SNSより「メール」が選ばれる時代——蓄積型発信が持つ静かな力

発信戦略と仕組み化

ニュースレター(メール)をすでに実践されている方に、ひとつ心強いお話をお伝えしたいと思います。

2025年12月、米国のデジタルマーケティング企業Constant Contactが、4カ国・計2,000社の中小企業オーナーを対象に実施した調査で、ある注目すべき事実が明らかになりました。SNSへの期待が高まるいっぽうで、メール(受信箱)こそが最もROI(投資対効果)の高いチャネルであり続けているというのです。消費者がSNSで過ごす時間を意識的に減らし、SMSプロモーションにも懐疑的になりつつある今、メールの受信箱は「顧客が能動的に関与することを選ぶ数少ないデジタル空間」になりつつあります。コツコツと積み上げてきた発信が、静かに、しかし確かな実を結びつつある——そう感じていただける内容だと思います。

SNSへの期待と、データが示す現実

「SNSが一番」と思われているけれど

Constant Contactの2025年12月調査によると、2026年に最も効果的なチャネルとして「SNS広告・投稿」を挙げた中小企業オーナーは58%にのぼりました。一方、「メール」と答えたのは41%にとどまっています。

多くの方がSNSに大きな期待を寄せているのですね。

ところが、実際のデータはそれとは少し異なる方向を指し示しています。

データが語る「メールの底力」

Litmusの2024年調査によると、メールマーケティングの平均ROIは1ドルの投資に対して36ドルの収益、つまり3,600%という驚くべき水準です。

また、Emarsysが2024年6月に10,041名を対象に実施した調査では、69%の消費者がブランドとのコミュニケーション手段としてメールを最も好むと回答しています。数字を見ると、「メールはもう古い」という印象とはまったく異なる現実が見えてくるのではないでしょうか。

マーケティングチャネル別 ROI比較
1ドル投資あたりの平均収益額(USD)
メールROI No.1
SEO
$22
SNS広告
$5
Google広告
$2
出典: Litmus (2024), FirstPageSage, HubSpot State of Marketing Report (2025-2026), Google / Wordstream
※ 各チャネルの平均的なROIを示しており、業種・規模・運用方法により異なります

消費者の行動が変わってきている

SNSとの向き合い方が変化しつつある

Constant Contactの調査では、消費者がSNSで意図的に過ごす時間を減らしているという傾向が明確に示されています。スクロールしながら流れてくる情報に疲れを感じ、自分で「受け取る」と選んだ情報だけを大切にしたい——そういう気持ちが、じわじわと広がっているのかもしれません。

SMSプロモーション(ショートメッセージでの販促)についても、スパムと受け取る消費者が増えているとのことです。

「能動的に選ばれる空間」としての受信箱

メールの受信箱は、お客様が自ら登録し、自ら開くと決めた空間です。SNSのように、アルゴリズムの都合で情報が届いたり届かなかったりすることもありません。

「届けたいと思った人に、届けたいと思ったタイミングで」情報を届けられる——これは、信頼関係を積み上げていくうえで、とても大切なことだと思います。

同調査のデータでは、メールを毎日チェックしているユーザーは93%(ZeroBounce、2025年)にのぼっています。受信箱を開く習慣は、想像以上に根強く残っているのですね。

SNS発信とメール発信の届き方の違い
SNS
アルゴリズム依存の発信
発信
アルゴリズムが選別
A B C D E
投稿しても、届くかどうかはアルゴリズム次第。フォロワー全員に届く保証はありません。
メール
受信箱に直接届く発信
発信
A B C D E
登録者の受信箱に確実に、直接届く。届けたい人に届けたいタイミングで届けられます。
93% のユーザーがメールを毎日チェックしている(ZeroBounce, 2025)

蓄積型発信という考え方

「今だけ」ではなく「これからも」残る発信を

SNSへの投稿は、発信した瞬間にフィードの波に飲み込まれ、数時間後には誰にも見られなくなることも珍しくありません。しかしメールは違います。お客様の受信箱の中で、開かれるのを静かに待ち続けます。

蓄積型発信とは、発信した情報がタイムラインに消えずに積み重なり、読んでくれる方との関係の深さとして残っていく——そういう発信の在り方だと思います。

「実験と速度」に追われるSNSとの違い

同調査では、米国の中小企業オーナーの3人に1人が2026年に「まったく新しいSNSキャンペーン」を立ち上げると回答しています。既存の延長ではなく、常に新しい試みが求められる——SNSの世界はそういう速度感で動いているということです。

その点、メールのニュースレターはゼロからつくり直す必要がありません。読んでくださる方との関係が育つほど、発信の重みは増していきます。コツコツと継続することが、そのまま資産になる。これが蓄積型発信の本質ではないでしょうか。

