字で把握できるようになると、どこに人手を割くべきかが明確になります。結果として、増員せずに既存メンバーの配置を最適化できるケースもあります。まずは現状の工程と数字を可視化し、ボトルネックを見つけることが先決です。
Q5. The Modelで発信(マーケティング)はどんな役割を持ちますか?
発信は、The Modelの入口を太くする重要な役割を担います。マーケティングプロセスは見込み客を集める工程であり、その質と量が後続のすべての工程に影響します。広告に頼るだけでなく、自社サイトの記事やSNSで見込み客を継続的に集める「蓄積型の発信」を組み込むと、入口が安定します。発信で集めた見込み客が、インサイドセールスから営業へとバトンでつながっていきます。発信はThe Model全体の土台と言えます。
まとめ|The Modelは中小企業の営業を「仕組み」に変える
The Modelとは、売上をつくる工程をマーケティング・インサイドセールス・営業・カスタマーサクセスの4つに分け、分業で回す営業プロセスの型です。属人的な営業から、数字でつなぐ再現性のある仕組みへ。各工程をKPIでつなぎ、転換率の低い箇所から改善していく考え方です。
中小企業が取り入れるコツは、小さく始めることです。専任チームがなくても、1人が役割を切り替え、発信で入口を太くし、数字を1枚のシートで見える化する。この3つから始めれば、人数に関係なくThe Modelの恩恵を受けられます。形を真似るのではなく、考え方を自社に合わせるのが成功の鍵です。
ハッシンラボが大切にしているのは「発信を蓄積して成果につなげる」という考え方です。The Modelの最上流であるマーケティングは、まさに発信の力で太くできます。広告に頼らず、記事やSNSで見込み客を集め続ける仕組みは、The Model全体を支える土台になります。営業を気合から仕組みへ。その第一歩を、今日から踏み出してみてください。