「共感」を生む採用戦略で、選ばれる会社になる方法

2026.02.01
発信戦略と仕組み化

「求人を出しても応募が来ない」「せっかく採用しても、すぐに辞めてしまう」

中小企業の経営者や人事担当者から、こうした声をよく耳にします。2025年11月の有効求人倍率は1.18倍。依然として求職者有利の「売り手市場」が続いています。この状況を打開するカギが「採用ブランディング」です。採用広報との違いを理解し、自社の魅力を正しく伝える方法をお伝えします。

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採用ブランディングと採用広報はどう違うのか

採用ブランディングは「共感」を生み出す活動

採用ブランディングとは、求職者に「この会社で働きたい」という感情を醸成する活動です。企業の理念やビジョン、社内の雰囲気、そこで働く人の想いを伝えることで、会社のファンをつくっていきます。

給与や福利厚生といった条件面だけでなく、「なぜこの会社が存在するのか」「どんな未来を目指しているのか」を発信することがポイントです。価値観に共感した人材は、入社後の定着率も高くなる傾向があります。

採用広報は「情報」を届ける活動

一方、採用広報は企業の採用情報を広く届ける活動です。募集職種や応募条件、選考スケジュールなどを求職者に伝えることが主な目的となります。

採用広報は、新卒採用の時期や中途採用の募集時など、限定的なタイミングで行われることが多いです。認知度を高め、応募につなげるための活動といえるでしょう。

以下の図で、採用ブランディングと採用広報の関係性を確認しましょう。

採用ブランディングと採用広報の違い
4つの軸で比較
比較軸 採用ブランディング 採用広報
目的 企業の魅力を伝え「働きたい」という共感を醸成する 採用情報を届け応募につなげる
対象 転職顕在層から潜在層まで幅広い層 求職者全般(主に転職顕在層)
期間 中長期的・継続的な取り組み 短期的・採用時期に限定
発信内容 理念・ビジョン・カルチャー・働く環境 募集職種・応募条件・選考スケジュール
採用ブランディングは採用広報の上位概念です。両者を連携させることで、採用活動の効果を最大化できます。

両者は「土台」と「実行」の関係

採用ブランディングは、採用活動全体の土台となる取り組みです。企業の魅力を言語化・ビジュアル化し、一貫したイメージを形成します。採用広報や採用マーケティングは、その土台の上で行う具体的な施策という位置づけです。

つまり、採用広報だけを頑張っても、土台となるブランディングが弱ければ効果は限定的。「何を伝えるか」を固めてから「どう届けるか」を考える順序が大切です。

中小企業こそ採用ブランディングに取り組むべき理由

条件勝負では大企業に勝てない現実

帝国データバンクの調査(2025年10月)によると、正社員の人手不足を感じている企業は約5割に上ります。特に中小企業の採用難は深刻です。

厚生労働省のデータでは、企業規模別の平均賃金に明確な差があります。大企業(従業員1,000人以上)が36.5万円に対し、小企業(10〜99人)は29.9万円。この差は月給だけでなく、賞与や退職金にも影響します。

条件面での勝負は難しい。だからこそ、「この会社で働く意味」を伝えるブランディングが必要なのです。

「見つけてもらえない」という根本課題

中小企業が採用で苦戦する理由は、待遇だけではありません。そもそも求職者に見つけてもらえていないケースが多いのです。

大企業は採用サイトや就職情報サイト、SNSなど多様なチャネルで情報発信しています。一方、中小企業はWebサイトの更新が滞っていたり、採用ページが充実していなかったりすることも珍しくありません。

「応募がない」のではなく「検討の土俵にすら乗っていない」。この現実を受け止め、自社の存在と魅力を発信し続けることが求められます。

長期的な資産として蓄積される発信

採用ブランディングの良いところは、一度つくったコンテンツが長期的に効果を発揮することです。社員インタビュー記事や企業理念を伝える動画は、公開後も継続して求職者の目に触れます。

一時的なバズを狙うのではなく、企業の資産となる発信を積み重ねる。このような取り組みは、限られた予算で採用活動を行う中小企業にとって、費用対効果の高い戦略となります。

