経営者の発信が組織の生産性を左右する──社員の半数しかビジョンを知らない現実

発信戦略と仕組み化

社員に経営方針を伝えているのに、なかなか浸透しない。そんな悩みを抱えていませんか。実は、社員の半数近くが会社のビジョンを知らないというデータがあります。この状況が続くと、組織の生産性や業績に深刻な影響を及ぼしかねません。

次のグラフは、日本企業におけるビジョン浸透の実態を示しています。

社員のビジョン認知率(JTBコミュニケーションデザイン調査、2020年)
51.1% 知っている
知っている 51.1%
知らない 17.2%
ビジョンがあるか分からない 21.7%
その他 10.0%
約半数の社員が自社のビジョンを認知していない現状。「知らない」「ビジョンがあるか分からない」を合わせると38.9%に達します。
出典:JTBコミュニケーションデザイン「会社のビジョンに関する意識調査2020」(n=618)

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社員の51%しか自社ビジョンを知らない現実

2020年6月に株式会社JTBコミュニケーションデザインが実施した調査によると、100人以上規模の企業で働く部長以下クラスの社員のうち、自社のビジョンを「知っている」と答えたのはわずか51.1%でした。

一見すると半数以上が認知しているように見えます。しかし裏を返せば、約半数の社員は会社の目指す方向性を理解していないことになります。「知らない」「ビジョンがあるかどうか分からない」「わからない・答えたくない」と答えた社員が合わせて48.9%に上る事実は、決して軽視できません。

興味深いのは、一般社員よりもミドルマネジメント層のほうが「知っている」と回答する割合が高かった点です。経営に近い立場の人ほどビジョンを認識できているのは当然ともいえますが、これは逆に言えば、経営層と現場の社員との間に大きな情報格差が生まれていることを示しています。

なぜ社員はビジョンを知らないのか

ビジョンが浸透しない理由はいくつかあります。多くの企業では、入社式や新年度の全社会議でビジョンを伝えますが、その後のフォローが不足しがちです。日々の業務に追われる社員にとって、一度聞いただけのビジョンはすぐに記憶の片隅に追いやられてしまいます。

さらに、ビジョンが抽象的すぎて自分の仕事とつながらない、経営層からの発信頻度が少ない、現場の社員が経営層と直接コミュニケーションを取る機会がない、といった要因も挙げられます。

ビジョン不足が引き起こす組織の負のスパイラル

社員がビジョンを理解していないと、何が起きるのでしょうか。

エンゲージメントの低下

ビジョンを知らない社員は、自分の仕事にどんな意味があるのか実感しにくくなります。「何のために働いているのか」という問いに答えられず、仕事へのモチベーションが下がってしまうのです。

従業員エンゲージメント(企業と社員の相思相愛度合い)に関する調査では、企業理念やビジョンへの理解・共感が、エンゲージメントを左右する重要な要素だと分かっています。ビジョンに共感できれば、社員は会社の目標を自分ごととして捉え、主体的に行動するようになります。

生産性と業績への影響

エンゲージメントの低下は、直接的に生産性や業績に影響します。リンクアンドモチベーションと慶應義塾大学ビジネススクールが2018年に実施した共同研究では、エンゲージメントスコアが1ポイント上昇すると、営業利益率が0.35%上昇し、労働生産性も向上することが明らかになっています。

つまり、ビジョンが浸透していない組織は、この逆の状態にあるといえます。社員の意欲が低く、生産性が上がらず、結果として業績も伸び悩むという負のスパイラルに陥りかねません。

以下の図は、ビジョン不足が引き起こす組織の悪循環を示しています。

負の
スパイラル
Negative Spiral
ビジョン不足 方向性が見えない
エンゲージメント低下 働く意味を見失う
生産性低下 主体性が失われる
業績悪化 成果が出ない
離職増加 人材が流出する
組織力低下 チームが弱体化
そして再び「ビジョン不足」へ…

離職率の増加

ビジョンが不明確だと、社員は会社に愛着を持ちにくくなります。特に若手社員やミドル層は「この会社で働き続ける意味があるのか」と疑問を感じ、転職を検討するようになります。

実際、エンゲージメントが低い企業ほど離職率が高い傾向にあることが、複数の調査で示されています。優秀な人材が流出すれば、組織の競争力はさらに低下してしまいます。

「発信すること」と「伝わること」の違い

多くの経営者は「ビジョンは社内に発信している」と考えています。しかし重要なのは、発信したかどうかではなく、社員に伝わったかどうかです。

メールで全社員に送った、イントラネットに掲載した、というだけでは不十分です。社員がそれを開封したか、内容を理解したか、共感したか、行動に移せているか。この一連のプロセスがあって初めて「伝わった」といえます。

経営層が当たり前だと思っている言葉も、現場の社員にとっては抽象的で分かりにくいことがあります。ビジョンを自分の業務に落とし込むイメージができなければ、単なる美辞麗句で終わってしまいます。

明日から始められる経営者発信の実践ステップ

では、どうすればビジョンを社員に伝えられるのでしょうか。段階的に取り組める方法を紹介します。

以下の表で、取り組み時期別の具体的な施策を確認しましょう。

ビジョン伝達のための段階的アクションプラン
取り組み時期 施策内容 ポイント 難易度・所要時間
明日から 朝礼・終礼での方針共有 5-10分で週の重点方針を説明。ビジョンとのつながりを語る
難易度
5-10分/回
1ヶ月以内 全社ミーティング開催 月1回、双方向コミュニケーション。質疑応答の時間を設ける
難易度
60-90分/回
長期的 社内SNS・イントラで定期発信 週1〜月1回の継続発信。具体的エピソードと経営の思いを共有
難易度
30分/回

