「求人にお金をかけて採用したのに、また辞めてしまった」。中小企業の経営者や発信担当者から、私がもっともよく相談を受けるお悩みです。
答えはシンプルです。離職率を下げる鍵は、採用広報という発信活動にあります。採用広報とは、会社の実像や働く人の本音を、求職者と社員へ継続的に伝える発信のことです。入社前に抱く期待と、入社後の現実。この2つのギャップこそ、早期離職の最大の引き金と言えます。発信でギャップを事前に縮めれば、定着率は着実に上向きます。
本記事で解説するのは、採用広報が離職率を下げる理由、自社の現在地の測り方、今日から動ける4ステップ、そして実際の発信事例です。順にたどっていきましょう。少しでもお役に立てれば嬉しく思います。
なぜ採用広報が離職率を下げるのか|ミスマッチという根本原因
採用広報が離職率を下げる理由は、入社前後の期待ギャップを事前に埋められるからです。人が辞める大きな引き金は、待遇そのものより「聞いていた話と違う」という失望にあります。厚生労働省「令和5年 雇用動向調査」でも、労働条件や人間関係を理由とした離職が上位を占めています。発信は、この失望を先回りして防ぐ働きを担います。
離職の主因は入社前後の期待ギャップ
採用の現場では、良い面を強調して人を集めたくなります。ところが、実態と離れた発信は、入社後の反動を大きくするもの。「思っていた仕事と違う」という声は、期待を上げすぎた結果として生まれます。
大切なのは、良い面も課題も含めた等身大の情報を届けること。私自身、中小企業の発信を支援するなかで、あえて仕事の泥臭さまで見せた企業ほど、入社後の定着が安定する場面を何度も見てきました。飾らない発信は、合わない人の応募を自然に減らし、合う人だけを引き寄せます。求職者に媚びない誠実さが、結果として長く働く人を集めるわけです。
採用広報が期待値を事前に揃える
採用広報の本質は、宣伝ではなく期待値の調整にあります。仕事の一日の流れ、成長までにかかる時間、職場の人間関係。こうした「入ってみないと分からない」部分を、先に開示しておきましょう。
例えば、先輩社員が失敗談を語る動画を1本公開するだけでも、手応えは変わります。求職者は「ここは背伸びを求めない会社だ」と受け取り、覚悟を持って入社します。この覚悟の差こそ、半年後の定着を分ける分岐点。飾った言葉より、等身大の一言が信頼を生むという実感があります。
発信は求職者だけでなく在籍社員にも効く
見落とされがちですが、採用広報はいま働く社員の心にも届きます。自社の魅力が言葉になって外へ出ると、社員は「自分の会社は誇れる」と再認識するもの。この誇りが、辞めたい気持ちへのブレーキになります。
社内広報で退職者を減らす取り組みを解説した動画では、社長の声を社内報動画で届けることが、社員のつなぎとめに効くと語られています。発信の矢印は、外向きと内向きの両方に働くわけです。採用のための発信が、そのまま定着のための発信を兼ねる。ここに、中小企業ならではの一石二鳥が生まれます。
離職率の現在地を測る|計算式と目標値の置き方
施策を打つ前に、まず自社の離職率を数字で把握しましょう。離職率とは、一定期間にどれだけの社員が辞めたかを示す割合のことです。現在地を知らずに対策を始めると、効果が出たのかどうかも分かりません。
離職率の計算方法をほぼ1分で解説した動画でも、まず正しく数える大切さが強調されています。感覚ではなく数字で語ること。これが、改善の確かな出発点になります。
離職率の計算方法をやさしく解説
基本の式はシンプルです。離職率(%)= 一定期間の離職者数 ÷ 期首の在籍者数 × 100。厚生労働省の定義に沿った計算例で考えてみましょう。年初に20人いて、1年で3人が辞めたなら、離職率は15%と算出できます。
計算の期間は、年単位でそろえると比較しやすくなります。月ごとの数字は変動が大きく、一喜一憂のもと。年に一度、同じ条件で振り返る運用に切り替えてみてください。数え方を固定するだけで、去年と今年の比較がぶれなくなります。
離職率には、見るべき角度がいくつかあります。次の3つの視点を押さえておきましょう。
| 指標 | 何を見るか | 使いどころ |
|---|---|---|
| 全社離職率 | 会社全体で1年に辞めた割合 | 経営全体の健康診断 |
| 新卒3年以内離職率 | 入社3年内に辞めた新卒の割合 | 採用と受け入れの評価 |
| 部署別離職率 | 部署ごとの離職の偏り | 課題のある現場の特定 |
業界平均と比べて現在地を知る
自社の数字が出たら、次は業界平均との比較です。同じ15%でも、業界によって高いか低いかは変わります。厚生労働省「令和5年 雇用動向調査」では、宿泊・飲食サービス業のように離職率が高い業界と、そうでない業界の差が示されています(厚生労働省 雇用動向調査)。
