ゼロクリック時代でも選ばれる|AI検索を味方にするブランド発信戦略

SEO・検索流入の活用

AI検索の普及で「検索してもクリックされない」時代が本格的に始まっています。しかしそんな時代でも、着実に成果を出している企業には共通点があります。それは「Web上でブランド名が語られている」という事実です。この記事では、AI検索時代に中小企業が取り組むべきオフサイトSEO(自社サイト外での情報発信)の新しい常識を、具体的な方法とともにお伝えします。

AI検索でクリックが激減する、その理由

AI検索の登場は、これまでのSEOの前提を根底から変えました。「良い記事を書いて上位表示させれば人が来る」という時代が、静かに終わりを迎えています。

ゼロクリック検索とは何か

ゼロクリック検索とは、Google などで検索したにもかかわらず、どのサイトにもアクセスせずに検索を終えてしまう行動のことです。例えば「今日の天気」と調べたとき、検索結果の画面にそのまま答えが表示されて、サイトに飛ぶ必要がなくなる、あの状態です。

この現象は、いまや決して珍しくありません。アメリカの調査会社SparkToroとDatosの分析によると、2024年時点で米国・EUでは全検索の約58〜60%がクリックなしで終了しています。つまり、検索者の半数以上は、サイトに訪問せずに欲しい情報を得ているのです。

日本でも同じ流れが進んでいます。サイバーエージェント社の2025年10月の調査では、63.2%のユーザーが「検索結果画面だけで検索を終える」と回答しており、特に10代では73.6%にのぼっています。

AI Overviewsが引き起こす変化

AI Overviews(AIによる概要)とは、Googleが2024年から導入した機能のことです。ユーザーが検索すると、複数のウェブサイトの情報をAIが自動でまとめ、検索結果の一番上に「要約回答」を表示してくれます。手間なく答えが手に入るため、ユーザーにとっては非常に便利です。

一方、企業にとっては影響が大きい変化でもあります。2025年7月のPew Research Centerの調査では、AI要約が表示された検索ではリンクへのクリック率が15%から8%に低下しています。さらに国内調査では、2025年3月以降、AI Overviewsの影響で自然検索からの流入が減少したと回答した企業が約6割(61.9%)にのぼっています(株式会社キーワードマーケティング、2025年5月)。

従来のSEOとAI検索時代の比較フロー図
従来のSEOとAI検索時代の違い
これまで
従来のSEO
1 検索する ユーザーがキーワードを入力
2 検索結果一覧を見る 10件のリンクが表示される
3 クリックする 気になるサイトを選んで開く
4 サイトを訪問する 情報を読み、サービスを知る
企業のメリット サイト訪問でアクセス数
と認知が獲得できる
これから
AI検索時代
1 検索する ユーザーが質問形式で入力
2 AIが要約を表示 複数サイトの情報をAIが統合
3 要約内でブランド名が引用 情報源として企業名が登場
4 クリックせずに完結 サイト訪問なしで情報取得
企業のメリット 引用・言及で
ブランド認知が広がる
AI検索時代の影響を示すデータ
15% → 8% AI要約表示時の
クリック率の低下
61.9% 国内企業の
自然検索流入減を実感
出典:Pew Research Center(2025年7月)/株式会社キーワードマーケティング(2025年5月)

AIに「引用」される会社の共通点

クリック数が減る一方で、ある企業は着実にAI検索の中で存在感を発揮しています。その違いは何か。答えは「ブランド名がWeb上で語られているかどうか」にあります。

ブランド名が語られることの意味

AI Overviews や AI Mode(AIによる回答を中心に、深い探索・推論が可能なGoogleの新しい検索モード)は、ただ情報を要約するだけでなく、信頼できる情報源として特定のブランド名や企業名を回答の中に盛り込むことがあります。

Google検索の公式ドキュメントにも記載されている「クエリファンアウト」という技術が、この仕組みの核心です。クエリファンアウトとは、一つの検索クエリに対して複数の関連キーワードで同時に情報収集する仕組みのことです。これにより、Web上で複数の文脈から語られているブランドは、AIに「信頼できる存在」として認識されやすくなります。

