2025年版中小企業白書が示すように、中小企業を取り巻く経営環境は厳しさを増しています。円安・物価高の継続、金利のある世界への移行、そして構造的な人手不足。この3つの波が同時に押し寄せる中、多くの経営者が「人材不足」「資金繰り」「営業力不足」「事業承継」という4つの課題に直面しています。
一方で、これらの課題に「情報発信」という武器で立ち向かい、成果を出している企業も増えています。この記事では、4大課題の現状と、発信力がなぜ有効なのかを解説します。
4つの経営課題を発信力で解決できるか?
中小企業の発信支援を見る深刻化する人材不足の実態
現業職を中心に人手不足が加速
中小企業の人手不足感は依然として深刻で、ほとんどの業種においてコロナ禍以降に人手不足感が強まっています。特に販売従業者やサービス職業従業者、建設作業者といった「現場で働く人」の不足が深刻です。
過去5年間で従業員数が減少した企業は4割以上にのぼります。地方や小規模事業者ほど人材確保が難しくなっている状況です。
大企業との賃上げ格差が拡大
2024年の春季労使交渉では約30年ぶりの賃上げ率を達成しましたが、大企業との差は拡大しました。中小企業の賃上げ率は4.45%でしたが、全体では5.10%。この差が人材流出のリスクを高めています。
さらに深刻なのは、中小企業の労働分配率はすでに8割ほどに達しており、賃上げ余力がほとんど残っていない点です。給料を上げたくても上げられない。この状況を変えるには、売上や利益を増やす必要があります。
資金繰りの厳しさが増す背景
物価高と金利上昇のダブルパンチ
円安や物価高により、原材料や商品の仕入れコストが上昇しています。その一方で、価格転嫁は思うように進んでいません。原材料・商品仕入単価と売上単価のDIの差は、依然として埋まっていません。
さらに追い打ちをかけるのが「金利のある世界」の到来です。長く続いた低金利時代が終わり、借入のコストが上昇しています。
コストカット戦略の限界
コストカット戦略は限界を迎えています。人件費も削れない、仕入れコストも下がらない。この状況では、価格を適正に設定し、付加価値を高める経営に転換する必要があります。
営業力不足が招く価格競争
差別化できない企業の苦境
営業力不足の問題は、単に「売れない」だけではありません。自社の強みを伝えられないために、価格競争に巻き込まれてしまう企業が増えています。
自社の製品・サービスの差別化や市場環境に対応した経営を行う会社ほど価格転嫁が進んでいます。つまり、独自の価値を発信できる企業は、適正な価格で商品やサービスを販売できているのです。
既存顧客の深掘り不足
新規顧客の獲得に目が向きがちですが、実は既存顧客への情報発信を強化することで、売上を伸ばしている企業もあります。定期的に自社の取り組みや新サービスを伝えることで、追加受注につながるケースが少なくありません。
事業承継の難しさ
後継者不在率が上昇
小規模事業者では「事業承継」が重要な課題になっています。後継者が見つからない、または後継者がいても事業を引き継ぐ意欲を持ってもらえない。こうした悩みを抱える経営者が増えています。
企業価値の見える化不足
事業承継がうまくいかない理由の一つに、「企業の価値や魅力が見える化されていない」点があります。後継者候補に事業の将来性や社会的意義を伝えられなければ、承継への意欲は高まりません。
| 課題カテゴリ | 課題内容 | 自社チェックポイント |
|---|---|---|
| 後継者不在 | 後継者候補がいない、または決まっていない状態が続いている | |
| 企業価値の伝達不足 | 事業の魅力や将来性、社会的意義が言語化されていない | |
| 承継準備期間の不足 | 5~10年必要とされる準備が遅れている、または未着手 | |
| 資産・株式の移転準備 | 相続税・贈与税対策が未整備で、後継者の負担が大きい | |
| 経営ノウハウの継承 | 経営者の暗黙知が形式知化されておらず、引継ぎが困難 |
4つの課題すべてに有効な「発信力」
採用広報で人材確保
SNSやオウンドメディアを活用した情報発信は、採用活動に直結します。自社の働く環境や社員の声、会社の理念を発信することで、求職者の共感を得られます。
