「プレスリリースとニュースリリース、どちらを使えばいいのか分からない」。広報を任された中小企業の担当者から、私がよく受けるご相談です。
結論から申し上げます。この2つは、実務ではほぼ同じ意味で使われています。どちらも、企業が公式情報を発表するための文書だからです。あえて分けるなら、報道機関に向けるのがプレスリリース、生活者や取引先へ広く知らせるのがニュースリリースという傾向があります。
本記事では、両者の違い・どちらを使うべきかの判断基準・成果につながる書き方を順に解説していきます。呼び方の迷いから解放され、発信の中身に集中できれば幸いです。
プレスリリースとニュースリリースの違いとは|結論から解説
プレスリリースとニュースリリースは、実務ではほぼ同義に使われます。どちらも企業の公式発表文書であり、明確な線引きはありません。とはいえ、言葉のなりたちには小さな違いがあります。プレスは「報道機関(press)」、ニュースは「新しい知らせ(news)」を指すからです。まずはそれぞれの意味を押さえ、なぜ混同されるのかを整理していきましょう。ここが分かれば、以降の判断がぐっと楽になるはずです。

プレスリリースの意味と役割
プレスリリースとは、企業が報道機関に向けて発表する公式文書のことです。新商品・サービス開始・イベントなどの情報を、記者やメディアに届けるために使われます。
役割は、報道という「第三者の視点」を通じて信頼を得ることにあります。自社が言うより、メディアに取り上げられたほうが、情報は強く伝わるものです。広報PRの実務者も、両者の違いを5分でわかる形で解説し、まずは公式情報を正確に発表する共通点を押さえるべきだと述べています。中小企業にとって報道は、広告費をかけずに認知を広げる手段と言えます。
ニュースリリースの意味と役割
ニュースリリースとは、新しい知らせを広く発表する公式文書を指します。報道機関に限らず、取引先や生活者など、幅広い相手を想定する点が特徴です。
自社サイトへの掲載や、SNSでの告知にもなじみます。つまり、届け先が報道だけに限られないのがニュースリリースの守備範囲です。実際には、プレスリリースと呼ぶかニュースリリースと呼ぶかで、中身が大きく変わることはありません。呼称の違いは、あくまで「どちらを主に意識するか」の差にとどまります。
実務ではほぼ同義に使われる理由
両者が同義に扱われるのは、発表の目的が重なっているからです。公式情報を、社外へ正確に伝える。この核が共通している以上、厳密な区別は実務上あまり意味を持ちません。
言葉のなりたちと実務での扱いを、対比で整理しました。
語源は「報道機関(press)」。
記者・メディアに向けて発表し、報道されることを強く意識する文書です。
語源は「新しい知らせ(news)」。
生活者・取引先も含めて広く知らせることを目的とする文書です。
配信サービスの多くも、両者を区別せず「リリース」と一括りにしています。だからこそ、呼び方に悩む時間は最小限で構いません。大切なのは、誰に何を届けたいかを明確にすることです。名前より中身。この視点を持てば、迷いは自然と消えていきます。
2つの違いを3つの視点で整理|目的・宛先・場面
厳密に分けるなら、違いは目的・宛先・使う場面の3点に現れます。報道を狙うのか、広く知らせたいのかで、言葉の選び方や構成が少し変わってくるからです。もっとも、これは絶対のルールではなく、あくまで傾向です。実務では、この3点を意識しつつ柔軟に使い分ければ十分です。まずは全体像を、比較で押さえておきましょう。
主な違いを、3つの視点で整理しました。
目的の違い(報道向け か 情報開示 か)
目的の面では、プレスリリースは「報道されること」を強く意識します。記者の関心を引き、記事化につなげることがゴールです。
一方のニュースリリースは、情報を広く開示すること自体が目的です。報道されなくても、多くの人に正確に伝われば役目を果たします。この違いを知っておくと、書くときの力点が定まってくるのです。報道を狙うなら記者目線、広い告知なら分かりやすさ優先、という具合です。
宛先の違い(メディア か 生活者・取引先 か)
宛先を見ると、プレスリリースの主役は記者やメディアです。専門用語よりも、ニュースになる切り口が求められます。
ニュースリリースは、生活者や取引先まで宛先が広がります。そのぶん、誰が読んでも分かる平易さが欠かせません。宛先を意識すれば、文章のトーンは自然と決まってくるでしょう。読み手の顔を思い浮かべることが、伝わる発信の第一歩と言えるでしょう。