SNS発信と蓄積型メール発信の特性比較
比較項目 SNS発信 蓄積型メール発信
即効性 高い 拡散で一気に届く 低い じわじわと浸透
持続性 低い 投稿は流れていく 高い 続けるほど資産化
アルゴリズム依存 高い 表示が左右される 低い 届けたい人に届く
コスト効率 変動しやすい 広告費に左右される 安定しやすい 低コストで運用可能
関係性の深さ 浅く広く 多数へのリーチ重視 深く長く 1対1の信頼を育てる
ROI(長期) 不安定 トレンドに依存 安定・向上 継続で効果が積み上がる
資産性 低い プラットフォーム依存 高い 自社の資産になる
運用負荷 高い 常に新しい施策が必要 安定 コツコツ継続で効果増
※ 一般的な傾向を示したものであり、業種や運用方法によって異なります

日本の小規模事業者にとっての意味

海外の傾向は、国内とも重なる

今回のConstant Contactの調査は、米国・英国・カナダ・オーストラリアの計2,000社を対象とした国際規模のものです。デジタルマーケティングの潮流は、多少の時差はあっても日本でも同様の方向に向かうことが多いため、この結果を参考にすることは十分に意味があると思います。

総務省の「令和5年通信利用動向調査」でも、日本においてメールは依然として主要なコミュニケーション手段のひとつであり続けています。SNSの普及と並行して、メールの価値が改めて見直されてきている——という感覚は、国内においても共通しているのではないでしょうか。

小さな事業者だからこそ、丁寧な関係づくりができる

大きな企業には、広告費をかけてSNSで大量にリーチする手段があります。でも、小さな事業者には、それとは違う強みがあります。

一人ひとりのお客様のことを、名前と顔が浮かぶほどよく知っていること。その方が何を大切にしているか、どんな言葉が届くかを理解していること——。そういう関係性の深さを、メールというチャネルで丁寧に育てていくことができます。

数よりも、深さ。そこに、小さな事業者ならではの発信の強みがあると思います。

まとめ

メールマーケティングのROIは、1ドルあたり平均36ドル。SNSが注目を集める時代にあっても、データはメールの優位性を静かに示し続けています。

消費者がSNSで過ごす時間を意識的に減らしているという今、お客様が「自ら関与することを選ぶ空間」であるメールの受信箱の価値は、むしろ高まっているといえるでしょう。

蓄積型の発信は、派手さはありません。でも、コツコツと積み上げた発信は、やがてお客様との深い信頼関係という形で実を結んでいきます。すでにニュースレターを実践されている方は、その道を歩まれているということ。どうぞ、その歩みに自信をお持ちください。

「これからニュースレターを始めてみたい」と思われる方がいらっしゃいましたら、まずはお気軽にご相談ください。お一人お一人の状況に合わせて、一緒に考えてまいります。

よくある質問

Q. メールマーケティングのROIはどのくらいですか? Litmusの2024年調査によると、メールマーケティングの平均ROIは1ドルの投資に対して36ドルの収益(3,600%)とされています。SNSや他のデジタルチャネルと比較しても、長年にわたって最も高いROIを誇るチャネルのひとつです。

Q. SNSよりメールの方が効果的なのでしょうか? 一概にどちらが優れているとはいえませんが、Emarsysの2024年調査(10,041名対象)では、69%の消費者がブランドとのコミュニケーション手段としてメールを最も好むと回答しています。特に「関係を深める」「繰り返し届ける」という点では、メールの優位性が高いとされています。

Q. 蓄積型発信とはどういう意味ですか? SNSのように投稿が時間とともに流れ去るのではなく、発信した情報や読者との関係が積み重なり続ける発信の在り方のことです。ニュースレターなどのメール発信はその代表例であり、継続するほどお客様との信頼関係が深まり、資産として蓄積されていきます。

Q. 小さな事業者がメールで発信を続けるコツはありますか? 最初から完璧を目指さず、「この方に届けたい」という想いを大切に、できる範囲で定期的に発信することが大切だと思います。読者一人ひとりへの誠実な言葉が、長く読まれ続けるニュースレターをつくります。

Q. 日本でもメールマーケティングは有効でしょうか? 今回のデータは海外の調査ですが、デジタルマーケティングのトレンドは日本でも同様の方向に向かうことが多いとされています。総務省の調査でも、メールは日本において引き続き主要なコミュニケーション手段であり、信頼できる情報を届ける媒体として受け入れられています。

【参考資料】

調査・データ出典

この記事は役に立ちましたか?
この記事で新しい気づきがあったら❤️で教えてくださいね!

関連記事