明日からできること:朝礼・終礼での方針共有

最も手軽で効果的なのが、朝礼や終礼でその週の重点方針を説明することです。5分でも10分でもかまいません。経営者や管理職が自分の言葉で、今週何に注力するのか、それがビジョンとどうつながるのかを語ります。

例えば「今週は新規顧客へのアプローチを強化しましょう。これは『地域No.1のサービス提供』というビジョンを実現するための第一歩です」といった具合です。短い時間でも、繰り返し伝えることで少しずつ浸透していきます。

1ヶ月以内にやるべきこと:全社ミーティングの開催

月に1回、全社員が参加するミーティングを開きます。経営層が経営方針や会社の現状を共有し、社員からの質問を受け付ける場にします。

ポイントは双方向のコミュニケーションです。一方的に話すだけでなく、社員の疑問や意見を聞く時間を設けることで、経営層と現場の距離が縮まります。オンラインツールを使えば、遠隔地の社員も参加でき、コストも抑えられます。

長期的に取り組むこと:社内SNSやイントラでの定期発信

社内SNSやイントラネットを活用して、経営層が定期的にメッセージを配信します。週1回や月1回など、頻度を決めて継続することが大切です。

ただし、形式的な発信では効果が薄いので注意が必要です。社員の目を引くような具体的なエピソードや、経営判断の背景にある思いを語ることで、共感を呼びやすくなります。

また、発信して終わりではなく、社員の反応を確認します。閲覧数やコメント、アンケートなどを通じて、どれだけ理解されているかをチェックし、必要に応じて伝え方を改善しましょう。

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成功のカギは「理解と納得」の確認

ビジョンを伝える際に忘れてはいけないのが、社員が理解し、納得しているかを確認することです。

単に情報を流すだけでは、社員は受け身になりがちです。「このビジョンをあなたの仕事にどう活かせるか」と問いかけたり、小グループでディスカッションする時間を設けたりすることで、社員自身が考える機会を作ります。

また、管理職やリーダー層がビジョンを自分の言葉で語れるように育成することも重要です。経営層だけでなく、現場に近いマネージャーがビジョンを語ることで、より身近に感じられるようになります。

よくある失敗パターンと対策

ビジョンの浸透に取り組む企業がよく陥る失敗パターンを知っておくと、事前に対策を打てます。

一方的な発信で満足してしまう

メールを送った、イントラに掲載したという行為そのものに満足し、社員の反応を確認しない。これでは伝わっているかどうか分かりません。必ず、社員の理解度を測る仕組みを取り入れましょう。

開封すらされていないメール配信

業務連絡のメールに埋もれて、経営メッセージが読まれていないケースは少なくありません。タイトルを工夫する、別のチャネルを併用するなど、社員の目に触れる工夫が必要です。

抽象的すぎる表現

「顧客満足度No.1を目指す」といった抽象的な表現だけでは、社員は具体的に何をすればいいか分かりません。具体的な数値目標や、現場での行動例を添えることで、イメージしやすくなります。

コストをかけずに始められる

ビジョンの浸透に、必ずしも大きな予算は必要ありません。既存の社内ツールを活用すれば、追加コストゼロで始められます。

例えば、SlackやTeamsといったビジネスチャットツール、ZoomやGoogle Meetといったオンライン会議ツールは、多くの企業で既に導入されています。これらを使って経営層が定期的にメッセージを発信したり、全社会議を開いたりすれば、追加投資なしで取り組めます。

リンクアンドモチベーションの2018年の研究によれば、エンゲージメントが向上すると営業利益率や労働生産性が改善されるため、投資対効果は非常に高いといえます。社内コミュニケーションの強化は、限られたリソースで最大の効果を生み出せる施策の一つです。

社外と社内、両輪での発信が理想

企業によっては、社外への発信(広報活動や経営者インタビュー)には力を入れていても、社内への発信がおろそかになっているケースがあります。しかし、社内と社外の発信を連動させることで、より一貫したメッセージを届けられます。

例えば、経営者が外部メディアのインタビューで語った内容を、社内報や社内SNSでも共有する。社外向けに作成したビジョンムービーを、社員研修でも活用する。こうした工夫で、社員も会社の方向性を外部の視点から再確認でき、理解が深まります。

社外への発信と社内への発信が同じ軸で行われていれば、社員は「会社が一貫した姿勢を持っている」と感じ、信頼感が高まります。

最初の一歩を踏み出そう

ビジョンの浸透は、一朝一夕には実現しません。しかし、だからこそ今日から始めることが大切です。

まずは次の全社ミーティングで、経営者自身の言葉で会社の方向性を語ってみてください。社員の反応を見ながら、伝え方を少しずつ改善していけば、必ず変化が生まれます。

社員がビジョンを理解し、共感すれば、エンゲージメントが高まり、生産性が向上し、業績も改善します。そして何より、社員一人ひとりが「この会社で働く意味」を実感できるようになります。それこそが、持続可能な組織づくりの第一歩です。

まとめ

社員の半数近くが会社のビジョンを知らないという現実は、多くの企業が直面している課題です。ビジョンが浸透していないと、エンゲージメントの低下、生産性の停滞、離職率の増加といった負のスパイラルに陥ります。

重要なのは、ビジョンを「発信すること」ではなく「伝わること」です。朝礼での方針共有、全社ミーティングの開催、社内SNSでの定期発信など、段階的に取り組める方法はたくさんあります。社員が理解し、納得しているかを確認しながら、継続的に改善していくことが成功のカギです。

経営者の発信は、組織の生産性を左右する重要な要素です。今日から始められる小さな一歩が、やがて大きな変化を生み出します。

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