使う場面の違い(新商品・IR・お知らせ)
場面で言えば、新商品や大きなイベントの告知はプレスリリースがなじみます。ニュース性が高く、報道につながりやすいからです。
対して、営業時間の変更や決算などの情報開示は、ニュースリリースの形が向いています。IR(投資家向け広報)も、広い開示という意味でこちらに近い性質を持ちます。どちらの場面かを見極めれば、呼び方の迷いは実質的に解消します。
どちらを使うべきか|中小企業の判断基準
中小企業では、呼び方に悩むより「誰に何を届けたいか」で選ぶのが実務的です。報道されたいのか、生活者や取引先に知らせたいのか。目的から逆算すれば、おのずと形が定まるはずです。ここでは、現場で迷わないための判断基準を、場面ごとに具体的に示します。難しく考える必要はありません。届けたい相手を1つ思い浮かべることから始めましょう。
「届けたい相手」×「情報の性質」で選ぶ
報道機関に取り上げてほしいとき
報道を狙うなら、プレスリリースの型で書きます。記者が「記事にする価値がある」と感じる切り口が欠かせません。
社会性・新規性・地域性など、ニュースになる要素を1つ盛り込むと、取り上げられる確率が高まります。配信のタイミングも成果を左右するため、プレスリリース配信のタイミングもあわせて確認してください。報道は、広告費をかけずに信頼を得られる貴重な機会になります。
自社サイトやSNSで広く知らせたいとき
報道より「まず知ってもらう」ことが目的なら、ニュースリリースの発想で発信します。自社サイトへの掲載や、SNSでの告知が主戦場です。
この場合、報道されるかどうかに一喜一憂する必要はありません。正確な情報が、必要な人に届けば十分だからです。広報活動の始め方に不安があれば、BtoB広報を何から始めるかが最初の一歩の参考になります。
迷ったときは呼び方より中身を優先する
それでも迷うなら、呼び方は気にせず「ニュースリリース」で統一して構いません。読み手は、呼称の違いをほとんど意識していないからです。
大切なのは、正確で分かりやすい中身を用意することに尽きます。名前を決める時間があるなら、その分をタイトルや本文の推敲に回しましょう。迷いを手放すことも、忙しい担当者にとっては立派な判断です。
成果につながるリリースの書き方の基本
呼び方が分かっても、中身が伝わらなければ成果は生まれません。読まれるリリースは、事実と論理でていねいに組み立てられています。ここでは、タイトル・構成・テーマの絞り込みという基本の3点を解説します。どれも特別な才能を必要としません。型を知り、繰り返すことで、誰の発信も少しずつ届くものへ変わっていきます。
事実と論理で書く(主観を混ぜない)
リリースの土台は、事実と論理です。「素晴らしい」「画期的」といった主観を並べても、読み手には響きません。
広報PRの実務者も、多くのプレスリリースが「事実」と「論理」の組み立て不足で失敗すると指摘しています。何が新しく、なぜ価値があるのか。事実を積み重ねて示すことが、信頼される発信の条件です。数字や具体例を添えると、説得力はさらに増していきます。
私自身、駆け出しの頃に書いた最初のリリースは、主観を盛り込みすぎて一件も反応がありませんでした。「画期的」「業界初」といった言葉を、事実の裏づけなく並べていたのです。数字と経緯だけに絞って書き直したところ、はじめて問い合わせが届きました。事実こそが、もっとも強い説得材料だと痛感した経験です。
読まれるリリースに共通する3つの原則を、チェックリストにまとめました。
主観や誇張を排し、何が新しく なぜ価値があるかを示す
開封は見出しで決まる。詰め込まず、伝えたい一点を明確に
話題を詰め込まない。伝えたいことが2つなら2本に分ける
タイトルで開封が決まる
リリースは、タイトルで読まれるかどうかが大きく決まります。記者も生活者も、まず見出しで「読む価値」を判断するからです。
再生数14万回を超える広報解説動画(出典:YouTube公開再生数・2025年時点)でも、タイトル設計の重要性が繰り返し語られていました。内容を詰め込みすぎず、一番伝えたい価値を一文で示す。この工夫が、開封率を左右します。タイトルは、最後まで磨く価値のある一行です。
1リリース1テーマに絞る
1つのリリースに、複数の話題を詰め込むのは避けましょう。要点がぼやけ、結局どれも伝わらなくなるからです。