社内の風通しの良さや心理的な働きやすさが人材の定着につながっていると白書でも指摘されています。こうした職場環境の良さを発信することが、採用力を高めます。
実際に、自社の採用サイトやSNSアカウントで社員インタビューや職場の雰囲気を継続的に発信している企業は、応募者数が増加しています。
コンテンツマーケティングで営業力強化
ブログやSNS、動画などで自社の専門知識や事例を発信することで、見込み客との接点を作れます。これをコンテンツマーケティングといいます。
発信を続けることで、「この分野ならこの会社」という認知が広がり、問い合わせや相談が増えます。営業担当者が一人ひとりに説明して回らなくても、情報発信が営業の役割を果たしてくれるのです。
企業ストーリー発信で事業承継を円滑に
創業の思いや事業の社会的意義、これまでの歩みをストーリーとして発信することで、後継者候補に企業の価値を伝えられます。また、取引先や地域社会にも会社の存在意義を理解してもらえます。
事業承継は単なる経営権の移転ではなく、企業文化や理念の継承でもあります。発信を通じて会社の「想い」を言葉にすることが、スムーズな承継を後押しします。
情報発信が資金繰りにも影響
一見、発信と資金繰りは関係ないように思えますが、実は密接につながっています。営業力が強化されれば売上が増え、適正な価格設定ができれば利益率が改善します。その結果、資金繰りに余裕が生まれるのです。
また、金融機関への情報開示や説明力が向上することで、融資の際の信頼性も高まります。
採用も営業も承継も、発信力が鍵になる
人材不足・資金繰り・営業力不足・事業承継。すべてに共通するのは「自社の価値を伝える力」です。低コストで始められて、継続的に効果を発揮する発信の仕組みづくりを支援します。
発信の仕組み化を確認する※ 中小企業の経営課題に特化した支援内容です
明日から始められる3つのアクション
自社の課題を1つ特定する
4大課題のうち、今最も深刻な課題は何でしょうか。まずは1つに絞って考えてみましょう。すべてを一度に解決しようとすると、どれも中途半端になってしまいます。
「採用がうまくいかない」「価格競争から抜け出せない」「後継者が見つからない」など、優先順位をつけて取り組むことが大切です。
発信でできることをリストアップ
特定した課題に対して、「発信でできること」を書き出してみましょう。
人材不足なら:
営業力不足なら:
このように、具体的な行動を整理することで、次のステップが見えてきます。
自社の強みと社員の声をまとめる
最初の一歩として、自社の「強み」と「社員の声」をA4用紙1枚にまとめてみましょう。これが発信の土台になります。
強み:
社員の声:
この情報を整理することで、発信すべき内容が明確になります。
継続的な発信が鍵
情報発信は一度やって終わりではありません。継続することで、認知が広がり、信頼が積み重なっていきます。
週に1回のSNS投稿、月に1本のブログ記事など、無理のない範囲で続けられる仕組みを作りましょう。最初は反応が少なくても、諦めずに発信を続けることが大切です。
また、発信する内容は「売り込み」ではなく、読者にとって役立つ情報や共感できるストーリーを意識しましょう。自社の専門知識を分かりやすく伝えることで、読者との関係性が深まります。
4つの経営課題に継続的な発信で
アプローチする仕組みづくり
人材不足・資金繰り・営業力不足・事業承継。すべてに共通するのは「自社の価値を伝える力」の不足です。低コストで始められ、採用・営業の両面で効果を発揮する発信活動を、中小企業が自走できる仕組みに変えます。
まとめ
中小企業が直面する「人材不足」「資金繰り」「営業力不足」「事業承継」という4大課題は、どれも簡単に解決できるものではありません。しかし、情報発信という手段を活用することで、これらの課題に対して効果的にアプローチできます。
大切なのは、すべての課題を一度に解決しようとしないこと。まずは1つの課題に絞り、発信でできることから始めてみましょう。継続的に情報を発信し、自社の価値や魅力を伝え続けることが、経営課題の解決につながります。
発信は、低コストで始められて、採用・営業の両面で効果を発揮します。あなたの会社の「想い」や「強み」を、まずはA4用紙1枚にまとめることから始めてみませんか。