離職率が低い業界ランキングを扱った動画でも、業界特性を踏まえて自社を見る視点が紹介されています。他社と比べて悲観するためではありません。現実的な目標を置くための物差しとして使いましょう。
無理のない目標値の決め方
目標は、いきなり半減を狙わないことが継続のコツです。前年より2〜3ポイント下げる。この現実的な一歩を積み重ねる方が、結果として大きな成果に結びつきます。高すぎる目標は、担当者の心を折るだけ。
私が伴走する企業でも、最初の目標は「来年、退職者を1人減らす」といった等身大の設定にしています。小さな成功体験こそ、発信を続ける原動力。数字が一歩でも改善すれば、現場の空気は前向きに変わっていきます。
離職率を下げる採用広報の4ステップ
離職率を下げる採用広報は、4つのステップで進めます。社員の声を集める、届け方を決める、続く制作の流れを作る、数字で振り返る。この順番で動けば、思いつき発信の空回りを避けられます。
製造業で離職率を改善する採用戦略を解説した動画でも、行き当たりばったりではなく、仕組みとして発信を設計する重要性が語られています。手順に落とし込むほど、迷いは減っていきます。
社員のリアルな声を集める
最初の一歩は、現場のリアルな声を集めること。人事が想像で書いた美談は、求職者にすぐ見抜かれます。入社の決め手、仕事のやりがい、乗り越えた壁。実際に働く人の言葉にこそ、価値が宿ります。
集め方は、5分の雑談インタビューで十分です。かしこまった場より、日常の一言のほうが本音が出やすいもの。集めた声は、そのまま採用広報の素材に変わります。まずは信頼できる社員1人に、入社の理由を聞くところから始めてみませんか。
発信チャネルと頻度を決める
次に決めるのは、どこで、どのくらいの頻度で発信するかです。採用サイト、社内報、動画、SNS。全部に手を出すと続きません。自社の人材と相性の良いチャネルを、1〜2つに絞りましょう。
頻度は「毎日」より「無理なく続く間隔」を優先します。月1本でも、1年続ければ12本の資産。継続こそが、後から効いてくる複利の源泉になります。少ない本数でも、積み上がれば確かな厚みが生まれます。
続けられる制作フローを作る
発信が止まる原因の多くは、属人化にあります。担当者一人に負担が集中すると、その人が忙しくなった瞬間に更新が途切れます。社長・社員・広報が役割を分担する流れを作りましょう。
役割分担の具体像は、社長・社員・広報の3者リレーで発信を回す業務フロー設計でも整理しています。仕組みにしておけば、担当が代わっても発信は止まりません。属人化から仕組み化へ。この転換が、蓄積を支える土台になります。
社内報・動画で定着率を高めた発信の事例
発信で離職に向き合う企業は、着実に増えています。ここで紹介するのは、社内報動画・オンボーディング・候補者体験という3つの切り口です。いずれも中小企業がまねしやすい方法を選びました。

社内報動画で社長の声を社内へ届ける
1つ目は、社内報動画で社長の思いを届ける取り組みです。社内広報で退職者を減らす方法を解説した動画では、社長の声を動画で伝えることが、社員のつなぎとめに直結すると述べられています。
文字の社内報は、流し読みされがち。一方、表情や声のこもった動画は、会社の温度まで伝えます。「経営者が何を大切にしているか」が伝わると、社員は自分の仕事の意味を見つけやすくなります。難しい編集は要りません。スマートフォンで撮った1分の語りかけでも、十分に想いは届きます。
オンボーディングで入社後のギャップを埋める
2つ目は、入社後のオンボーディングです。オンボーディングとは、新しく入った人が職場になじむための受け入れ支援のことです。新人の離職を防ぐ取り組みを扱った動画では、この受け入れ設計の質が定着を左右すると解説されています。
入社初日の不安を放置すると、ギャップは一気に広がります。最初の1か月で、仕事の全体像と相談相手を示すだけでも、離脱は減るもの。発信で集めた社員の声は、この受け入れ資料にもそのまま使えます。採用広報とオンボーディングは、地続きの取り組みと捉えています。
候補者体験を整え選考辞退を防ぐ
3つ目は、選考段階の候補者体験です。候補者体験とは、応募から入社までに求職者が受け取る印象の総体を指します。選考辞退の原因を6フェーズで解説した動画では、この体験の設計が辞退率を大きく変えると語られています。
採用広報は、内定後の不安を和らげる役割も担います。入社前に社員インタビューを届ける、職場の日常を見せる。こうした発信が、辞退という「入社前の離職」を防ぎます。経営者インタビューの活用法は、経営者インタビューを採用ブランディングに変える3つの方法でも詳しく扱っています。
発信を続けても離職率が下がらないときのチェックポイント
「発信しているのに、離職率が変わらない」。このお悩みは珍しくありません。多くの場合、原因は発信が作って終わりになっていること。ここでは、つまずきやすい3点を一緒に確認しましょう。
