「求人を出しても、自社に合う人がなかなか集まらない」。採用に悩む中小企業の経営者から、よくいただくご相談です。条件で釣っても、価値観の合わない人ばかり来てしまう。そんなジレンマを感じていませんか。
この悩みに、ひとつの答えを示すのが「サイボウズ式」です。サイボウズが運営するこのメディアは、製品をほとんど売り込みません。働き方やチームワークを語る読み物を発信しているだけです。それなのに、ある年は採用者90人のうち30人が、このメディアをきっかけに入社しました。
本記事では、サイボウズ式が何をしたのか、なぜ採用に効いたのかを分解します。あわせて、中小企業がnoteや自社ブログで価値観を発信する手順まで整理しました。「条件ではなく共感で選ばれる」採用のヒントになれば嬉しく思います。
を支える中小企業の価値観発信をハッシンラボで
この事例から中小企業が学べること
結論からお伝えします。学ぶべきは「価値観の発信が、共感する人材を呼ぶ」という考え方です。給与や待遇だけで人を集めると、価値観の合わない採用になりがち。これはよくある落とし穴です。一方、理念に共感した人は、長く活躍してくれる。これが価値観発信の狙いです。
特別な知名度や予算は要りません。むしろ、社長や社員の人柄が見えやすい中小企業ほど向いています。大切なのは、自社が何を大切にしているかを、正直に言葉にすること。私たちが中小企業の発信を支援する現場でも、採用の起点はいつも「価値観の言語化」だと感じています。
結論:売らない発信が採用を強くする
サイボウズ式が示したのは、「売らないほど信頼される」という逆説でしょう。多くの企業は、採用ページで自社の良いところをアピールします。しかし求職者は、宣伝めいた言葉を割り引いて読むもの。鵜呑みにはしません。
そこで効くのが、売り込まない読み物です。働き方や考え方を淡々と語るほうが、かえって信頼されます。「この会社は本物だ」と感じた人が応募してくるのです。条件で釣るのではなく、価値観で引き寄せる。それが、定着する採用への近道になります。
なぜ価値観の発信が中小企業に効くのか
価値観の発信は、今の中小企業にこそ向いています。理由は2つ。まず、お金をかけずに始められること。次に、規模が小さいほど社風や想いが伝わりやすいことです。
大企業は、どうしても発信が無難で堅くなりがちです。そこに、人の顔が見える中小企業の入り込む余地があります。求人票には書けない「実際の空気」を伝えられるのは、小さな組織の強みでしょう。共感を軸にした採用は共感を生む採用戦略もご覧ください。
何をした会社か|サイボウズ式とは
サイボウズ式は、グループウェアで知られるサイボウズが運営するオウンドメディアです。スタートは2012年5月。すでに10年以上続く、息の長いメディアです。
その特徴は、徹底して製品を売り込まない点にあります。いったい、何のためのメディアなのでしょうか。
製品を売らず、働き方や価値観を
語る読み物を発信する
「チームワークあふれる社会を創る」という存在意義を軸に、2012年から発信を継続。売り込まないからこそ企業姿勢への信頼が積み上がり、共感する人材が集まりました。
製品PRをしない読み物メディア
サイボウズ式の記事を読んでも、製品の宣伝はほとんど出てきません。代わりに並ぶのは、働き方やチームワーク、多様な生き方をめぐる読み物。実に多彩です。社外の専門家や著名人が登場することも珍しくありません。
なぜ、自社製品を売らないのか。それは、目先の販売よりも、長期的な信頼を選んだからです。「役に立つ読み物を出す会社」という評価が、じわじわと積み上がっていきます。すぐに売らない潔さが、このメディアの個性になりました。
「チームワークあふれる社会を創る」を軸にする
サイボウズ式の発信には、ぶれない軸があります。それが「チームワークあふれる社会を創る」という、会社の存在意義です。すべての記事が、この理念とゆるやかにつながっている。それがぶれない一貫性を生みます。
製品を売る代わりに、会社が信じる価値観を語り続けるわけです。読者は記事を通じて、サイボウズという会社の人格に触れます。「こういう考え方の会社なんだ」と伝わる。これこそ、共感を生む土台です。理念の発信が、結果として最強の自己紹介になっています。
なぜ成果が出たのか|価値観が共感を生む仕組み
サイボウズ式の成功には、明確な理由があります。会社の存在意義を、一貫して発信し続けたことです。その積み重ねが、採用という成果に結びつきました。仕組みを分解してみましょう。
価値観の発信が採用に効いた3つの理由
1. 売らないから信頼される
役立つ読み物を無償で届ける姿勢が好感に。時間をかけ、他社が追いつけない信頼が積み上がる。