AIの概要文の中にブランド名が登場することで、リンクのクリックがなくても「この会社の名前を見た」という認知が生まれます。これは、将来の問い合わせや指名検索(会社名を直接入力する検索)につながる可能性を秘めています。

サイテーションとは何か

サイテーションとは、外部サイトからのリンクがなくても、自社のブランド名や商品名がWeb上のさまざまなコンテンツ(ニュース記事、SNS投稿、口コミサイトなど)で言及されている状態のことです。

例えば、地元のニュースサイトに会社名が掲載される、SNSで自社サービスの感想が投稿される、業界メディアのインタビューに社長が登場する——こうした「語られている量と質」が、AI検索時代のSEOに大きく影響します。

サイテーションが多い会社ほど、AIに「信頼されている存在」として認識されやすい傾向があります。リンクではなく「名前が語られること」が、新しい評価軸になっています。

サイテーションの仕組み概念図

中小企業でもできる3つの発信戦略

「でも、うちは大企業じゃないから…」と感じる方もいるかもしれません。実は、サイテーションを増やすために必要なのは大きな予算ではなく、継続的な発信の仕組みです。

プレスリリースと外部メディアへの露出

プレスリリースとは、自社のニュースや情報を外部のメディアに向けて配信する文書のことです。新しいサービスの開始、受賞歴、社会貢献活動など、ニュースになりそうな出来事を積極的に発信する習慣をつけることが大切です。

PR TIMESやvalue pressなどの無料・低コストで使えるプレスリリース配信サービスも増えています。地域の業界紙や経済団体の広報誌への掲載も、立派なサイテーションの積み重ねになります。「完璧な情報がなければ出せない」と考えず、小さなニュースでもコンスタントに発信することが重要です。

SNSでの継続的な情報発信

SNSの投稿は、ブランド名をWeb上で語らせる最もアクセスしやすい手段の一つです。X(旧Twitter)、Instagram、FacebookなどのSNS上での情報は、AI検索の学習データにもなり得ます。

重要なのは一時的なバズを狙うことではなく、自社の強みや考え方を継続的に発信することです。例えば、「外壁塗装のよくある失敗と防ぎ方」「社会保険手続きで見落としがちなポイント」など、顧客が抱える悩みに答える内容を定期的に投稿することで、じわじわとブランド認知が広がっていきます。

インタビュー・登壇・外部メディア出演の活用

自社のホームページだけでなく、他のメディアに自社の情報が掲載されることは、サイテーション獲得に非常に効果的です。

業界のウェビナーへの登壇、地域の商工会でのセミナー講師、起業家インタビューメディアへの出演——こうした外部への露出は、AIが参照するWeb上のさまざまな場所に自社ブランド名を刻んでいく行為です。「名前が語られる機会を意識的に増やす」という視点で、活動の幅を広げてみましょう。

CHECK LIST
中小企業が今すぐ実践できる
3つのオフサイトSEO戦略
AI検索時代に自社ブランド名を刻む発信戦略
01
プレスリリース配信
新サービス・実績・取り組みを定期的に発信し、複数メディアへの掲載を狙う。配信先のニュースサイトに自社名が掲載されることで、AIが参照する情報源が広がる。
PR TIMES @Press 業界専門メディア
02
SNS継続投稿
自社の専門性や想いを継続的に発信し、第三者からの言及・拡散を促す。蓄積された投稿が、自社ブランド名と専門領域を結びつけるサイテーションとなる。
X(旧Twitter) Facebook note
03
外部メディア出演
インタビュー・登壇・ウェビナーなど、他者が語る場に積極的に登場する。自社サイト以外の場所に名前が刻まれることで、AIが参照する情報源の多様性が高まる。
起業家インタビュー 業界ウェビナー 商工会セミナー

蓄積型発信がAI時代に有効な理由

「情報を出したのに効果がない」という経験をお持ちの方もいるかもしれません。AI検索時代のブランド発信は、短期的なアクセス数ではなく、長期的な信頼の積み重ねを目的とすることが重要です。