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明日からできる採用ブランディングの第一歩

社員の声を聞くことから始める

採用ブランディングの第一歩は、社内の声を集めることです。入社1年目の社員に「なぜこの会社を選んだのか」を聞いてみてください。

入社間もない社員の言葉には、外部から見た自社の魅力が詰まっています。長く働いている社員が当たり前だと感じていることが、実は大きな魅力である場合も多いのです。

3人程度にインタビューするだけでも、自社の強みや他社との違いが見えてきます。この作業は特別なコストをかけずに明日から始められます。

インタビュー内容を採用サイトやSNSで公開する

集めた社員の声は、1週間以内に採用サイトやSNSで公開しましょう。完璧な記事である必要はありません。等身大の言葉だからこそ、求職者の心に響きます。

掲載する内容の例を以下に示します。

社員インタビューで聞くべき質問項目一覧
採用サイト・SNS掲載用インタビューの基本質問
確認 カテゴリ 質問項目
入社動機 なぜこの会社を選んだのですか?
仕事内容 現在の仕事内容と1日の流れを教えてください
やりがい 仕事で一番やりがいを感じる瞬間は?
会社の雰囲気 職場の雰囲気や社員同士の関係性はどうですか?
入社前後のギャップ 入社前と入社後で感じたギャップはありますか?
成長・挑戦 この会社で成長できたと感じることは?
今後の目標 今後のキャリア目標を教えてください
求職者へ これから入社を考える方へメッセージをお願いします

写真は、できれば実際に働いている様子が伝わるものを選びましょう。オフィスの雰囲気や社員同士のやり取りなど、リアルな姿を見せることが信頼につながります。

コンテンツカレンダーで継続的な発信体制をつくる

長期的に取り組むべきなのが、採用ブランディング専用のコンテンツカレンダー作成です。「毎月第2週に社員インタビューを公開する」など、発信のルールを決めておくと継続しやすくなります。

コンテンツのアイデアとしては、社員紹介、1日の仕事の流れ、社内イベントの様子、創業ストーリー、お客様からの声などがあります。ネタに困ったときは、求職者からよく聞かれる質問に答える形式も効果的です。

採用ブランディングを成功させるポイント

等身大の会社の姿を見せる

採用ブランディングで最も大切なのは、飾りすぎないことです。過度に良く見せようとすると、入社後のギャップが生まれ、早期離職につながります。

「残業が少ないアットホームな職場」と謳いながら、実際は深夜まで働く文化がある。このようなミスマッチは、双方にとって不幸な結果を招きます。

課題や大変な部分も含めて正直に伝える企業の方が、結果的に定着率が高くなります。自社の「等身大の姿」を見せる勇気を持ちましょう。

他社の真似をしない

よくある失敗が、他社の採用サイトをそのまま真似てしまうケースです。「働きやすい環境」「成長できる機会」「チームワークを大切に」といった言葉は、どの会社でも使われています。

自社ならではの魅力は何か。競合他社にはない特徴は何か。この問いに向き合うことで、採用サイトの差別化が可能になります。

業界の常識を疑い、自社独自のストーリーを語りましょう。「うちの会社だからこそ」の部分にこそ、求職者の心を動かす力があります。

発信を続ける仕組みをつくる

採用ブランディングは、短期間で成果が出るものではありません。継続的な発信があってこそ、企業イメージが形成されていきます。

担当者が1人で抱え込まず、社内を巻き込む仕組みが重要です。各部署から月に1本ずつ情報を集める、新入社員に感想を書いてもらうなど、負担を分散させましょう。

小さな発信を積み重ねることが、やがて大きな採用力につながります。

まとめ

採用ブランディングと採用広報の違いを整理すると、前者は「共感醸成」、後者は「情報発信」という役割の違いがあります。条件面で大企業に勝てない中小企業こそ、自社の価値観や文化を伝える採用ブランディングに取り組む意義があります。

まずは入社1年目の社員に「入社を決めた理由」を聞くところから始めてみてください。等身大の会社の姿を継続的に発信することで、価値観の合う人材との出会いが生まれます。採用は「数」ではなく「質」の時代。選ばれる会社になるための第一歩を、今日から踏み出しましょう。

【参考資料】

採用市場データ

採用ブランディング情報

飯塚昭博

この記事の著者

飯塚 昭博

Akihiro Iitsuka

コントリ株式会社 代表取締役

青山学院大学卒業後、自動車会社にて年間180億円規模の設備調達を担当。中小企業経営者の想いに触れる中でその価値を伝えることに使命を感じ、2023年独立。経営者インタビューメディア「コントリ」を運営し、100社以上の経営者を取材。SEO・AI活用・発信設計を通じて中小企業の「伝わる発信」を支援している。

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