2. 共感する人が集まる
理念に共感した人が応募。条件でなく価値観で選ぶため、入社後のミスマッチも起きにくい。
3. 三方向に効く
採用だけでなくブランディング・認知にも波及。一本の発信が複数の成果を同時に生む。
売らないから企業姿勢への信頼が積み上がる
サイボウズ式の強みは、売らないことで生まれる信頼です。宣伝ばかりのメディアは、読者に身構えられます。しかし、役立つ読み物を無償で届ける姿勢は、好感を持って受け入れられるのです。
この信頼は、時間をかけてゆっくり積み上がります。一度に大きく動くものではない。だからこそ、他社が簡単に追いつけない資産になります。「売らない我慢」が、長期の信頼に変わった好例でしょう。
理念に共感した人が自然と集まる
価値観を発信すると、それに共感する人が集まってきます。サイボウズ式の読者には、働き方やチームワークに関心の高い人が多い。自然と層がそろうのです。そうした人は、サイボウズの理念とも相性がよい。応募の段階で、すでに価値観が重なっています。
結果として、応募者の質そのものが変わってきます。条件だけで選ぶ人ではなく、「この会社で働きたい」と思う人が来るのです。入社後のミスマッチも起きにくくなります。価値観の発信は、いわば共感する人材を引き寄せる磁石の役割を果たしました。
ブランディング・採用・認知の三方向に効く
サイボウズ式の効果は、採用だけにとどまりません。会社のブランディングや、サービスの認知にも波及します。一本の発信が、複数の成果を同時に生むのです。
読者は記事を通じてサイボウズに好感を抱き、やがて製品にも関心を向けるのです。求職者は応募し、取引先は信頼を寄せる。発信の波及効果です。ブランディング・採用・認知。この三方向に効く点が、価値観発信の大きな魅力でしょう。
数字で見る成果
サイボウズ式の価値観発信は、採用の数字にもはっきり表れています。長く続けたからこそ得られた成果に注目してください。
製品PRなしで生んだ採用成果
2012年開始・月間平均約20万PVのメディア
応募きっかけ 1位
内定者調査で継続トップ
90人中30人
採用者の約1/3がきっかけに
月20万PV
量より「届ける質」を重視
内定者の応募きっかけ1位を継続
サイボウズでは、内定者に応募のきっかけをたずねています。その調査では、サイボウズ式が1位を走り続けています(出典:オウンドメディアリクルーティング)。求人広告でも会社説明会でもなく、読み物メディアが最大の入口になったのです。
内定者からは「サイボウズ式で理念や文化への理解が深まった」という声が寄せられています。志望動機が書きやすくなった——そう話す人も少なくありません。発信が、応募のハードルを下げる役割を担ったのです。
採用者90人のうち30人がサイボウズ式きっかけ
具体的な数字も残っています。代表の青野氏の発言が残っています。ある年、「採用者90人のうち30人がサイボウズ式をきっかけに入社した」というのです(出典:日本の人事部)。実に、3分の1にのぼる計算です。
しかも、これらは月間平均20万PVほどのメディアが生んだ成果です。爆発的なアクセスを追ったわけではありません。理念に共感する人へ、確実に届けた結果でしょう。数の多さより、届ける相手の質を大切にした発信といえます。
売らない発信の型を一緒に身につけませんか
自社の価値観をどう言葉にするか、その第一歩がつかめます。
自社に応用する|中小企業が今日から始める3ステップ
ここからが本題です。サイボウズ式の発信は、大企業だけのものではありません。noteや自社ブログを使えば、今日から始められます。3つのステップに整理しました。
中小企業が今日から始める3ステップ
1
自社の価値観・働き方を言語化する
「何のために事業をやるか」「どんな働き方を大切にするか」を書き出す。社長の素直な思いで十分。
2
売り込まず、理念や日常を読み物にする
社員インタビューやこだわり、失敗談など、会社の人格が伝わる題材を。ありのままを見せる。
3
採用情報へ自然につなげる
記事末尾に採用ページへの案内をそっと置く。共感が先、応募は後。押しつけは避ける。
STEP1:自社の価値観・働き方を言語化する
最初の一歩は、自社の価値観を言葉にすることです。「何のためにこの事業をやっているか」「どんな働き方を大切にしているか」。普段は語らないこうした想いを、まず書き出してみましょう。
立派な経営理念である必要はありません。社長の素直な思いで十分です。社員に「うちの良いところは?」と聞くのも有効な方法。現場の言葉にヒントがあります。ここで言葉にした価値観こそ、すべての発信の軸です。