一時的なバズより積み重ねが大切

一度のプレスリリースや、バズった投稿一本では、AI検索にブランドを認知させることはできません。AI が「このブランドは信頼できる存在だ」と判断するためには、さまざまな文脈からコンスタントに語られ続けることが必要です。

企業の資産となる発信とは、時間をかけてじわじわと積み上がるものです。昨年書いた記事が今年引用される、2年前に出たインタビューが今も検索される——こうした「コンテンツの寿命」を意識した発信が、AI時代のSEOでは特に価値を持ちます。

コンテンツ×SNS×外部媒体の組み合わせ戦略

最も効果的なのは、自社コンテンツ・SNS・外部メディアの3つを組み合わせた発信です。

例えば、自社ブログに専門的な記事を書く(コンテンツの蓄積)→ その内容をSNSで発信する(拡散と言及の増加)→ メディア出演でブランドを語ってもらう(外部からの信頼付与)、という流れを仕組みとして回し続けることで、Web上でブランドが語られる機会が複利的に増えていきます。

中小企業にとっては「毎日できること」の仕組みを作ることが鍵です。無理なく継続できる発信の仕組みを整えることが、AI検索時代を生き抜く土台になります。

まとめ

AI Overviewsや AI Modeの普及によって、検索してもサイトにアクセスしない「ゼロクリック検索」は増加傾向にあります。ただし、クリックが減ることは「発信をやめる理由」にはなりません。むしろ、Web上でブランド名が語られる量を増やすことが、AI検索時代のSEOの核心です。

具体的には、プレスリリース配信・外部メディアへの露出・SNSでの継続的な発信の3つを組み合わせることが有効です。大切なのは一時的な効果を狙うことではなく、継続的に情報を積み上げていく仕組みを作ることです。

AI検索時代のSEOは「探されること」から「語られること」へのシフトが求められています。今日からできる小さな一歩として、まずは自社のプレスリリースやSNS発信の仕組みから見直してみましょう。

よくある質問

Q. ゼロクリック検索が増えると、企業のホームページは意味がなくなりますか?

A. ホームページの価値はなくなりません。ゼロクリック検索が増えても、AIはWeb上のコンテンツを参照して回答を生成するため、充実したホームページは「AI引用の源泉」として機能します。むしろ、専門性や独自性の高いコンテンツを持つホームページのほうが、AIに信頼できる情報源として認識されやすくなります。

Q. AI Overviewsに自社のブランド名を掲載してもらうにはどうすればいいですか?

A. AIに自社ブランドを認識してもらうには、Web上でブランド名が多くの文脈で語られること(サイテーションの蓄積)が重要です。プレスリリース配信、外部メディアへのインタビュー掲載、SNSでの継続的な情報発信などを通じて、ブランド名がさまざまな場所で言及される機会を増やすことが効果的な方法です。

Q. SNSのどのプラットフォームから始めるのがよいですか?

A. 業種によって異なりますが、まずは自社のターゲット顧客が最も利用しているプラットフォームから始めることをお勧めします。BtoB(企業向け)ビジネスであればX(旧Twitter)やLinkedIn、地域密着型のビジネスであればInstagramやFacebookが有効です。重要なのはプラットフォームの選択よりも、どこに投稿するにしても継続して発信し続けることです。

Q. プレスリリース配信は費用がかかりますか?

A. 無料から使えるサービスもあります。PR TIMES や value press などは月数件まで無料プランがあり、小規模な企業でも利用しやすい環境が整っています。地元の商工会議所や業界団体の会報への掲載依頼も、費用をかけずにブランド露出を増やす有効な手段です。

Q. 発信を続けるためのコツはありますか?

A. 「仕組みとして回せるかどうか」を基準に発信の設計をすることが長続きのポイントです。例えば、月に1本ブログを書いてSNSに展開する、四半期に1回プレスリリースを出すなど、無理のない頻度を先に決めることが大切です。担当者一人に任せっきりにせず、テンプレートやチェックリストで「誰でも動かせる仕組み」を整えることで、継続的な発信が実現します。

【参考資料】

SEOとAI検索

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