発信が作って終わりになっていないか
第一のつまずきは、発信しっぱなしです。記事や動画を出すだけで、社員や求職者に届いているかを確かめていない。これでは効果は測れません。
社内報なら閲覧数、採用サイトなら応募者の声。反応を拾う仕組みをセットで持ちましょう。数字が見えると、次に何を発信すべきかが自然と定まります。出しっぱなしと振り返りつきでは、半年後の差は歴然です。
現場の課題と発信テーマのズレを直す
第二は、テーマのズレです。現場が本当に困っていることと、発信している内容が噛み合っていない。この状態では、いくら数を打っても心に届きません。
社員のストレスを可視化するツールを紹介した動画では、現場の状態を見える化する大切さが語られています。まず現場の声を聞き、そこから発信テーマを決める。この順番を守るだけで、発信の刺さり方は変わってきます。現場起点。これが、ズレを防ぐいちばんの近道です。
退職者分析で本当の原因を見つける
第三は、原因の取り違えです。退職者分析で見える会社の課題を扱った動画では、辞めた理由をきちんと振り返ることで、初めて本当の課題が見えてくると解説されています。
「なんとなく発信」から抜け出す近道は、辞めた人の理由を丁寧にたどること。原因が分かれば、発信はピンポイントの打ち手に変わります。闇雲な発信ほど、成果から遠いものはありません。退職者の声は、次の発信テーマを教えてくれる貴重なヒントになります。
蓄積型発信で定着率を会社の資産に変える
採用広報は、一度きりのキャンペーンではありません。一時的なバズではなく、長期的に価値を積み重ねる蓄積型発信として続けることで、定着率は会社の資産になります。積み上げた発信は、採用のたびに繰り返し効いてきます。
一過性の施策と蓄積型発信の違い
一過性の施策は、打った瞬間に効果が消えます。求人広告を止めれば、応募も止まります。一方、蓄積型発信は、公開した記事や動画が資産として残り続けます。半年後、1年後にも、求職者はその発信に出会うわけです。
この違いは、「フロー型発信」と「蓄積型発信」の違いでも整理しています。採用広報を蓄積型で設計するほど、後になるほど楽になっていく。この複利の感覚が、続ける勇気をくれます。
発信を仕組み化して属人化を防ぐ
蓄積を続けるには、仕組み化が欠かせません。誰か一人の頑張りに頼る発信は、その人が抜けた瞬間に崩れます。集める・作る・振り返るの流れを、チームの型として残しましょう。
人的資本経営の観点から発信を捉え直すと、社員の想いそのものが企業価値になります。想いを言葉にして残す発信は、人的資本経営を「想いの発信」で実現する具体ステップでも掘り下げています。仕組みが整えば、発信は個人技からチームの資産へと育ちます。
小さく始めて続けるコツ
最後にお伝えしたいのは、「小さく始める」ことの大切さです。完璧な採用サイトを目指すと、動き出す前に息切れします。まずは社員インタビューを1本。この一歩が、半年後の資産になります。
発信は、地味な積み重ね。それでも、蓄積型で続けた発信は、採用と定着の両方を静かに支えます。焦らず、自社のペースで積み上げていきましょう。ハッシンラボ Premium は、その道のりに寄り添う伴走者でありたいと考えています。
よくある質問(FAQ)
Q. 採用広報を始めてから離職率が下がるまで、どのくらいかかりますか? 発信は蓄積型の施策のため、数週間で劇的に変わるものではありません。まずは社員の声を集めて発信を続け、3〜6か月単位で退職者分析と合わせて振り返るのが現実的です。継続するほど、入社前後のギャップが少しずつ縮まっていきます。
Q. 発信する人手が足りません。少人数でも採用広報はできますか? 可能です。毎日更新する必要はありません。月1本の社員インタビューや、社長の思いを伝える短い動画など、続けられる範囲から始めるのがコツです。制作フローを決めて属人化を防げば、少人数でも運用の型が整います。
Q. 離職率は何%を目指せばよいですか? 一律の正解はありません。まず自社の離職率を計算し、同じ業界の平均と比べて現在地を知ることが先です。そのうえで、いきなり半減ではなく、前年より数ポイント改善するといった無理のない目標を置きましょう。
Q. 社内報と採用広報サイト、どちらから始めるべきですか? 在籍社員の定着が課題なら社内報から、応募段階のミスマッチが課題なら採用広報サイトから、が目安です。退職者分析でどの段階に課題があるかを見極めてから、片方を小さく始めると効果を実感しやすくなります。
Q. 動画を作る予算がありません。文章だけでも効果はありますか? 効果は期待できます。社員インタビューの記事や、入社ストーリーの読み物でも、等身大の情報は十分に伝わります。まずはスマートフォンで撮った写真付きの短い記事から始め、反応を見ながら動画へ広げる進め方がおすすめです。