STEP2:売り込まず、理念や日常を読み物にする
次に、その価値観を読み物にします。求人票には載らない、社内の日常や考え方を綴るのです。社員インタビュー、仕事のこだわり、失敗から学んだこと。どれも、会社の人格が伝わる格好の題材です。
ここでも、売り込みは禁物です。「入社してください」と訴えるより、ありのままの姿を見せましょう。読者が「いい会社だな」と感じれば、十分です。自社らしさが伝わる発信はnoteで想いを発信して採用を強化する方法もご覧ください。
STEP3:採用情報へ自然につなげる
最後に、読み物と採用情報をゆるやかにつなげます。記事を読んで興味を持った人が、次に進める。その導線をつくるのです。記事の末尾に、採用ページへの案内をそっと置く。それだけで構いません。
押しつけがましい誘導は避けましょう。共感が先、応募は後です。サイボウズ式も、理解を深めてもらった先に応募がありました。価値観への共感が、自然と応募につながる流れをつくることが理想です。
つまずきやすい点・注意点
最後に、始める前に知っておきたい注意点をお伝えします。価値観の発信は強力ですが、扱い方を誤ると逆効果になります。落とし穴も理解しておきましょう。
価値観の採用発信「失敗」と「工夫」
| やりがちな失敗 | うまくいく工夫 |
|---|---|
| すぐ応募数を求める | 中長期の資産として続ける |
| 理想だけを語る | 課題や葛藤も率直に出す |
| 発信と実態が違う | 実際の社風と一致させる |
採用直結を焦らない
まず大切なのが、すぐに応募が増えると期待しないことです。価値観の発信は、信頼と共感を積み上げる発信です。記事が読まれ、共感が広がるまでには時間がかかります。
サイボウズ式も、長年の積み重ねで応募きっかけ1位になりました。一夜で結果が出たわけではありません。短期の応募数だけで判断すると、続ける前にやめてしまいます。半年、1年と続ける前提で取り組むことが肝心です。
発信内容と実際の社風を一致させる
もう一つの注意点が、発信と実態のズレです。よく見せようと背伸びすると、入社後にミスマッチが起こります。「思っていた会社と違う」となれば、せっかくの採用が早期離職につながりかねません。
大切なのは、ありのままを発信することです。サイボウズ式も、理想だけでなく課題や葛藤を率直に語っています。良いところも、まだ足りないところも見せる。その誠実さが、長く効く採用ブランディングを支えます。発信の進め方に迷ったら、ハッシンラボ Premiumの無料相談もご活用ください。あわせてオウンドメディアの成功事例13選もご覧ください。
よくある質問(FAQ)
Q1. 「製品を売らないメディア」で、なぜ採用に効くのですか?
製品を売り込まないからこそ、会社の価値観や働き方が素直に伝わるためです。サイボウズ式は、チームワークや働き方をテーマにした読み物を発信しました。求職者はそれを読み、企業文化への理解を深めます。理念に共感した人が応募するため、入社後のミスマッチも起きにくくなります。
Q2. 中小企業でも、採用目的の発信はできますか?
できます。むしろ、社長や社員の人柄・価値観を出しやすい中小企業に向いています。立派な制度や知名度がなくても、自社が大切にしている考え方は発信できます。noteや自社ブログを使えば、費用もほとんどかかりません。等身大の価値観を語ることが、共感する人材を引き寄せます。
Q3. どんな内容を書けば、採用につながりますか?
自社の働き方、理念、社員の日常やインタビューが題材になります。求職者が知りたいのは、求人票には載らない「実際の雰囲気」だからです。たとえば「なぜこの事業をやっているか」「どんな価値観で働いているか」などです。きれいごとではなく、正直な姿を見せることが共感につながります。
Q4. 効果が出るまで、どれくらいかかりますか?
採用への効果は、半年から数年かけて表れることが多いです。記事が読まれ、共感が積み上がるまで時間が必要だからです。サイボウズ式も、長年の発信の積み重ねで応募きっかけ1位になりました。短期の応募数だけで判断せず、長期の資産として続けることが大切です。
Q5. 発信内容と実際の社風が違うと、問題になりませんか?
問題になります。発信で魅力的に見せても、実態と違えば入社後にミスマッチが起きるためです。大切なのは、背伸びせず実際の姿を発信することです。サイボウズ式も、理想だけでなく課題や葛藤も率直に語っています。発信と現実を一致させることが、長く効く採用ブランディングの前提になります。
共感を呼ぶ発信の進め方を一緒に整理します
貴社の現状をうかがいながら、発信の方向性を一緒に考えます。