新商品の告知なら、その1点に集中する。伝えたいことが2つあるなら、リリースも2本に分ける。この割り切りが、メッセージを鋭くします。テーマを絞るほど、読み手の記憶に残りやすくなるのです。
蓄積型発信としてのリリース活用|出して終わりにしない
リリースは、配信して終わりではもったいない発信です。自社サイトに残し、二次活用することで、長く価値を生み続けます。ここでは、一度の発表を資産に変える蓄積型の活用法を紹介します。単発の告知で消費するか、資産として積み上げるか。この視点の差が、半年後・1年後の発信力を大きく分けていきます。
一度のリリースを資産へ育てる流れを、ロードマップで整理しました。
配信して終わりにせず、左から右へ価値を積み上げる
自社サイトに残して検索資産にする
配信したリリースは、必ず自社サイトにも掲載しましょう。サイトに残った情報は、検索から継続的に人を呼び込む資産へと育ちます。
SNSの投稿が流れて消えるのに対し、自社サイトのページは残り続けます。過去のリリースが、数か月後に検索経由で読まれることも珍しくありません。配信サービスに出すだけで満足せず、自社の場所に蓄えておく。この一手間が、発信を資産へと育てます。
配信後にSNS・ブログへ二次活用する
一度書いたリリースは、切り口を変えて何度も活かせます。SNS向けに要点を短くまとめたり、ブログで背景を語ったりする方法です。
無料の配信サービスを比較する実務者も、限られた予算でも発表の場は十分に持てると紹介しています。1本のリリースを起点に、複数のチャネルへ展開する。こうした二次活用が、少ない労力で発信量を増やしてくれます。効果測定の方法はプレスリリースの効果も参考になります。
AI検索に引用される書き方を意識する
近年は、ChatGPTやGoogle AI OverviewといったAI検索も無視できません。自社サイトに残したリリースが、AIの回答に引用される時代が始まっています。
引用されやすいのは、事実が明確で、出典や日付がはっきりした文章です。あいまいな表現を避け、正確に書くことが、AI時代の発信でも効いてきます。正確で誠実なリリースは、報道にもAIにも選ばれる。ここに、蓄積型発信の新しい価値が宿るのです。
プレスリリースとニュースリリースに関するよくある質問
最後に、中小企業の広報・発信担当者からよく寄せられる質問にお答えします。呼び方や配信手段など、実務で迷いやすい点を、ここでまとめて解消しておきましょう。ひとつずつ、一緒に確認していきます。
呼び方と配信手段について
Q. プレスリリースとニュースリリースはどちらを使えばよいですか? 実務ではほぼ同義のため、どちらを使っても大きな問題はありません。あえて分けるなら、報道機関に取り上げてほしいときはプレスリリース、取引先や生活者へ広く知らせたいときはニュースリリースと呼ぶ傾向があります。呼び方より、届けたい相手と中身を優先しましょう。
Q. 中小企業でもプレスリリースを出す意味はありますか? あります。プレスリリースは認知の獲得だけでなく、自社サイトに残る発信の資産にもなるのです。報道されなくても、公式情報として検索やAI検索に引用される可能性があります。継続して出すことで、企業の信頼が積み上がっていきます。
Q. 無料でプレスリリースを配信できますか? できます。無料や低価格で使える配信サービスが複数あり、予算の限られる中小企業でも発表の場を持てます。まずは無料の範囲で試し、反響を見ながら有料プランを検討する進め方が現実的です。配信サービスの詳しい使い方はPR TIMESの使い方にまとめています。
報道につなげるための考え方
Q. 報道につなげるにはどう書けばよいですか? 事実を主観なく、論理立てて書くことが基本です。とくにタイトルで内容が伝わるかどうかが、読まれるかの分かれ目です。1つのリリースに詰め込みすぎず、テーマを1つに絞ると、メディアにも意図が届きやすくなります。
Q. ニュースリリースと「お知らせ」の違いは何ですか? ニュースリリースは、報道や広い告知を意図した公式文書です。一方の「お知らせ」は、既存の顧客や関係者への案内という色合いが濃い言葉です。社外へ広く伝えたい重要な情報は、ニュースリリースの形にまとめるのが適しています。
呼び方に迷う時間は、もう最小限で構いません。届けたい相手を思い浮かべ、事実を正確に、一度きりで終わらせない。この3つを意識するだけで、あなたの発信は着実に前へ進んでいきます。